海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
仮装の話で盛り上がっているところへ、ふいに明るい励ましの声が飛び込んでくる。ドラマには、そんな軽やかな切り替わりの瞬間が時々あります。
そんな一声にぴったりの「keep up the good work」を、『モダンファミリー』シーズン6第6話の後半、アレックスの仮装が映画のヒロインだと説明していたフィルが、続けて声をかける場面から、一緒に見ていきましょう。
「keep up the good work」の意味とニュアンス
keep up the good work
意味:その調子で頑張って、これからもよろしく頼む
keep up the good work は、すでに出ている良い成果を認めたうえで、同じ水準を保つように励ます表現です。keep up は「(良い状態や水準を)保ち続ける」という意味の句動詞で、the good work は「良い仕事」を指します。日本語の「その調子で頑張って」「これからもよろしくお願いします」が近い意味です。
この表現の前提には、「いま、すでに良い仕事ができている」という認識があります。相手を励ますだけでなく、ここまでの成果を評価する気持ちが同時に伝わる点が、単なる「頑張って」とは違うところです。the が付いているのは、これまでの特定の良い仕事を指しているためで、「これまでのいい仕事を保って」という意味合いになります。
使われる場面は、上司から部下、先生から生徒、親から子など、成果を見届ける側が見届けられる側へ向けて話すときです。keep it up と言い換えることもできます。keep it up は「何を」を it で受けて省いた、より短い言い方です。
日本語にするときは、文脈に応じて「その調子で頑張って」「この調子で続けてね」「引き続きお願いします」を使い分けます。ねぎらいの色が濃いか、依頼の色が濃いかで、訳し方が変わります。
【ここがポイント!】
- 「keep up the good work」の核は、良い水準を上げたまま保ち続けるイメージ
- 成果を認めたうえで、続けてほしいと励ます表現
- 「頑張って」と訳し分けて、「その調子で」「引き続き」まで幅を持たせるのがコツ
『モダンファミリー』S06E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
男の子がアレックスに何の仮装かをたずねて、アレックスの答えをフィルが補足する場面です。映画のヒロインの名前を出して話を広げたフィルは、そのままの勢いで励ましの言葉を口にして、様子をたずねます。それに対するルークの返事にも注目です。
Boy: What are you supposed to be?
(何の仮装なの?)Alex: Born into another family.
(別の家に生まれるはずだった人。)Phil: She is Tess McGill, feminist heroine from the 1980s classic “Working girl”. You should check it out sometime. In a few years. There is some light vacuuming in underpants. Keep up the good work! How’s it going here?
(彼女はテス・マクギル、80年代の名作「ワーキング・ガール」のフェミニストのヒロインだよ。いつか観てみるといい。あと数年したらね。パンツ姿で軽く掃除機をかけるシーンもあるんだ。その調子でがんばってくれ! こっちはどうだい?)Luke: I look stupid! These puppies are making it impossible for me to stay mad at you.
(すごくバカみたいだよ! この子犬たちのせいで、パパにいつまでも怒っていられないよ。)Modern Family Season6 Episode6 (Halloween 3: AwesomeLand)
シーン解説と心理考察
男の子の What are you supposed to be? に対して、アレックスは Born into another family. と短く答えます。そこへフィルが、説明を補うように話し始めます。映画のヒロインの名前を挙げ、「いつか観てみるといい。あと数年したらね」と続けるあたりに、話を明るく進めていくフィルの調子が表れています。
説明の最後にフィルは Keep up the good work! と言い、続けて How’s it going here? とたずねます。映画の話から様子をたずねる声かけへと、話の向きがひと息で切り替わる場面です。keep up the good work という言い方は、相手のこれまでの様子を認めてから続きを促す形をとっているため、フィルの声かけは、その場にいる誰かの現状を受け止めたうえでの軽い励ましとして響きます。
これに対するルークの返事は I look stupid! という率直な一言です。続けて、子犬たちのせいでいつまでも怒っていられないと言い添えます。これまで怒っていたことをうかがわせつつ、目の前の愛嬌のあるものに気持ちがほどけていく様子がにじみます。フィルの声かけに、ルークが率直な言葉で返す場面です。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
keep up の up は、「上に」という向きを表します。良い仕事の水準をぐいっと持ち上げたまま、下がらないように保ち続ける動きを思い浮かべてみましょう。風船を手で上へ押しながら、落ちないように支え続ける様子です。この「上げたまま保つ」動きが、keep up の芯にあります。
フィルの声かけは、話の流れの中でふっと出てきた、明るく前向きな一言でした。ルークの返事を思い出しながら、「良い状態のままでいてね」という声かけだったと覚えておくと、この表現の役割が思い浮かびます。
keep it up が短い形、keep up the good work が良い仕事を明示した形、と二段構えで覚えておくと、場面に合わせて使い分けやすくなります。
例文で覚える「keep up the good work」
上司から部下への声かけから、家庭内のやり取りまで、3つの例文で確認していきましょう。
You’ve finished three projects already. Keep up the good work!
(もう3つもプロジェクトを終わらせたね。その調子でがんばって。)
職場で上司が部下の成果を認める場面です。すでに終わった仕事を先に挙げると、認めたうえで続けてほしいという流れがはっきりします。
Your grades are improving. Keep up the good work.
(成績が上がっているね。この調子で続けてね。)
先生や親が子どもを励ます場面です。上がっている成績という具体的な事実を挙げてから言うと、励ましの根拠が伝わります。
A: How’s the cleaning going?
B: Almost done.
A: Great. Keep up the good work!
(A:掃除はどう?)
(B:もう少しで終わるよ。)
(A:いいね。その調子でお願い。)
家族や同僚とのやり取りです。進み具合をたずねて答えを受けてから使うと、軽い調子の励ましになります。
あわせて覚えたい関連表現
keep it up
(その調子で続けて)
keep it up は、何を続けるのかを it で受けて省いた、より短い言い方です。keep up the good work が「良い仕事」を明示して成果を認めるのに対し、こちらは軽く背中を押す一言になります。
way to go
(やったね、いいぞ)
way to go は、いま出た成果をその場でほめる言い方です。keep up the good work が今後も続けるように励ますのに対し、こちらは目の前の出来事への称賛が中心になります。
good job
(よくやった)
good job は、過去の出来をほめる言い方です。keep up the good work は、ほめる気持ちに「続けて」という依頼が加わる点が違います。
Note|「頑張って」と訳したときに抜け落ちる、すでに良いという前提
keep up the good work を日本語にするとき、まず「頑張って」という訳が思い浮かびます。ただ、この訳では、原文にある前提の一部が抜け落ちます。ここでは、日本語の「頑張って」との違いを、辞書的な意味の範囲で整理します。
日本語の「頑張って」は、これから何かに取り組む人にも、いままさに苦戦している人にも使える、未来へ向けた励ましです。試験に向かう人にも、作業の途中の人にも同じ言葉をかけられます。一方の keep up the good work は、the good work がすでに存在していることを前提にしています。「良い仕事がある」という認識があってはじめて、それを保つように励ますことができる形です。そのため、これから初めて挑戦する人へは、the good work がまだ存在せず、前提が合いません。その場面では Do your best. や Good luck. のように、これからに向けた言い方を選びます。逆に、メールやスピーチで Thank you all for your effort. のあとに使えば、日本語の「引き続きよろしくお願いします」に近い意味になります。
フィルの Keep up the good work! も、その場にいる誰かの現状を認めたうえでの声かけとして使われていました。訳すときは「頑張って」だけに絞らず、「その調子で」「引き続き」まで視野に入れると、原文の前提が残ります。
同じ励ましでも、これからに向けた言葉か、いまの成果を認めた言葉かで、選ぶ表現が変わります。
まとめ|「すでに良い」を認めて励ます一言
keep up the good work は、すでに出ている良い成果を認めたうえで、同じ水準を保つように励ます表現です。keep up が「保ち続ける」、the good work が「良い仕事」という組み合わせでできています。
上司から部下へ、先生から生徒へ、親から子へなど、成果を見届ける側が続きを促したいときに使える表現です。keep it up や way to go、good job との違いを押さえておくと、認める気持ちと依頼の気持ちの配分を調整できます。
仮装の説明から明るい励ましの声かけへと切り替わったフィルの一言には、成果を認めて背中を押すというこの表現の役割が、軽やかに表れていました。成果を認めつつ続きを頼みたい場面で使える、そんな一言です。


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