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今回は大人気法医学サスペンス『BONES』シーズン10エピソード8から、相手を思いやる温かいフレーズ「cut someone some slack」の意味と使い方をご紹介します。
「大目に見てあげて」「勘弁してあげなよ」をネイティブらしく表現できる、日常会話の必需品です。
実際にそのシーンを見てみよう!
今回のシーンは、破水して病院へ向かったデイジーの陣痛が本格化している場面です。
激しい痛みに叫ぶデイジーに対し、自然派の世話人(ドゥーラ)であるヴァレンティナが「穏やかなお母さんでいて」と理想論を説きます。
見かねたアンジェラがすかさず反論します。
Valentina: A peaceful mother makes a happy baby.
(穏やかな母親が、幸せな赤ちゃんを作るのよ。)Montenegro: Cut her some slack, Valentina. A human being is trying to escape from her vagina.
(大目に見てあげてよ、ヴァレンティナ。彼女の体から人間が出てくるとこなのよ。)Bones Season10 Episode08 (The Puzzler in the Pit)
シーン解説と心理考察
陣痛の凄まじい痛みでパニックになるデイジー。
ヴァレンティナは「穏やかなお母さんでいて」と理想論を口にしますが、自身も出産経験者であるアンジェラは「そんなこと言える状況じゃないでしょ!」とデイジーを庇います。
壮絶な痛みと戦っているのだから、叫んだり取り乱したりしたって当然——というアンジェラの言葉には、温かさとユーモアが同時に込められています。
この後デイジーは「友達はここにいてほしい」と言い、仲間たちに囲まれながら出産に臨みます。
チームの絆が一番温かく輝くシーンで、アンジェラのこの一言がその雰囲気を作り出しています。
「cut someone some slack」の意味とニュアンス
cut someone some slack
意味:人を大目に見る、勘弁してやる、少し余裕を与える
「slack」は「ロープなどの緩み、たるみ」を意味する名詞です。
直訳すると「誰かにロープの緩みを切って与える」となります。
馬の手綱や人を縛り付けているロープがピンと張り詰めた状態から、少しロープを緩めて自由(slack)を与えてあげる様子から転じて、「相手への厳しい要求や制限を緩める」「大目に見る」という意味で使われます。
【ここがポイント!】
このフレーズの核心は、「ピンと張り詰めたプレッシャーから相手を解放してあげること」にあります。
誰かがミスをしたり、完璧にできなかったりした時に、「状況が状況なんだから、少しは手加減してあげようよ」と庇う時に使います。
今回のアンジェラのように、正論や理想論(=張り詰めたロープ)を押し付ける相手に対して「ちょっと縛りを緩めてあげて!」とツッコミを入れる場面にも非常に効果的です。
「someone」の部分に「yourself」を入れると「自分に甘くしてあげる」という意味にもなり、頑張りすぎている自分や友人を労わる表現としても使えます。
実際に使ってみよう!
相手を庇う時、自分を休ませてほしい時、あるいは自分自身を労わる時など、さまざまな場面で活躍するフレーズです。
A: He’s late again. I’m going to yell at him.
B: Cut him some slack. His train was delayed.
(A:彼、また遅刻だ。怒ってやる。)
(B:大目に見てあげなよ。電車が遅延してたんだから。)
厳しい態度を取ろうとする相手に「まあまあ、勘弁してあげなよ」と間に入る時の定番の返し方です。
I’ve been working non-stop for 12 hours. Cut me some slack!
(12時間ぶっ通しで働いてるんだ。少しは休ませてくれよ!)
相手からの要求が厳しすぎる時に、「勘弁してよ!」と自分へのプレッシャーを緩めてほしいと伝えたい場面で使えます。
You’re always so hard on yourself. You need to cut yourself some slack.
(いつも自分に厳しすぎるよ。少しは自分を甘やかしてあげなよ。)
真面目すぎる友人や同僚に「完璧を目指さなくていいんだよ」と優しく励ます言い方です。
『BONES』流・覚え方のコツ
アンジェラが、ガチガチの理想論でデイジーを縛り付けようとするヴァレンティナの「見えないロープ」を、ハサミでチョキンと切って(cut)、心の余裕(slack)を与えてあげているイメージを想像してみてください。
極限状態のデイジーをプレッシャーから解放し、「今は叫んだっていいのよ!」と大目に見ているアンジェラの思いやりと一緒に記憶すると、「相手を許容する・寛容になる」というニュアンスが自然と出てくるようになります。
似た表現・関連表現
give someone a break
(意味:人を勘弁してやる、休ませる)
「cut someone some slack」とほぼ同じ意味で使われます。「Give me a break!(いい加減にして!/勘弁してよ!)」は、呆れた時や信じられない時にネイティブがよく使う定番のリアクションです。
go easy on someone
(意味:人に対して手加減する、優しくする)
相手に厳しく当たらないように求める表現です。「Go easy on him.(彼には優しくしてあげて)」のように、初心者やミスをした人に対して使われます。
let someone off the hook
(意味:人を困難な状況や責任から解放する、見逃してやる)
魚が釣り針(hook)から逃れる様子から、「追及をやめる」「今回はお咎めなしにする」というニュアンスで使われます。
深掘り知識:「slack off(サボる)」との違いを覚えよう
日常会話で「slack」は「slack off」という句動詞でよく登場します。意味はずばり「サボる、怠ける」です。
ロープを張り詰めて真面目にやらず、緩んだままだらだらしているイメージですね。
・He is always slacking off at work.(彼は仕事中いつもサボっている。)
「cut someone some slack」が「相手を優しさで緩めてあげる」ポジティブな意味合いを持つ一方で、自分が勝手に緩んでしまう「slack off」はネガティブな意味になります。
面白いことに、世界中で使われているビジネスチャットツール「Slack」の名前も、この「slack(緩み・手軽さ)」から来ているとされています。
同じ単語から派生する意味の広がりをつかんでおくと、英語の感覚がグッと身近になりますよ。
まとめ|相手にも自分にも優しくなれる「cut someone some slack」
今回は『BONES』シーズン10エピソード8から、「人を大目に見る」「勘弁してやる」という意味の「cut someone some slack」をご紹介しました。
人は誰でもミスをしたり、余裕がなくなったりするものです。そんな時に正論をぶつけるのではなく、「I’ll cut you some slack.(大目に見てあげるよ)」と言える余裕を持てると、人間関係はずいぶんスムーズになります。
このフレーズが持つ「ロープを緩める」というイメージは、相手へのプレッシャーを手放すことが時に最も賢い選択だという、英語らしい実用的な知恵そのものです。
相手に対しても、頑張りすぎている自分自身に対しても、使える場面は思った以上にたくさんあります。

