海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
本番を前にして、相手に押される前に、自分の頭の中の悪い想像に押されて調子を崩してしまう。そんな状態を、英語は「自分で自分に心理戦を仕掛ける」という形で言い表します。
その状態を指摘する「psych oneself out」を、『モダンファミリー』シーズン8第16話の前半、体育館に戻ってきたフィルに、息子のルークが声をかける場面から、一緒に見ていきましょう。
「psych oneself out」の意味とニュアンス
psych oneself out
意味:自分で勝手に不安になって調子を崩す、自分でプレッシャーをかけて萎縮する
psych oneself out は、本番を前にして、考えすぎや悪い想像で不安をふくらませ、力を出せなくなることを表す口語表現です。原因は相手や状況ではなく、自分自身の頭の中にある、という点が核になります。
土台になっているのは、psych someone out という言い方です。「相手の心を揺さぶって調子を狂わせる」という意味で、揺さぶるのは自分、揺さぶられるのは相手です。目的語を oneself に替えると、揺さぶる側と揺さぶられる側が同じ人物になり、向きが自分に折り返されます。
oneself は、主語に合わせて myself / yourself / himself / herself / themselves と変わります。ドラマの台詞は you’re psyching yourself out の形で、現在進行形です。進行形は、今まさに自分で不安をふくらませている最中だ、という指摘になります。相手に you を向ければ考えすぎている本人に気づかせる言い方に、あとから振り返るなら I psyched myself out のように過去形になります。
語順にも決まりがあります。代名詞を目的語にするときは、psych yourself out のように psych と out の間に入れます。名詞を目的語にするなら、psych out the other team のように、後ろへ置く形も取れます。
日本語にするときは、「自分で自分をビビらせる」「自分で勝手に不安になる」「考えすぎて萎縮する」のように、「自分で」という向きを残した訳が合います。
【ここがポイント!】
- 「psych oneself out」の核は、不安の原因が自分自身の考えすぎにあるという向き
- psych someone out の目的語を oneself に替えた形で、oneself は主語に合わせて変わる
- 代名詞は psych と out の間に入れる
『モダンファミリー』S08E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
体育館に戻ってきたフィルが、前にこの場所で打ちのめされたことを口にし、それを聞いた息子のルークが声をかける場面です。「psych oneself out」の形は、ルークのひと言で使われています。
Phil: Feels weird to be back here. This gym got the better of me once.
(ここに戻ってくるのは変な感じだな。この体育館には、前に打ちのめされたことがあるんだ。)Luke: Dad, you’re psyching yourself out.
(父さん、自分で自分をビビらせてるよ。)Phil: You’re right. The only thing different between this year and last is I’m prepared this year.
(その通りだ。去年と今年で違うのは、今年は準備ができてるってことだけだ。)Modern Family Season8 Episode16 (Basketball)
シーン解説と心理考察
フィルの Feels weird to be back here は、主語の It が省かれた話し言葉で、「ここに戻ってくるのは変な感じがする」という意味です。続く This gym got the better of me once の get the better of は、「〜に打ち勝つ、〜を上回る」という意味の言い方です。ここでは人ではなく体育館を主語にして、「この体育館に負かされた」と語っています。
ルークは Dad と呼びかけてから、you’re psyching yourself out と指摘します。フィルが口にしたのは、この場所への気持ちだけです。ルークの指摘は、不安の原因が体育館そのものではなく、フィル自身の頭の中にある、というものです。揺さぶっているのも揺さぶられているのもフィル自身、という向きが、yourself という一語に入っています。
フィルは You’re right. とすぐに認めます。指摘をそのまま認める返事です。そのあと、去年と今年で違うのは、今年は準備ができていることだけだ、と続けます。the only thing different は「違うのはそれだけ」と絞り込む言い方で、this year and last の last は last year の省略です。去年と今年を並べて、準備の有無で違いをつけています。
ルークの台詞は、短いのに情報が詰まっています。Dad という呼びかけで相手を呼び、you’re と主語を置き、psyching yourself out で原因が自分にあることを示します。慰めの言葉も、長い説明もありません。相手が自分で気づける最小限の言葉で、状態を言い当てる言い方です。
この流れは、psych oneself out の使いどころをよく示しています。相手が悪い想像をふくらませているとき、「大丈夫だよ」と励ます代わりに、「それは自分でやっていることだよ」と原因の向きを教える。原因の向きを一言で示すのが、この表現の使いどころです。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
手順で覚えます。まず、psych someone out で「相手の心を揺さぶって調子を狂わせる」。次に、someone を oneself に替えます。揺さぶる側と揺さぶられる側が同じ人物になり、「自分で自分を揺さぶる」という意味に切り替わります。目的語が変わるだけで意味の向きが折り返される、と順番に頭へ置いておきます。
フィルの場面では、this gym got the better of me once のあとに psyching yourself out が続きます。場所に負かされた記憶と、自分で自分を揺さぶるという言葉が並んだ形で覚えておくと、状況ごと思い出せます。
形は、you’re psyching yourself out の you と yourself が同じ人物を指している、と確かめながら口に出します。口に出すたびに、主語と oneself が同じ人物かを確かめます。
例文で覚える「psych oneself out」
試験、面接、チームの話と、場面の違う3つの文で使い方を確かめます。
Don’t psych yourself out before the exam. You’ve studied enough.
(試験の前に、自分で自分をビビらせないで。勉強は十分したでしょう。)
試験前の友人に声をかける場面です。命令形の否定にすると、「自分で不安をふくらませないで」という制止の言い方になります。
A: I can’t do this interview. I’m going to freeze.
B: You’re psyching yourself out. Just be honest.
(A:この面接は無理。きっと頭が真っ白になる。)
(B:自分で自分を追い込んでるよ。正直に話せばいいんだから。)
面接前に弱気になった人への返しです。ドラマの台詞と同じ現在進行形で、「今まさに自分でやっていることだ」と指摘しています。
The coach told the team not to psych themselves out before the final.
(コーチは、決勝の前に自分たちで自分を追い込まないよう、チームに言いました。)
大一番を前にしたチームの話です。主語が複数なので、oneself は themselves になっています。
あわせて覚えたい関連表現
psych someone out
(相手の心を揺さぶって調子を狂わせる)
目的語が他人なら揺さぶる相手は別の人、oneself なら自分、と向きが入れ替わります。psych oneself out は、この形の目的語を自分に折り返した言い方です。
psych oneself up
(気持ちを奮い立たせる)
up は気持ちを高める方向で、out は調子を崩す方向です。同じ「自分に働きかける」形でも、向かう先が反対になります。
choke
(本番で緊張して失敗する)
choke は失敗そのものを指します。psych oneself out は、失敗に向かう前の、自分で不安をふくらませている状態を指す点が違います。
Note|「ビビる」と訳す前に確かめたい、psych oneself out の向き
psych oneself out は、日本語に直すとき、「ビビる」「気後れする」「自滅する」など、いくつかの訳語が頭に浮かびます。どれも近い気持ちを表しますが、重心の置きどころが少しずつ違うので、向きに注目して比べてみます。
「ビビる」は、怖がるという感情そのものを指します。何がその怖さの原因なのかは、言葉に含まれていません。「気後れする」は、相手や場の雰囲気に圧倒されて、気持ちが引いてしまう状態を指します。原因は、相手や場の側にあるのが基本です。「自滅する」は、自分の行動が原因で失敗するという結果に重心があります。
psych oneself out は、感情の名前でも、結果の名前でもありません。誰が誰の心を揺さぶっているのかという、向きを言い表す形です。揺さぶる側も揺さぶられる側も自分、というつくりが、そのまま意味になっています。
ルークの台詞を「父さん、ビビってるよ」と訳すと、父親が怖がっているという感情だけが残ります。「自分で自分をビビらせてるよ」と訳せば、原因が自分自身にあるという向きまで残ります。同じ場面でも、訳語の選び方で、伝わる指摘の中身が変わります。
ルークの「自分で自分をビビらせてるよ」には、原因が自分の中にあるという向きまで入っていました。
まとめ|自分で自分を揺さぶる、その向きを押さえる
psych oneself out は、本番を前に、考えすぎや悪い想像で不安をふくらませ、調子を崩すことを表す口語表現です。psych someone out の目的語を oneself に替えた形で、oneself は主語に合わせて変わります。
体育館に戻ってきたフィルは、前にここで負かされた記憶を口にしました。ルークは、その気持ちが自分自身の不安をふくらませていると指摘し、フィルは You’re right. と受け止めて、今年は準備ができていると続けました。
psych oneself out の向きは、揺さぶる側も揺さぶられる側も自分であることに表れています。


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