海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
最初から無理のある条件を出されて、頑張る前から「これでは失敗して当然だ」と感じてしまった経験はありませんか。
そんな理不尽さを一言で言い表せる「set up to fail」を、『モダンファミリー』シーズン6第6話の終盤、探す相手を見つけられないことに憤るキャメロンと、そこへ一言を差し込むリリーとのやり取りから、一緒に見ていきましょう。
「set up to fail」の意味とニュアンス
set up to fail
意味:(最初から)失敗するように仕向ける、失敗するしかない状況に置く
set someone up to fail は、「人を、失敗するしかない状況に置く」という形の表現です。set up は「設置する」「準備する」という意味のほか、「(人を)はめる」という意味でも使われます。そこに to fail が続くことで、「失敗するように仕向ける」と意味が限定されます。
この表現が描くのは、本人の努力や能力ではなく、周りが用意した条件や仕組みに原因がある失敗です。無理な納期や過大な目標、不公平なルールなどを責めるときに使い、「その状況では誰でもうまくいかない」という批判の気持ちが込められます。主語には、人だけでなく、仕組みややり方そのものが入る点も特徴です。
今回のシーンでは、it just sets children up to fail という形で出てきます。it は直前に語られた「見つけられないような作り」を受け、その仕組みが子どもを失敗させると訴えています。似た言い方に set someone up for failure があり、意味はほぼ同じです。
受け身の形にすると、be set up to fail となり、「最初から失敗するように仕組まれていた」という意味になります。日本語にするときは、「失敗させるだけだ」「失敗するしかない状況に置く」「最初から失敗が決まっている」のあたりを、文脈に合わせて選びます。
【ここがポイント!】
- 「set up to fail」の核は、失敗が起きるように舞台を先に整えておくイメージ
- 原因を本人の努力ではなく、周りの条件や仕組みに置く批判の表現
- 「設置する」と直訳せず、「失敗するしかない状況に置く」と訳すのがコツ
『モダンファミリー』S06E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
キャメロンが、探している相手を見つけられないことへの不満を、強い言葉で並べていく場面です。批判は子どもの自己肯定感にまで広がり、そこへリリーが一言を差し込みます。キャメロンの主張とリリーの一言の落差に注目です。
Cameron: You know, they just make it impossible to find him. It’s cruel and inappropriate. It just sets children up to fail, and it destroys their self-esteem.
(だってさ、見つけられないようにわざと作ってあるんだよ。残酷だし、不適切だよ。子どもを失敗させるだけで、自己肯定感まで壊してしまう。)Lily: Right there.
(そこだよ。)Cameron: Is he there? Is — where — Where did she point? Where did she p–
(そこにいる? どこ……どこ……どこを指したの? どこを指し……)Modern Family Season6 Episode6 (Halloween 3: AwesomeLand)
シーン解説と心理考察
キャメロンの発言は、勢いを増しながら話が広がっていく構成になっています。they just make it impossible to find him と、見つけられないように作られていることを指摘したあと、It’s cruel and inappropriate. と強い評価の言葉を重ねます。さらに it just sets children up to fail と続けて、批判の対象を、見つけにくさそのものから子どもへの影響へと広げていきます。自己肯定感まで壊してしまう、という結びで、話の重みがもう一段上がります。
そこへリリーが、Right there. と短く場所を告げます。長い批判と対照的な、たった二語の一言が会話に入り込む形です。
キャメロンは Is he there? と確かめ、Is や where と言いよどみながら、Where did she point? と、リリーが指した場所を聞き返します。言葉は Where did she p– のところで途切れています。子どもが失敗する仕組みを強く批判した直後に、その子が示した答えの場所をつかめていないという流れが、この場面の見どころです。
set up to fail という批判の言葉が、勢いのある主張の中に置かれ、直後の短いやり取りとの落差を作っています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
ゴールへ向かう道の途中に、前もってつまずく石をいくつも並べておく様子を思い浮かべてみましょう。走る人の力ではなく、並べられた石のせいで転んでしまう状況です。失敗が起きるように舞台を先に整えておく、という set up to fail の動きが、この場面から見えてきます。
set up は「先に整えておく」動作、to fail は「失敗するように」という目的です。二つを並べて、「失敗のための準備」と考えておくと、意味が定着しやすくなります。
キャメロンの It just sets children up to fail という一言を、つまずく石が並んだ道の絵と一緒に思い出しておくと、次に似た状況に出会ったとき、この形がすっと浮かびます。
例文で覚える「set up to fail」
職場の話から、日常の愚痴まで、3つの例文で確認していきましょう。
An impossible deadline just sets the team up to fail.
(無理な納期は、チームを失敗させるだけです。)
職場の計画を批判する場面です。主語に an impossible deadline のような条件を置くと、失敗の原因が本人ではなく仕組みにあるという構図がはっきりします。
A: Why are you upset?
B: They set me up to fail with that schedule.
(A:どうして怒ってるの?)
(B:あのスケジュールじゃ、最初から失敗させる気だったんだよ。)
友人同士の愚痴の場面です。with that schedule を添えると、何が失敗のもとになったのかを具体的に示せます。
I felt like the whole project was set up to fail.
(このプロジェクトは最初から失敗するように仕組まれていた気がしました。)
仕事を振り返る場面です。受け身の be set up to fail にすると、誰が仕向けたかを示さずに、失敗しやすい構造だけを述べる文になります。
あわせて覚えたい関連表現
set someone up for failure
((人を)失敗する状況に置く)
for failure は名詞の failure を使う言い方で、意味はほぼ同じです。set up to fail は、動作としての失敗を前面に出す点が違います。
stack the deck against someone
((人に)不利になるよう仕組む)
stack the deck は、不公平な仕組みそのものを指します。set up to fail は、その仕組みが失敗という結果につながることまで含めて述べる点が違います。
doom someone to failure
((人を)失敗する運命にする)
doom は、避けられない運命という重い言い方です。set up to fail は、誰かが用意した状況や条件によって失敗が生まれる、という原因のありかを示す言い方です。
Note|set upを「設置する」と訳したときのずれ
set up を辞書で引くと、いくつもの意味が並びます。ここでは、set up を「設置する」とだけ覚えたときに生じるずれを、辞書的な意味の範囲で整理します。
set up には、「設置する、組み立てる」という物への意味、「準備する、整える」という段取りの意味、「(人を)はめる」という人への意味があります。たとえば set up a tent は「テントを張る」、set up a meeting は「会議を設定する」です。一方、set someone up は、人を目的語にとって「人をはめる、罠にかける」という意味で使われます。set up to fail の set up は、この人への意味に近く、その後ろの to fail が「何をさせるために」を示します。「失敗を設置する」と直訳すると、失敗という物を置いているように聞こえますが、実際は、人を失敗するしかない状況に置くという意味です。
キャメロンの It just sets children up to fail も、children が目的語で、その人たちが失敗する状況に置かれる、という構造でした。set up の意味を「はめる」まで広げておくと、to fail との組み合わせが自然につながります。
set up の意味の幅を知っておくと、後ろに続く語が意味を絞り込む仕組みが見えてきます。to fail のほかにも、set someone up for 〜のように後ろの語を替えれば、別の目的へ仕向ける言い方にも広げられます。
まとめ|「失敗させる仕組み」を批判する一言
set up to fail は、最初から失敗するしかない状況に人を置く、という意味の表現です。原因を本人の努力ではなく、周りが用意した条件や仕組みに置く点が特徴です。
無理な納期や過大な目標、不公平なルールを責めたいとき、set someone up to fail や be set up to fail の形で使えます。set someone up for failure、stack the deck against someone、doom someone to failure との違いも押さえておくと、批判の強さや焦点を調整できます。
見つけられない仕組みを強く批判したキャメロンが、直後のリリーの一言に戸惑う。その落差の中に、set up to fail という言葉の勢いが映っていた場面でした。


コメント