海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
大事な発表や提案の前に、頭の中で組み立てた内容を誰かに聞いてもらい、反応を確かめておきたくなったことはありませんか。
そんなときに使える「run it by me」を、『モダンファミリー』シーズン6第6話の序盤、今日が最終弁論の日で緊張しているミッチェルに、夫のキャメロンが声をかける場面から、一緒に見ていきましょう。
「run it by me」の意味とニュアンス
run it by me
意味:(考えや計画を)私に話して、意見や確認をもらう
run A by B は「AをBに話して(見せて)、反応や意見、了承をもらう」という形の表現です。runは「走る」のほかに「通す、回す」という意味で使われる動詞で、byは「〜のそばを通って」というイメージを持つ前置詞です。自分の考えや計画を相手のところへ通して、相手の反応を確かめる動きが、この表現の土台になっています。
run it by me の it は、直前の話題になっている内容を受ける語です。「それ、私に話してみて」と促す言い方で、案を持っている側が話し手、聞いて確認する側が me という役割分担になります。it の位置には名詞を置くこともでき、run the budget by my manager と言えば「予算を上司に確認してもらう」という意味になります。
今回のシーンでは、キャメロンが do you want to run your argument by me? と言っています。it の位置に your argument が入り、話し相手の me がキャメロン自身を指す形で、骨格は見出しの run it by me と同じです。
日本語にするときは、「私のところへ走らせる」のような直訳は避けて、「話して聞かせる」「見てもらう」「確認してもらう」のあたりを目安にします。run it by me again と言うと、相手の説明を「もう一度話して」と頼む言い方にもなります。
【ここがポイント!】
- 「run it by me」の核は、自分の考えを相手のところへ通して反応を見るイメージ
- run A by B の形で、A に話す内容、B に聞いて確認する人が入る表現
- 直訳の「走らせる」ではなく、「話して聞かせる」「確認してもらう」と訳し分けるのがコツ
『モダンファミリー』S06E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
この日のミッチェルは、今日行う最終弁論を前にして気持ちが落ち着かない様子です。キャメロンがその弁論を聞かせてほしいと申し出て、ミッチェルが冒頭を話し始めるところから、run your argument by me が場面の入り口になっています。会話がどこへ向かうのか、二人のやり取りに注目です。
Cameron: Well, do you want to run your argument by me?
(えっと、その弁論、僕に一度聞かせてみない?)Mitchell: Could I?
(いいの?)Cameron: Sure.
(もちろん。)Mitchell: Um, okay. Six years ago, Alger Equities took investments from municipal pension funds and private investors and funneled all of that into offshore — And I’ve already lost you.
(えっと、じゃあ。6年前、アルジャー・エクイティーズは自治体の年金基金と民間投資家から資金を集めて、その全部をオフショアに流して……もう、ついてこられなくなったよね。)Cameron: No. I was just thinking — because it’s Halloween, what if you wore these in the courtroom? Show the jury “hey, I’m playful.
(ううん。ただ、ハロウィーンだからさ、これを法廷でつけてみたらどうかなって。陪審員に「僕は遊び心のある人間です」って見せるんだ。)Mitchell: Cam, I’m an attorney, not Bugs Bunny trying to hide on a train.
(キャム、僕は弁護士なんだよ。列車に隠れようとしているバッグス・バニーじゃない。)Modern Family Season6 Episode6 (Halloween 3: AwesomeLand)
シーン解説と心理考察
キャメロンの申し出は、Well と切り出して do you want to と相手の意向を尋ねる形で、押しつけがましさのない誘い方になっています。ミッチェルが Could I? と聞き返す短い一言には、申し出を受け取る素直さがにじんでいます。
ミッチェルは Um, okay. と切り出し、年金基金や民間投資家、オフショアといった専門的な内容を一気に話します。途中で自分から I’ve already lost you. と切り上げるあたりに、法律の話が聞き手の想像から離れていくことをミッチェル自身が察している様子がにじんでいます。run by は相手に話して反応を見る表現ですが、ここでは相手の反応を待たずに、話し手の側から切り上げる形になっています。
キャメロンは No. と否定してから、話題を陪審員にどう見せるかへ移します。弁論の中身よりも、ハロウィーンの日に「僕は遊び心のある人間です」という印象を与える工夫を提案する流れです。ミッチェルは Cam と呼びかけ、弁護士であることを盾にバッグス・バニーの名前を出してやんわり断ります。聞き手を引き受けたキャメロンの関心と、真面目に仕上げたいミッチェルの温度差が、短いやり取りの中に表れています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
自分の考えを一本の細い道に見立てて、相手のところまで走らせてから通り抜けさせる様子を思い浮かべてみましょう。道を通り抜けた考えには、相手の反応という手ごたえが付いて戻ってきます。この「通して、反応を持ち帰る」動きが、run A by B の骨格です。
ミッチェルの場合は、通した考えが専門用語の多い話だったため、聞き手をおいて先へ進んでしまい、自分で「ついてこられなくなったよね」と気づく形になりました。反応を確かめるために話す、という run by の役割が、そのまま場面に表れています。
run で「走らせる」、by で「相手のそばを通す」。この二つの動きを重ねた先に、「話して聞いてもらう」という意味があります。
例文で覚える「run it by me」
計画の確認から日常のやり取りまで、run it by me の形は幅広い場面で使えます。3つの例文で確認していきましょう。
Could you run the budget by your manager before we sign?
(署名する前に、予算を上司に確認してもらえますか。)
契約の前に内容を確認してもらう場面です。run A by B の A に the budget、B に your manager が入り、聞いてもらう内容と相手がはっきり見えます。
Could you run that by me again? I missed the last part.
(もう一度言ってもらえますか。最後のところを聞き逃しました。)
相手の説明が聞き取れなかったときに、話を最初から聞かせてほしいと頼む場面です。that が相手の直前の発言を指し、again を添えると「もう一度」の意味がはっきりします。
A: I’m thinking of changing my major.
B: Run it by me before you talk to your parents.
(A:専攻を変えようかと思ってるんだ。)
(B:親に話す前に、まず私に聞かせて。)
友人同士の相談の場面です。run it by me が「先に私に話して」という誘いの一言になっていて、it が A の考えを受けています。
あわせて覚えたい関連表現
bounce an idea off someone
((人に)考えをぶつけて反応を見る)
bounce off は、投げた案がはね返ってくる感触を受け取る動きです。run by が話して確認や了承をもらう色合いを持つのに対し、感想や別の案をもらうことに重心があります。
check with someone
((人に)確認する)
check with は、事実や許可を相手に確かめる言い方です。run by は内容を話して見てもらうところまで含み、check with は確認する宛先に焦点が置かれる点が違います。
talk something over
((物事を)じっくり話し合う)
talk over は、対等に話し合うこと全般を指します。run by は自分の案を相手に聞かせる一方向の動きが中心で、話し合いに発展する前の入り口になります。
Note|話して確かめてもらう、run byとbounce offとcheck withの違い
考えや計画を人に伝えて反応をもらう言い方には、似た形の表現がいくつかあります。ここでは run by、bounce off、check with の3つを、辞書的な意味の範囲で比べます。
run by は、内容を相手に話して見てもらい、確認や了承をもらうときの言い方です。Let me run this plan by my boss. と言えば、上司に計画を見てもらう意味になり、目的は内容の確認です。bounce off は、bounce が「はね返る」という意味の語であるとおり、投げた案に対する反応を受け取る動きです。Let me bounce a few ideas off you. は、いくつかの案について感想や意見をもらいたいときの言い方になります。check with は、確認の宛先に焦点があります。I’ll check with my manager. は、上司に事実や許可を確かめる意味で、話す内容を見てもらうというより、確かめる相手を示す言い方です。
キャメロンが選んだ do you want to run your argument by me? は、弁論の内容をそのまま聞かせてもらう、という動きを表していました。反応や意見をもらうために内容を話す、という run by の形が、場面によくなじんでいます。
目的が確認か、意見か、許可かによって、動詞と前置詞の組み合わせが変わります。
まとめ|「通して確かめる」を一言で
run it by me は、自分の考えや計画を相手に話して、意見や確認をもらうときの表現です。run A by B の形で、A に内容、B に聞く人が入ります。
仕事の確認、相談の前置き、聞き逃した内容の聞き返しなどの場面で使えます。bounce off や check with との違いを押さえておくと、話して確かめる目的に合わせて言い分けられます。
ミッチェルが弁論を話し始めて、自分で「ついてこられなくなったよね」と言い添えた場面には、話してみて初めて気づくことがあるという、この表現の役割が重なっていました。相談の入り口に使える一言として、覚えておくと重宝します。


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