海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
家族みんなの機嫌が揺れているとき、自分だけは言い争いの火種を作らないように、そっと立ち回った経験はありませんか。
そんな場面にぴったりの「keep the peace」を、『モダンファミリー』シーズン10第11話の前半、ヘイリーの妊娠が「つらい滑り出し」だとフィルが語るひと言から、一緒に見ていきましょう。
「keep the peace」の意味とニュアンス
keep the peace
意味:波風を立てないようにする、その場の穏やかさを保つ
keep the peaceは、争いや気まずい空気が起きないように、その場の穏やかな状態を保つことを表します。keepは「保つ」、peaceは「平和・平穏」を表す語です。ただし、この表現でのpeaceは戦争のない平和ではなく、家庭や職場といった身近な人間関係の落ち着いた状態を指します。
形としては、the peaceの部分は決まっていて、そこに場所や相手を添える言い方がいくつかあります。here in the houseのように場所を示す言い方、between A and Bのように間に立つ相手を示す言い方、with someoneのように関わる相手を示す言い方です。作中ではhere in Hormone Townと続いていて、どこで穏やかさを保つのかが後ろに添えられています。
自分の意見を引っ込めて荒立てないようにする、という含みが出ることもあります。keepの代わりにmakeを使うと意味が変わるので、動詞の違いにも注意が必要です。日本語にするときは「平和を保つ」と直訳するより、「波風を立てない」「場を荒らさない」と訳したほうが場面に合います。
【ここがポイント!】
- 「keep the peace」の核は、衝突を避けてその場の穏やかさを保つこと
- peaceは戦争のない平和ではなく、身近な人間関係の落ち着いた状態を指す
- between A and Bやwith someoneで、相手を後ろに添えられる形も押さえたい
『モダンファミリー』S10E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
フィルが、ヘイリーの妊娠の様子と、妻クレアの様子を並べて語る場面です。症状を列挙したあとに自分の立ち位置を述べる流れで、keep the peaceはその締めのひと言に出てきます。
Phil: Haley’s pregnancy is off to a rough start.
(ヘイリーの妊娠は、つらい滑り出しになってるんだ。)Phil: Nausea, moodiness, trouble sleeping Claire’s got it all.
(吐き気に、情緒不安定に、寝不足。クレアは全部そろってるよ。)Phil: Me, I’m just trying to keep the peace here in Hormone Town.
(俺はといえば、このホルモン・タウンで、ただ波風を立てないようにしてるだけさ。)Modern Family Season10 Episode11 (A Moving Day)
シーン解説と心理考察
フィルはまず、ヘイリーの妊娠が「つらい滑り出し」になっていると切り出し、吐き気、情緒不安定、寝不足と、症状を順に挙げていきます。話題はヘイリーのことなのに、続く「クレアは全部そろってるよ」では、並べた症状をクレアの様子になぞらえています。ヘイリー本人の話から妻の様子へ、軽い冗談として話が移っていく流れです。
この「全部そろってる」は、ヘイリーの症状をそのままクレアに当てはめた、茶化し気味の言い方です。it allの「それ全部」は、直前に並べた三つの症状を受けています。症状を数え上げてから「全部」と言い切る調子に、フィルの陽気な語り口がにじみます。三つ並べたあとに「全部」とまとめることで、話がひとつのオチに向かっていくのも、この語りの特徴です。
締めのMe, I’m just trying to keep the peaceでは、Meを文頭に置いて、自分の役回りを前に出しています。justが入ることで、ただそうしているだけ、大ごとにするつもりはない、という控えめな響きになり、自己申告のひと言として響きます。here in Hormone Townのホルモン・タウンは、場所の名前ではなく、妊娠をめぐって気分の波が立ちやすい状況を町に見立てた呼び名です。
症状を並べて笑いにしつつ、自分は荒立てないようにしているとまとめています。その順番に、フィルの調子のよい語りの組み立てが表れています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
割れやすいガラスの器(peace)を、中身をこぼさないように両手で抱えて歩く姿を思い浮かべてみましょう。揺らせばこぼれてしまうので、足取りは慎重になります。この「壊さないように持ち続ける」動きが、keep the peaceの絵になります。
フィルの発言は、ホルモン・タウンという気分の波が立ちやすい町の中で、その器を傾けないように歩いているという語りでした。器の中身は家の中の穏やかさだと考えると、keepが「保つ」を表す理由も、peaceが「平和」より「穏やかさ」に近い理由も、まとめて思い出せます。
例文で覚える「keep the peace」
keep the peaceは、争いを避ける理由や、間に立つ相手を添えて使います。本心を引っ込めた場面、言い争いを避けた理由を聞かれる場面、人の間を取り持つ場面の3つで、見ていきましょう。
I just said yes to keep the peace.
(波風を立てたくなくて、とりあえず「うん」と言っただけだよ。)
本心では賛成していないのに、その場の空気を優先した場面です。justを添えると、深い意味はないという軽い響きになります。
A: Why didn’t you argue with him?
B: I wanted to keep the peace.
(A:どうして彼に言い返さなかったの?)
(B:波風を立てたくなかったんだ。)
口論を避けた理由を聞かれる、友人同士の会話です。want toの形にすると、荒立てない理由を自分の気持ちとして答えられます。
The manager tried to keep the peace between the two teams.
(部長は2つのチームの間の穏やかさを保とうとした。)
部署間の対立が広がらないようにする、ビジネスの場面です。between A and Bで、間に立つ相手が示されます。
あわせて覚えたい関連表現
rock the boat
(波風を立てる)
rock the boatは、安定している状況をあえて揺らすときの表現です。keep the peaceとは反対の向きなので、並べて覚えると対になります。
smooth things over
(こじれたことを穏便に収める)
smooth things overは、すでに生じた対立や気まずさをなだめて収める言い方です。keep the peaceは、そもそも荒立てないように保つほうに重みがあります。
make peace
(仲直りする、和解する)
make peaceは、対立していた相手と和解する動作を表します。keep the peaceは、今ある穏やかさを維持することを指します。
Note|「平和」と訳すと大げさになる peace、場面ごとの訳し分け
keep the peaceをそのまま「平和を保つ」と訳すと、少し大げさな日本語になります。peaceをどう訳すかで、場面への収まりが変わります。
peaceには、「戦争のない状態」を表す意味のほかに、「争いがなく落ち着いている状態」を表す意味があります。keep the peaceのpeaceは後者で、国と国の関係ではなく、家庭や職場のような身近な場の状態を指します。たとえば、I just said yes to keep the peace.は、「平和を保つために同意した」ではなく、「波風を立てたくなくて同意した」と訳すと自然です。The manager tried to keep the peace between the two teams.なら、「2つのチームの間の穏やかさを保とうとした」「対立が広がらないようにした」のように、場に合わせて言葉を選べます。警察や警備の場面でのkeep the peaceは、「治安を保つ」と訳します。
フィルのひと言のpeaceも、ホルモン・タウンという身近な場の穏やかさを指しています。「ただ波風を立てないようにしてるだけさ」と訳せば、大げさにならず、自己申告の軽い響きも残ります。訳語の大きさを場面の大きさに合わせると、自然な日本語に収まります。
まとめ|ホルモン・タウンで波風を立てない、フィルの立ち位置
keep the peaceは、争いや気まずさが起きないように、その場の穏やかさを保つ表現です。peaceは大きな平和ではなく、家庭や職場のような身近な場の落ち着きを指します。
言い返さずに引いたとき、対立する二人の間に立つとき、会話の波風を避けたいときに、そのまま英文へ組み込めます。between A and Bやwith someoneで相手を添えると、誰との穏やかさなのかも示せます。
ヘイリーの妊娠をめぐって気分の波が立つ中で、症状を笑いにしながら、自分は荒立てないようにしているとフィルは語ります。その一言は、言い返したい気持ちを飲み込む場面にそのまま重ねられる表現です。


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