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証拠もないのに、相手の言葉をそのまま信じていいのだろうかと、判断に迷った経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
そんな「言葉をそのまま信じる」というニュアンスを表す「take someone at their word」を、『メンタリスト』シーズン5第13話の終盤、事件の結末をめぐってリズボンとハフナーが言葉を交わす場面から、一緒に見ていきましょう。
「take someone at their word」の意味とニュアンス
take someone at their word
意味:(人)の言葉を額面どおり受け取る、鵜呑みにする
word には「言葉」のほかに「約束」という意味もあり、take someone at their word は、相手が口にした言葉を証拠や裏づけの有無にかかわらず、そのまま信頼して受け止めるという行為を表します。at their word という前置詞句が、まさに「その言葉の地点で」相手を受け止めるという構図を作っています。
疑おうと思えば疑える状況で、あえて相手の言い分を信じるという選択そのものに焦点が当たる表現で、単に believe と言うよりも「証拠より言葉を優先した」という判断の経緯まで伝わる点が特徴です。
【ここがポイント!】
- 核は「言葉の地点でそのまま受け止める」、信頼のイメージ
- 疑う余地がある中であえて信じるという選択に焦点がある表現
- 証拠より言葉を優先したという判断の経緯まで伝わる一言
『メンタリスト』S05E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
正当防衛で1人だけを殺害したというホリーの主張について、検察の起訴内容が過失致死にとどまったことにハフナーが異議を唱える終盤の場面です。Visualize側の意向を受けたとおぼしきハフナーに対し、リズボンはある確信を静かに口にします。
Haffner: Word is Holly Preston’s only gonna face manslaughter charges for the homicides. That true?
(ホリー・プレストンは殺人ではなく過失致死でしか起訴されないと聞いたが。本当か?)Lisbon: She only killed one of them, and it was in self-defense.
(彼女が殺したのは1人だけ、しかも正当防衛よ。)Haffner: That’s what she says. Are you in the business of taking killers at their word?
(本人がそう言っているだけだ。人殺しの言葉を鵜呑みにするのが君の仕事か?)Lisbon: I believe her.
(私は彼女を信じる。)The Mentalist Season5 Episode13 (The Red Barn)
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シーン解説と心理考察
ハフナーの問いかけは、皮肉と挑発が入り混じった巧妙な言葉選びです。take someone at their wordという表現をあえて「殺人犯(killers)」という強い言葉と組み合わせることで、リズボンの判断を感情的に揺さぶろうとしています。
対するリズボンの「I believe her.」という短い返答が際立つのは、その前にハフナーが仕掛けた挑発をまったく受け流している点です。take at their wordという中立的な言い回しではなく、あえてbelieveという踏み込んだ動詞を選ぶことで、単なる制度的な判断ではなく、彼女個人としての確信であることを示しています。
このやり取りは、事件そのものの決着だけでなく、リズボンという人物が何を基準に人を判断するかという、シリーズを通した彼女の価値観を凝縮した一幕でもあります。証拠と沈黙の間で揺れる法廷劇の緊張感が、短い会話の中に凝縮されています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
ハフナーの「Are you in the business of taking killers at their word?」という問いを、天秤の絵として思い浮かべてみましょう。片方の皿に「証拠」、もう片方の皿に「言葉」を乗せたとき、take someone at their wordは、証拠の重みを問わずに言葉の皿だけをそのまま信じて受け止める行為です。リズボンが天秤を使わず、まっすぐ言葉だけを受け止めた場面として覚えておくと、このフレーズが持つ「あえて信じる」という選択の重みが記憶に残りやすくなります。
例文で覚える「take someone at their word」
take someone at their wordは、信頼が絡む場面で幅広く使われる表現です。3つの場面で確認してみましょう。
I’ll take you at your word that the report is finished.
(レポートが完成したというあなたの言葉を、そのまま信じることにします。)
ビジネスの会話で、確認を省いてあえて相手を信頼する姿勢を示す言い方です。
You shouldn’t always take politicians at their word.
(政治家の言葉を、いつも鵜呑みにすべきではありません。)
やや懐疑的な文脈でも使われ、「言葉だけで判断する危うさ」を示すこともあります。
A: I promise I’ll pay you back by Friday.
B: Okay, I’ll take you at your word.
(A:金曜日までに必ず返すって約束するよ。)
(B:わかった、その言葉を信じるよ。)
友人同士の約束の場面で、信頼を示す返事として使われます。
あわせて覚えたい関連表現
give someone the benefit of the doubt
(疑わしきは相手に有利に解釈する)
take someone at their wordより踏み込みが弱く、確信には至らないがとりあえず信じておくニュアンスです。
take something with a grain of salt
(話半分に聞いておく)
take someone at their wordとは正反対の態度で、相手の言葉を割り引いて受け止めます。
vouch for someone
((人)の身元・言動を保証する)
自分が第三者に相手の信頼性を証明する表現で、take someone at their wordが内心の判断であるのに対し、こちらは対外的な保証を伴います。
Note|「真実優先理論」から見る、証拠より言葉を信じてしまう心理
人はなぜ、確たる証拠がなくても、相手の言葉をそのまま信じてしまうことがあるのでしょうか。今回のシーンを入り口に、この心理の背景を見てみましょう。
コミュニケーション研究の分野では、人間には相手の発言を基本的に真実だとみなして受け止める傾向があるとする「真実優先理論(Truth-Default Theory)」という考え方が知られています。心理学者のティモシー・レヴァインらが提唱したこの理論によれば、人は会話のたびに相手の発言の真偽をいちいち吟味しているわけではなく、特別な違和感や矛盾がない限り、無意識のうちに「本当だろう」という前提で会話を進めているとされます。日常生活のあらゆるやり取りを逐一疑いながら聞いていては、コミュニケーションそのものが成立しなくなってしまうため、この「真実をデフォルトにする」姿勢は、社会生活を送るうえでむしろ合理的な戦略だと説明されています。ただしこの理論は同時に、だからこそ人は巧妙に作られた嘘を見抜きにくいという弱点も併せて指摘しています。
リズボンが証拠よりもホリーの言葉を信じると口にした場面は、単なる感情的な判断ではなく、それまでの捜査で積み重ねてきた人間観察と信頼という土台があったからこそ成立した、「真実優先」の一例だったのかもしれません。
言葉を信じるという何気ない行為の裏には、常にこうした心理的な土台が働いています。
まとめ|証拠より言葉を選んだ、あの一言の重み
take someone at their wordは、証拠の有無にかかわらず、相手の言葉そのものをそのまま受け止めるという判断の姿勢を表す表現です。
believeという一語だけでは伝わらない、「疑おうと思えば疑えた」という前提があったうえでの選択だという経緯まで、この言い回しは伝えてくれます。
信頼を口にする場面、あるいは誰かの言葉を信じると決めた瞬間に、この一語を会話のレパートリーに加えてみてください。ハフナーの挑発をまっすぐ受け止めたリズボンの一言が、少し違う重みを持って響いてくるはずです。


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