海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
順調だったはずのプロジェクトや人間関係が、気づけば少しずつ、うまくいかなくなっていた――そんな経験は、誰にでも一つや二つあるのではないでしょうか。
そんな「悪い方向に傾いていく」様子を表す「go south」を、『メンタリスト』シーズン5第13話、元獣医の娘ホリーが25年前のある農場の様子を静かに振り返って語る場面から、一緒に見ていきましょう。
「go south」の意味とニュアンス
go south
意味:悪化する、うまくいかなくなる
直訳すると「南へ行く」ですが、地図で南が下方向に描かれる慣習や、株価チャートで下降を矢印で示す表示などと結びつき、物事が下降線をたどる様子を表す比喩として英語に定着しました。株価や業績のような数字が絡む話題でも、人間関係や計画が破綻していく話題でも、日常からビジネスまで幅広い場面で使われる表現です。
fail や break down のように直接的な失敗を意味するのではなく、順調だったものが徐々に、あるいはある時点を境に傾いていくという「下降のプロセス」そのものを描く点が特徴です。原因をはっきり特定しないまま「うまくいかなくなった」とだけ伝えられる、便利な言い回しでもあります。
【ここがポイント!】
- 核は「南=下方向」、物事が下降していく空間的なイメージ
- 失敗そのものより、傾いていく過程そのものを描く表現
- 原因を特定せずぼかして言いたいときに便利な一言
『メンタリスト』S05E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
25年前にその農場で動物が虐待されていたという不穏な噂について、リズボンが元獣医の娘ホリーに聞き込みをしている場面です。儀式めいた噂をきっぱり否定したホリーは、母親が本当に案じていたのはもっと現実的な理由だったのだと、静かに語り始めます。
Lisbon: We heard that she was concerned about the way some of the animals were being treated. We just wanted to know what that was about.
(お母さまが動物の扱いについて何か気にかけていたと聞きました。それがどういうことだったのか、知りたくて。)Holly Preston: There were no rituals. I think my mom was just concerned that the farm was failing. People take it out on the animals once a place goes south.
(儀式なんてありませんでした。母はただ、農場がうまくいかなくなっていることを心配していたんだと思います。場所が傾いてしまうと、人は動物に当たるものだから。)Lisbon: Did you ever go up there?
(あなた自身、そこへ行ったことは?)Holly Preston: No. I was sixteen, and I was all about boys then.
(いいえ。当時16歳で、頭の中は男の子のことでいっぱいでしたから。)The Mentalist Season5 Episode13 (The Red Barn)
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シーン解説と心理考察
ホリーの返答には、噂話への苛立ちと、母への静かな擁護がにじんでいます。「儀式なんてなかった」と一度きっぱり否定してから、経営難という地に足のついた説明に切り替える語り口は、オカルト的な憶測に振り回されることへの抵抗そのものです。
go southという表現が選ばれている点も興味深いところです。動物への虐待を「悪意」や「異常」といった言葉で断罪せず、farmが徐々にうまくいかなくなった結果として説明しているところに、ホリーなりの理解と、事情を知る者だけが持てる視点の広さが表れています。
このやり取りは、事件当時の農場が抱えていた本当の問題――信仰でも呪いでもなく、単なる経営破綻だったという事実に、視聴者を静かに近づけていく橋渡しの場面でもあります。ホリー自身がその後語る告白の伏線としても、聞き逃せないシーンです。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
ホリーが言った「once a place goes south」という一言を、地図の向きそのままにイメージしてみましょう。北を上に描いた地図で、南へ向かうことは下へ下へと落ちていくことと同義です。順調だった農場のグラフが、右肩下がりに南へ傾いていく――そんな一枚の絵を思い浮かべれば、go southが持つ「下降」のニュアンスが自然と体に馴染んでいきます。地図と株価チャート、どちらも下は南、という感覚で覚えておくと忘れにくくなります。
例文で覚える「go south」
go southは仕事でも人間関係でも使える表現です。3つの場面で確認しましょう。
The negotiations went south after the client changed their budget.
(クライアントが予算を変更してから、交渉はうまくいかなくなりました。)
ビジネスの会話で、計画や交渉が崩れていく様子を伝える定番の言い方です。
Their friendship went south after the argument last summer.
(去年の夏の口論以来、2人の友情はぎくしゃくしています。)
人間関係が徐々に冷えていく様子にも自然に使えます。
A: How’s the new restaurant doing?
B: Honestly? Things went south pretty fast after the reviews came out.
(A:新しいレストラン、調子はどう?)
(B:正直に言うと、レビューが出てから急に厳しくなったよ。)
くだけた会話で、経営状況の悪化をぼかして伝える場面です。
あわせて覚えたい関連表現
take a turn for the worse
(悪い方向へ向かう)
go southよりもややフォーマルで、体調や状況が急変するニュアンスが強い言い方です。go southの方が口語的で、じわじわとした下降にも使えます。
hit rock bottom
(どん底まで落ちる)
go southが下降の過程を描くのに対し、こちらは下降しきった最終地点を指す表現で、深刻さの度合いがより強くなります。
be on the skids
(下り坂にある)
古いスラング寄りの言い方で、go southと同じく比喩的に「傾く」様子を表しますが、経済状況や事業の話題で使われる頻度が高めです。
Note|「南へ行く」がなぜ「悪化する」になったのか、地図と計器の2つの説
go southという言い方が、なぜ「南」という方角と結びついたのでしょうか。今回のシーンを入り口に、その成り立ちをたどってみましょう。
この表現の由来には諸説あり、外部で確認できる決定的な一次資料は多くありませんが、有力な説として語られているのが、地図の描き方に由来するというものです。北を上に置く地図の慣習が定着した近代以降、南へ向かうことは地図上で「下へ」進むことと同義になりました。株価や気温、成績など、数値の変化をグラフで表す文化が広がるにつれて、「下がる」という感覚と「南」という方角が結びつき、go southという言い回しが日常会話に浸透していったと考えられています。もう一つの説として、飛行機の計器類で北を上、南を下に表示するダイヤルがあり、パイロットの間で「go south」が「機体が下降する・故障する」という意味の隠語として使われていたという話も紹介されることがあります。どちらの説が主流かは資料によって幅がありますが、いずれも「南=下」という空間的な感覚が土台にある点は共通しています。
ホリーが「once a place goes south」と語ったとき、彼女が思い浮かべていたのはおそらく農場の経営グラフです。畑の収穫も、人手の確保も、右肩下がりに南へ落ちていく――そんな下降のイメージが、たった二語の中に凝縮されています。
方角の比喩が、経済や人間関係にまで広がっている点が興味深い表現です。
まとめ|「南へ向かう」で伝わる、下降のプロセス
go southは、南という方角が持つ「下」のイメージが、そのまま「物事が悪化する」という意味に転じた表現です。
failやbreak downのように結末だけを言い切るのではなく、順調だったものが少しずつ傾いていく過程そのものを描ける点が、この表現ならではの強みです。
仕事の雲行きが怪しくなってきたとき、友人との関係がぎくしゃくし始めたとき、断定を避けながらも状況の変化を伝えたい場面で、この一言を表現の幅に加えてみてください。ホリーが淡々と語った農場の顛末が、少し違って聞こえてくるはずです。


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