海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
待ち合わせの相手が来るまで、気づけば1時間近く待っていた。作業が思ったよりかかり、午後のほとんどを使ってしまった。そんな「ほぼ全部」に近い時間の長さを、英語ではどう言えばよいのでしょうか。
その場面で使える「the better part of」を、『モダンファミリー』シーズン8第14話の中盤、キャメロンが子どものころの体験を語る場面から、一緒に見ていきましょう。
「the better part of」の意味とニュアンス
the better part of
意味:〜の大半、〜近く(時間や量のほとんど)
the better part of は、時間や期間、量のうち、大部分を占める分を表す言い方です。the better part of an hour なら、「1時間のうちの大半」、つまり「1時間近く」という長さになります。
ここでの better は、「より良い」という意味ではありません。「より大きいほうの」という意味で、全体を二つの部分に分けたとき、大きいほうの部分を指します。part は「部分」なので、直訳は「より大きいほうの部分」です。そこから「大半」という日本語につながります。
形は、the better part of のあとに、an hour、the day、a year のような期間や量を表す名詞を置きます。台詞の for the better part of an hour のように、for と組み合わせて「〜の大半の間」という継続の長さを示す使い方が基本です。for を付けずに、動詞の目的語として使う形もあります。
「ほぼ全部」に近い大きな割合を表しますが、ちょうど全部とは限りません。数字をそのまま言う代わりに、「かなり長かった」という感覚を一緒に伝えられるのが特徴です。
【ここがポイント!】
- 「the better part of」の核は、時間や量の大部分を占める分を表すこと
- better は「より良い」ではなく、「より大きいほうの」という意味
- the better part of an hour は「1時間近く」と訳すと自然になる
『モダンファミリー』S08E14のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
検査を受けたくないキャメロンが、子どものころに井戸に落ちた体験を語る流れの中の一言です。その体験の長さを言い表す部分に、フレーズが含まれています。なだめる声が続き、最後に時間を示す短い返しが入ります。
Cameron: Everybody loves a baby, but not one single prayer for a husky teen who’s stuck head-first in a well for the better part of an hour.
(赤ちゃんはみんなに愛されるけど、井戸に頭から挟まった体格のいい十代には、お祈りの一つもなかったんだ。1時間近くもだよ。)— Okay, Cam, come on. You have got to calm down, all right? It’ll be over before you know it.
(ねえ、キャム、頼むよ。落ち着いてよ、いいかな? あっという間に終わるって。)— In an hour.
(1時間後にはね。)Modern Family Season8 Episode14 (Heavy is the Head)
シーン解説と心理考察
キャメロンは、赤ちゃんはみんなに愛されるのに、という対比から話し始めます。but のあとに not one single prayer と続き、お祈りの一つもなかったと言い切っています。one single は「一つとして」という強調で、ゼロだったことを際立たせています。
そのうえで、井戸に頭から挟まった状態が for the better part of an hour 続いた、と時間を添えます。「1時間近く」という言い方は、ちょうど1時間という数字ではなく、ほぼ丸ごとという長さの感覚を伝えます。数字の正確さより、長かったという実感が前に出ている台詞です。the better part of のあとの an hour は、全体の基準になる量で、その大半を占める長さだと示しています。
続いて、キャメロンをなだめる声が入ります。Cam と呼びかけ、落ち着くように促し、It’ll be over before you know it. と、あっという間に終わると告げます。before you know it は「気づかないうちに」という言い方で、時間の短さを伝える決まった形です。
最後の In an hour. は、時間を示す短い一言です。前置詞 in は「〜後に」という時間の経過を表し、ここでは1時間が経ったあとという意味になります。キャメロンが語った「1時間近く」と、検査の終わりまでの時間が、同じ「1時間」という数字で結びつく場面です。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
1時間を円グラフにすると、大きな扇形がほとんど塗りつぶされていて、残りはわずかです。全部ではないけれど、その塗られた大きな部分が the better part of です。
better を「より良い」ではなく、「大きいほうの」と読み替えると解決します。覚えるときは、good の比較級という見方をいったん外して、「大小の比較」と読み替えます。二つに分けたときの大きいほうの部分、と読み替えると、「大半」の意味が見えてきます。
キャメロンの for the better part of an hour は、扇形がほぼ塗りつぶされた長さの話でした。数字を丸めず、「ほぼ全部」の重さを伝える言い方です。長さをそのまま実感として語りたいときに、手元の道具になります。
例文で覚える「the better part of」
時間を表す the better part of を、待ち時間、会議、仕事の経歴という3つの場面で確かめていきましょう。後ろに置く名詞を入れ替えるだけで、長さの単位を自由に変えられます。
I waited for the better part of an hour.
(私は1時間近く待ちました。)
待たされた経験を語る場面です。for と組み合わせると、待った長さを示せます。
A: How long was the meeting?
B: The better part of the afternoon.
(A:会議はどのくらいかかった?)
(B:午後の大半だよ。)
所要時間を答える往復の会話です。名詞だけを返す短い答え方にもなります。
She spent the better part of her career in sales.
(彼女はキャリアの大半を営業で過ごしました。)
人の経歴を説明する場面です。時間だけでなく、期間のまとまりにも使えます。
あわせて覚えたい関連表現
most of
(〜のほとんど)
most of は、量や割合の「ほとんど」を表す基本の言い方です。the better part of は、時間や期間について、長かったという感覚を足して使われます。
nearly / almost
(ほぼ、もう少しで)
nearly an hour は、「あと少しで1時間」という近さを表します。the better part of an hour は、「1時間のうちの大部分」を指し、1時間に届くとは限りません。
the best part of
(〜の大半)
意味は近い表現です。the better part of の better を best に入れ替えた形で、同じ「大半」を表します。形がよく似ているので、並べて見比べると区別しやすくなります。
Note|better を「より良い」と訳さない。the better part of が指す「大半」の量
the better part of は、構成する語をそのまま訳すと、意味がずれる表現です。ずれが生じる箇所と、近い表現との距離感を整理します。
ずれの原因は、better です。better という語を見ると、「より良い」という意味が頭に浮かびます。しかし、この表現では「質」ではなく「量」を比べています。the better part は「質のよい部分」ではなく、「大きいほうの部分」を指します。
その結果、the better part of an hour を「1時間の良い部分」と訳すと、意味が通りません。正しくは「1時間の大半」「1時間近く」です。part は「部分」、better は「大きいほうの」と読み替えれば、直訳の違和感はなくなります。
近い表現との距離も確認しておきます。most of は、量や割合のほとんどを表す基本の言い方で、時間にも使えます。nearly や almost は、「あと少しで届く」という近さを表し、基準の数字に近づく感覚を持ちます。the better part of は、基準に近づくというより、全体のうち大きい部分を占めるという割合の感覚で、長さを実感として伝えます。
日本語にするときは、「〜近く」「〜の大半」「ほぼ〜」を、文脈に合わせて選びます。待ち時間なら「1時間近く」、経歴なら「キャリアの大半」と訳すと、自然に収まります。台詞のように、継続を表す for が付いているときは、「〜近くのあいだ」と、期間の長さを添えるとさらに近づきます。
まとめ|数字を丸めて、長さの実感を伝える
the better part of は、時間や期間、量の大部分を表す言い方です。for と組み合わせて「〜の大半の間」という継続の長さを示し、an hour、the day、a year などの名詞を後ろに置きます。
better は「より良い」ではなく「より大きいほうの」と読みます。この読み方を押さえると、直訳のずれは消え、「大半」「〜近く」という訳が自然に出てきます。
作業が長引いたとき、待たされたとき、年月を振り返るとき。待ち時間や作業の長さを話すとき、数字を丸めて the better part of に置き換えてみてください。長さの実感が、そのまま一つの言い回しに収まります。


コメント