海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
シットコムらしい軽妙な掛け合いは、実際には起きなかった過去を仮定して語り合う場面でも発揮されます。『ビッグバン★セオリー』シーズン8 第8話、プロム会場の屋上では、レナードとペニーが「もし昔プロムで出会っていたら」という仮の過去をめぐって軽口を交わします。
仮定の話をどう英語で組み立て、どうオチをつけるのか、順番に見ていきましょう。
実際には起きなかった過去を仮定して語る言い方
ペニーは、もし当時レナードと出会っていたらという仮定を口にします。
Penny: Well, if I would have been there and saw you alone, I would’ve asked you to dance.
(もしあの時そこにいて、あなたが一人でいるのを見ていたら、ダンスに誘っていたと思うわ。)Leonard: No, you wouldn’t have.
(いや、そんなことしなかったと思うよ。)Penny: Well, you don’t know that.
(そんなの、あなたにはわからないでしょ。)TBBT Season8 Episode8 (The Prom Equivalency)
if I would have been there and saw you…という言い方は、実際には起こらなかった過去の出来事を仮定して語る表現です。本来はif I had been thereという形が文法的な基本形ですが、会話ではif I would haveという形もよく使われます。would’ve asked you to danceのように、would haveを短縮したwould’veの形も、口語表現ではよく登場します。相手の仮定にNo, you wouldn’t have.と短く返し、Well, you don’t know that.で切り返す、という短いテンポのやり取りが見どころです。
Well.という言葉を文頭に添えているのも、この場面らしい特徴です。断定を和らげたり、少し言いにくいことを切り出したりするときに使われる間つなぎの言葉で、ここでは軽い口論をやわらかく続けるための助走のような働きをしています。実際には起きなかった過去を持ち出して、相手をからかい半分でつつく、という会話運びそのものが、長く付き合ってきた二人ならではの気安さを表していると読み取れます。
相手に仮定を投げ返し、自虐で締めくくる言い方
ペニーは同じ仮定の構文を、今度はレナードに投げ返します。
Penny: Well, you wouldn’t have asked me either.
(そっちだって、私を誘わなかったと思うけど。)Leonard: I would have asked you. In my head. On the way home. While I was having a good cry.
(誘ってたよ。頭の中でね。家に帰る道すがら、思いっきり泣きながら。)TBBT Season8 Episode8 (The Prom Equivalency)
you wouldn’t have asked me eitherのeitherは、否定文に添えて「〜も(しなかった)」と相手に同じ仮定を投げ返す役割を担っています。レナードの返しは、I would have asked you.のあとにIn my head.、On the way home.、While I was having a good cry.と文を短く区切りながら続けていく組み立てです。ひとつの文で説明するのではなく、短い断片を積み重ねていくことで、オチに向けてテンポが作られている様子が読み取れます。
on the way home(帰り道に)、while I was having a good cry(思いっきり泣きながら)という前置詞句・接続詞節を、あえて短い独立した文として並べる書き方は、口頭での間の取り方をそのまま文字にしたような効果を生みます。ひとつなぎの長い文で説明するよりも、間を置きながら小出しにする方が、オチの威力が増すという構成になっている点が興味深いところです。
まとめ|仮定の過去を語り合う、シットコムらしい掛け合い
if I would have been there、would’ve asked you to dance、you wouldn’t have asked me either、In my head.、On the way home.と、実際には起きなかった過去を仮定形で語り合い、短い断片を積み重ねてオチへと運んでいくやり取りをたどりました。ひとつの構文を相手に投げ返し合う応酬も、会話のテンポを作る技術として観察できます。
起きなかった過去をあえて言葉にすることで、二人の関係の積み重ねが浮かび上がってくる場面です。
このエピソードで交わされた他のやり取りは、同じエピソードの別のコラムでも取り上げています。


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