海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回は『ビッグバン★セオリー』シーズン9 第15話から、つらかった時期を振り返って語り直す英語を取り上げます。バレンタインデーに旗の番組を生配信しているシェルドンとエイミーのもとへ、恋人と別れたばかりのラージから電話がかかってくる場面が舞台です。
go throughやfirst handといった表現は、つらい経験をそのまま言葉にするときの支えになってくれます。3人のやり取りを追いながら、順番に見ていきましょう。
「hurt this much」つらさの程度をそのまま口にする
生配信の終盤、電話越しのラージが、抱えている気持ちを言葉にします。自分から誰かと別れたのは今回が初めてだという打ち明け話です。
Raj (voice): I mean, this is the first time I’ve ever broken up with someone. I just, I didn’t realize it was gonna hurt this much.
(だって、自分から誰かと別れたのは今回が初めてなんだ。ただ、こんなに苦しいなんて思ってなかったんだよ。)Amy: It really can.
(本当に、そうなることがあるのよ。)TBBT Season9 Episode15
hurt this muchのthis muchは、「これほど」と程度を指し示す口語表現です。いま感じているつらさをthisで指すことで、想像を超えていたという実感が率直に伝わってきます。
エイミーの返事は、It really can.のわずか3語です。canの後ろに続くはずのhurt this muchを繰り返さず、助動詞だけで受け止める省略の形になっています。
短い一言ながら、相手の言葉を否定も誇張もせずに認める応じ方で、聞き役としての姿勢が表れています。
「know first hand」身をもって知っていると伝える
一方のシェルドンは、旗の話ができないまま進む生配信にしびれを切らし、番組を投げ出すような言葉を口にします。ラージが恐縮して電話を切ろうとしたところで、エイミーが割って入ります。
Amy: No, hold on, Rajesh. You know, you’re not being very sympathetic. You know first hand that breakups are hard.
(だめよ、待って、ラジェシュ。ねえ、あなた、思いやりが足りていないわ。別れがつらいことは、身をもって知っているはずでしょう。)TBBT Season9 Episode15
前半のhold on(待って)は電話の相手であるラージへ、後半のyouは隣にいるシェルドンへ向けた言葉です。ひと続きの台詞の中で宛先が切り替わるのが面白いところです。
know first hand は「身をもって知っている」。first handが「直接に」という意味の副詞句として働き、人づてではなく自分の体験として知っていることを示します。firsthandと1語で綴られることもあります。
sympathetic は「思いやりがある」という形容詞です。not very sympatheticと打ち消しにすれば、直接の非難をやわらげつつ、足りなさをはっきり指摘する言い方になります。
「grateful for having gone through it」済んだ経験を語り直す
エイミーにたしなめられたシェルドンが、あらためてラージに向き合います。ここで出てくるのが、タイトルにも掲げた一文です。
Sheldon: Raj, now, I’m sorry you’re suffering. When Amy and I were broken up, I also suffered. And this may sound surprising, but I’m grateful for having gone through it.
(ラージ、いいかい。苦しんでいるのは気の毒に思うよ。エイミーと別れていた間は、僕も苦しんだ。それから、意外に聞こえるかもしれないけど、僕はあれを経験できたことに感謝しているんだ。)Amy: Really?
(本当に?)TBBT Season9 Episode15
be grateful for having gone through it は、having goneという完了形の動名詞が「すでに済んだ経験」を指すのがポイントです。いまの自分から振り返って、あの経験があってよかったと語り直す形と言えます。
go through は「(つらいことを)経験する、くぐり抜ける」。出来事の中を通り抜けるイメージの句動詞です。
切り出しの This may sound surprising, but ~ は、意外な話を前置きで和らげる型です。この後の stronger than ever(かつてないほど強い)と、エイミーの短い同意So do I.(私もよ)にも、振り返りの視点が表れています。
まとめ|どの時点から語るかで言葉は変わる
今回は、hurt this muchでつらさの程度を言葉にし、know first handで体験に裏づけられた理解を示し、grateful for having gone through itで済んだ経験を語り直す英語を見てきました。
同じ出来事でも、渦中で語るか、あとから振り返って語るかで、選ばれる表現が変わっていくのが分かります。次回も『ビッグバン★セオリー』と一緒に英語を学んでいきましょう。
同じエピソードの他のコラムやフレーズ記事もあわせて読むと、場面全体の英語がより立体的に見えてきます。


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