海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
食事に行った先で、支払いをどうするか一瞬だけ空気が止まる。おごるとも割り勘とも言い出しにくくて、間が空いてしまう。そんな経験はありませんか。
そんな場面で使える「put A on B’s tab」を、『BONES』シーズン1第4話の前半、出張先へ向かう車の中で交わされる応酬から、一緒に見ていきましょう。
「put A on B’s tab」の意味とニュアンス
put A on B’s tab
意味:AをBのツケにする、AをBの勘定につけておく
支払いをその場で済ませず、誰かの勘定にまとめて回すことを表します。A には品物や人が、B には支払う側が入ります。
tab は勘定書、つまり店が客ごとに開いておく未払いの記録のことです。バーやレストランで一杯ごとに払わず、帰り際にまとめて精算する仕組みを指します。日本語の「ツケ」がほぼそのまま重なる語です。
基本形は Put it on my tab で、これは自分が払うという申し出になります。it の位置に飲み物や食事が入り、my の位置に支払う人が入る。ここが入れ替わると、意味も大きく動きます。
Put me on your tab のように人を A に置くと、自分自身を相手の経費の一項目として扱う言い方になります。品物と同じ棚に自分を並べてみせる、少しふざけた表現です。相手との距離が近くないと成立しません。
【ここがポイント!】
- tab は店が客ごとに開いておく未払いの記録、日本語のツケとほぼ同じ仕組み
- Put it on my tab なら申し出、Put me on your tab なら相手への要求に反転します
- 人を A に置く形は冗談として機能するので、関係が近い相手に限られます
『BONES』S01E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
出張先へ向かう車の中です。日当50ドルだと明かしたブースに対し、ブレナンは自分に経費の上限はないと答えます。そこから話は、どちらの技能が不可欠かという言い合いに発展しました。押し切られたブースが、話の向きを変えます。
Booth: You know what? I’ll tell you what — you can take me out to dinner. Put me on your tab.
(じゃあこうしよう。君が俺をディナーに連れていってくれ。俺を君のツケに乗せるんだ)Brennan: That doesn’t seem ethical.
(それは倫理的とは言えないわね)Booth: You still want that gun now, don’t you? Hm?
(君はまだ銃が欲しいんだろ? どうなんだ?)Brennan: We’ll start with breakfast.
(朝食から始めましょう)BONES Season1 Episode4 (The Man in the Bear)
シーン解説と心理考察
ブースの提案の巧みさは、負けを認めないまま話を移すところにあります。技能の優劣では勝てないと分かった時点で、勝負の土俵を経費に変えてしまう。上限がないという条件は、ここでは有利さではなく利用できる資源として扱われます。
Put me on your tab という言い方も、それに合っています。おごってくれ、と直接頼めば貸し借りが生まれますが、ツケに乗せろと言えば話は経費処理になります。私的なお願いを事務手続きのように見せる。この言い換えが、ブースの憎めなさを支えています。
ブレナンの返しも彼女らしいものでした。それは倫理的とは言えない、と制度の話で受ける。冗談として受け流すのではなく、正面から規則の問題として答えてしまいます。
そこでブースが持ち出したのが、銃です。捜査官の携行を羨ましがっているブレナンの弱みを、迷いなく交渉材料に変えてくる。朝食から始めましょう、という着地は、彼女が交渉に応じたことを意味しています。値切ってはいますが、乗ってはいるわけです。
『BONES』流・覚え方のコツ
ブラウザのタブを思い浮かべてみると、この語の輪郭がつかめます。新しいページを開くたびにタブが増えていき、閉じるまでは開いたままそこにある。
バーの tab もこれと同じです。注文するたびに項目が積み上がり、帰るときにまとめて閉じる。一杯ごとに財布を出さないのは、タブが開きっぱなしになっているからです。
劇中のブースは、その開いているタブに自分自身を追加しようとしました。飲み物や食事と同じ列に、人間がひとつ足される。乱暴ですが、絵としては分かりやすいところです。この光景を覚えておけば、A の位置に何が入るかで意味が変わることも一緒に残ります。
例文で覚える「put A on B’s tab」
申し出、確認、経費処理。三つの使い方を順に見ていきましょう。
Don’t worry about it — put it on my tab.
(気にしないで。私のツケにしておいて)
自分が払うと申し出る場面です。店員にも同席者にも同じ形で通じます。
Can I put these drinks on his tab?
(この飲み物、彼の勘定につけてもいいですか)
主催者が支払う集まりで、店員に確認する場面です。誰の tab かをはっきりさせておくと後で揉めません。
A: Should we split this?
B: No, just put it on the company tab.
A: Are you sure that’s allowed?
(A:割り勘にする?)
(B:いや、会社のツケにしておこう)
(A:それ、経費で通るの?)
接待や出張先での支払いを会社に回す場面です。the company tab のように組織を置くこともできます。
あわせて覚えたい関連表現
It’s on me
(私のおごりです)
最も短く温かい申し出の形です。put it on my tab が勘定の処理方法を指すのに対して、こちらは負担する意思をまっすぐ伝えます。その場で払う場合にも使えます。
pick up the tab
(勘定を持つ、支払いを引き受ける)
開いていた tab を最後に引き取る、という動きから来ています。誰が払ったかを後から語る場面で使われることが多く、He picked up the tab のように第三者の行為の説明に向きます。
put it on my account
(私の口座につけておいてください)
常連客や法人契約のある店で、継続的な取引口座に回す言い方です。その日のうちに閉じる tab より期間が長く、事務的で落ち着いた響きになります。
Note|バーで tab を開いて、閉じるまで
欧米のバーでは、一杯ごとに支払うより、tab を開いておく方が一般的です。仕組みを知っておくと、注文のたびに財布を出す手間がなくなります。
席に着いて最初の一杯を頼むとき、店員にクレジットカードを預けます。このとき伝えるのが Can I open a tab? です。カードを預けることで、その日の注文が一つの勘定にまとめられていきます。店側は支払いの担保を得て、客は身軽になる。双方に利のある慣習です。
途中で店員が Would you like me to close this out? と聞いてくることがあります。もう精算するかという確認です。まだ飲むつもりなら Keep it open, please と答えます。この一言で、勘定は開いたままになります。
帰るときに使うのが Close the tab, please、あるいは Can I close out? です。ここで初めて総額が出てきて、カードが戻ってきます。チップを加えるのもこのタイミングです。
open、keep open、close。この三語だけで、一晩の流れがすべて処理できます。put it on my tab がその途中で挟まる一言だと分かると、劇中でブースが自分をそこに乗せようとした冗談の輪郭も、もう少しはっきり見えてきます。
まとめ|ツケに何を乗せるか
put A on B’s tab は、支払いをその場で済ませず、誰かの勘定に回す言い方です。A に何を置き、B に誰を置くかで、申し出にも要求にも冗談にもなります。
この表現を知っていると、支払いの話を軽く扱えるようになります。おごるという言葉には貸し借りの重さがありますが、ツケに乗せるという言い方なら、事務処理のような顔をして同じことができます。
経費に上限がないと知った瞬間、そこへ自分を追加しようとしたブース。その厚かましさに規則で応じ、結局は朝食で手を打ったブレナン。二人の距離感がよく出た応酬とあわせて、表現の引き出しに加えてみてください。


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