海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回は『ホワイトカラー』シーズン2 第14話から、ニールの因縁の相手ケラーを巡る会話に登場する、チェスの言葉を取り上げます。ケラー本人がニールに次の手を迫る場面、ニールがケラーの人物像を説明する場面、そして最後の電話の場面と、同じ比喩が話のあちこちに顔を出します。
move や draw といった盤上の言葉が、人との駆け引きを語る表現としてどう使われているのかを見ていきます。
「It’s your move.」で、相手に次の手を迫る
刑務所で面会したケラーは、偽造パスポートの作り手に関する情報と引き換えに、移送を免れて今の刑務所にとどまりたいと持ちかけます。面会の締めくくりに、ケラーはニールにこう告げます。
Keller: We’re both running out of options, Caffrey. It’s your move.
(お互い、打つ手がなくなりつつあるな、キャフリー。君の番だ。)White Collar Season2 Episode14 (Payback)
move はチェスなどの盤上ゲームで「一手、指し手」を表す名詞で、It’s your move. は「君の番だ」と手番を相手に渡す決まり文句です。ゲームの外でも、交渉や駆け引きの場面で「次はそちらが動く番だ」と相手に決断を促すときに使われます。It’s your turn. でも通じますが、move を使うと「どんな手を打つのか」に意識が向きます。
前半の run out of ~ は「〜を使い果たす」という意味の句動詞です。進行形の running out of options にすると、「選択肢が尽きかけている」という途中の状態を表します。We’re both と主語を「お互い」に置くことで、移送を控えた自分だけでなく、ニールも追い込まれているのだと示している点が見どころです。
「He thinks 10, 12 moves ahead.」で、周到さを言い表す
ピーターの行方が分からなくなった後、エリザベスがニールにケラーのことを尋ねます。
Elizabeth: What do you know about Keller?
(ケラーについて、何を知ってるの?)
Neal: He’s a chess player. He thinks 10, 12 moves ahead.
(あいつはチェスの指し手だ。10手も12手も先を読んでる。)
Elizabeth: So everything they’re doing… all the helicopters and the agents knocking on doors?
(じゃあ、みんながしていること全部…ヘリコプターも、一軒ずつ訪ねて回る捜査官たちも?)
Neal: He would have foreseen that.
(あいつなら、それも見越していたはずだ。)White Collar Season2 Episode14 (Payback)
エリザベスの What do you know about ~? は、相手が持っている情報をそのまま引き出す聞き方です。ニールは He’s a chess player. と言い切り、チェスの腕前だけでなく、物事を盤上のように考える人物だと印象づけています。
think ~ moves ahead は「〜手先まで読む」というチェス由来の言い方で、先を見通して計画を立てる人の周到さを表します。数字を 10, 12 と二つ並べることで、「10手か、12手か」とおおよその深さを示しています。エリザベスの問いが So で始まるのは、ニールの説明から導かれる結論を確かめているためです。
would have foreseen は would have + 過去分詞で、「(その人なら)見越していたはずだ」という過去についての推量を表す形です。foresee は「予見する」という動詞で、捜索の動きがケラーの読みの範囲内だとニールが見ていることが伝わります。
「draw」の提案と、「I wouldn’t say that.」の返し
ピーターが無事に戻った後、護送の途中で姿を消したケラーから、ニールに電話がかかってきます。
Keller: I couldn’t have escaped without you, Neal. But I guess we both got what we wanted, right?
(君がいなければ逃げられなかったよ、ニール。だが、お互い望むものは手に入れた、そうだろう?)
Neal: I wouldn’t say that.
(そうは言えないな。)
Keller: How about we call this one a draw? We’ll take a break for a while. What do you say?
(今回は引き分けということでどうだ? しばらく休戦しよう。どうだ?)
Neal: I’m gonna find you, Keller.
(必ず見つけるぞ、ケラー。)White Collar Season2 Episode14 (Payback)
draw はチェスで「引き分け」を表す語です。ケラーは最後まで盤上の言葉で、今回の一件を勝負として締めくくろうとしています。take a break は「ひと休みする」で、ここでは追いかけ合いをいったんやめようという意味合いです。最後の What do you say? は「どうだ?」と返事を促す決まり文句で、How about ~? の提案を締めくくっています。call it a draw の詳しい使い方は、同じ回のフレーズ記事で取り上げています。
ニールの I wouldn’t say that. は、would を使うことで、「そうとは言わないでおく」と、正面から No と言うよりも抑えた調子で相手の総括を退けています。続く I’m gonna find you は、gonna(going to)で「これからそうするつもりだ」という意志を示す言い方で、引き分けの提案にニールが乗らないことが伝わります。
まとめ|盤上の言葉で語る駆け引き
It’s your move. で手番を渡し、moves ahead で周到さを語り、draw で勝負を締めくくろうとする表現を見てきました。チェスの言葉が、駆け引きをそのまま言い表す道具になっていることが分かります。
これからも『ホワイトカラー』の会話を観ながら、言葉の裏の駆け引きを味わっていきましょう。
ほかのコラムやフレーズ記事と合わせると、この回の英語がより立体的に見えてきます。


コメント