海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回は『BONES』S05E12から、価値観の違いをスマートに認める便利なフレーズ「to each their own」を紹介します。
実際にそのシーンを見てみよう!
長い夜が明け、ダイナーから出てきたブレナンとブースの会話シーンです。
直感と論理、どちらを信じるべきかという話題で、二人はいつものように軽快なテンポで意見を交わしています。
Booth: Yeah. I mean, sometimes you have to go with your brain over your gut.
(ああ。つまり、時には直感より頭(論理)を優先しなきゃいけないってことだ。)
Brennan: That’s nice. But I prefer that you always go with your brain over your gut because your gut cannot think.
(それはいいわね。でも、私は常に直感より頭を優先してほしいわ。だって腸(直感)は思考できないもの。)
Booth: Your brain can’t digest a breakfast burrito. Just saying, to each their own.
(頭じゃ朝食のブリトーを消化できないだろ。ただ言ってみただけさ、人それぞれってね。)
Brennan: To each their own.
(人それぞれね。)
BONES Season5 Episode12 (The Proof in the Pudding)
シーン解説と心理考察
このエピソードは、歴史的な謎に直面し、政府の思惑という重いテーマを扱っていました。証拠のみを信じてきたブレナンと、直感を信じてきたブースは、真相に迫る過程で激しく衝突します。
事件解決後、ブレナンは「go with one’s gut(直感に従う)」という英語のイディオムに対し、「腸(gut)は思考できない」と相変わらずの論理至上主義で物理的な事実を突きつけます。それに対しブースも「頭(brain)ではブリトーを消化できない」と見事なユーモアで返し、互いの思考回路を決して否定せずに尊重し合います。
全く異なる価値観を持つ二人ですが、このフレーズを使って「君は君、俺は俺の考え方がある」と違いを優しく包み込んでいるのです。長年バディを組んできた二人だからこそ行き着いた、心地よい距離感が垣間見える温かいラストシーンですね。
フレーズの意味とニュアンス
to each their own
意味:人それぞれ、十人十色、好みは人それぞれ
相手と自分の意見や好みが異なる時に「そういう考え方もあるよね」「人の好みはそれぞれだからね」と、違いをフラットに受け入れるためのフレーズです。
直訳すると「それぞれの人に、その人自身のものを(与える)」となります。議論を白熱させるのではなく、平和的に会話をまとめる際によく使われます。
【ここがポイント!】
この表現の核心は「他者の価値観への寛容さ」と「不毛な争いの回避」にあります。
相手の意見に心から賛同できなくても、正面から否定するのではなく「あなたにはあなたの好みがあるし、私には私の好みがある」とスマートに線を引くことができるのが最大の魅力です。
ネイティブスピーカーは、食べ物の好みが分かれた時や、ライフスタイルの違いが話題に上った時など、相手との境界線を守りつつ会話を円満に着地させるための魔法の言葉として頻繁に使用します。
相手を尊重する大人の余裕を感じさせる響きがあるため、ビジネスシーンで意見が平行線になりそうな時のクッション言葉としても、非常に効果的に機能してくれます。無理に相手に合わせる必要も、相手を変えようとする必要もないという、成熟したコミュニケーションツールと言えます。
実際に使ってみよう!
I wouldn’t wear that dress, but to each their own.
(私ならあのドレスは着ないけれど、好みは人それぞれだからね。)
解説:友人のファッションの好みが自分とは大きく違う時に、それを否定せずに受け入れるシチュエーションです。心の中では少し奇抜だと思っていても、角を立てずに個性を尊重する感想を述べる際に役立ちます。
Some people love working from home, while others hate it. To each their own.
(テレワークが大好きな人もいれば、嫌いな人もいる。人それぞれだよね。)
解説:働き方やライフスタイルについて議論している時の例文です。多様な価値観が存在する現代において、特定の意見を押し付けず、状況を客観的にまとめることができます。
I don’t understand why he bought such an expensive watch, but to each their own.
(なぜ彼があんなに高い時計を買ったのか理解できないけれど、価値観は人それぞれだから。)
解説:他人の行動や趣味への出費に対して、自分とは基準が違うと認めつつ、それ以上深く追求しない大人の態度の表れとして使えます。
BONES流・覚え方のコツ
論理ガチガチのブレナンと、直感重視のブースを思い浮かべてみてください。
水と油のように価値観が違う二人が、互いの意見を言い合った後に、ふっと肩の力を抜いて「ま、人それぞれか」と笑い合う姿をイメージすると定着しやすくなります。
「自分とは違うけれど、それもアリだよね」という心の余裕を持つことが、このフレーズを自然に使いこなす一番の近道です。
似た表現・関連表現
Every man to his taste
(意味:人の好みはそれぞれ、十人十色)
解説:to each their own とほぼ同じ意味で使われる古くからのことわざです。少し文語的でフォーマルな響きがあるため、日常会話では to each their own の方がより頻繁に耳にしますが、教養を感じさせる表現として知っておくと便利です。
There’s no accounting for taste
(意味:人の好みは説明できない、蓼食う虫も好き好き)
解説:相手の好みが自分にとってどうしても理解できない時に、少しあきれたようなニュアンスを含んで使われる表現です。to each their own がフラットに違いを認めるのに対し、こちらはややネガティブな響きを持つことがあるため、使う場面には少し注意が必要です。
Whatever floats your boat
(意味:あなたが楽しいならそれでいいよ、お好きにどうぞ)
解説:「あなたの船を浮かべるものなら何でも」という直訳から転じて、相手の選択を尊重しつつも、自分は少し距離を置くようなカジュアルな表現です。友人同士のフランクな会話で「好きにすればいいよ」と軽く返す時によく登場します。
深掘り知識:代名詞「their」が単数形として使われる理由
to each their own というフレーズを見て、「each(それぞれ)は単数扱いなのに、なぜ複数形の their(彼らの)が使われているのだろう?」と疑問に思った方もいるかもしれません。
ここには、英語という言語の歴史とジェンダーへの配慮が大きく関わっていますので、知識として学んでいきましょう。
かつてこのフレーズは、to each his own と表現されるのが一般的でした。英語では長らく、性別が特定されない単数の人物を指す際に、便宜上「he / his」を代表として使う文法ルールがあったからです。
しかし時代の変化とともに、「男性代名詞だけで全体を代表させるのは不適切ではないか」という議論が高まりました。そこで「his or her(彼または彼女の)」と言い換える動きもありましたが、日常会話では少し堅苦しく、長くなってしまいます。
その解決策として広く定着したのが、単数の人物に対してあえて複数形の代名詞を使う「単数形の they(Singular they)」という用法です。現代では、ジェンダーニュートラルな表現としてすっかり市民権を得ており、SNSのプロフィール欄で自身の代名詞を「they/them」と記載する人を見かけることも増えました。
また、ビジネスメールで担当者の性別がわからない時にも、単数形の they は非常に役立ちます。to each their own もこの流れを汲んで、誰もが使いやすいスタンダードな形として定着しました。言葉の背後にあるこうした文化的なアップデートを知ることも、英語学習の大きな醍醐味ですね。
まとめ|違いを認める魔法の言葉で円滑な関係を
今回は価値観の違いをスマートに受け入れる大人のフレーズ「to each their own」を紹介しました。
自分と違う意見に出会った時は、ぜひこの魔法の言葉を思い出して、心に余裕を持ったコミュニケーションを楽しんでくださいね。


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