海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
肩書きを名乗ったあとに、それとは別の顔を付け足したくなる場面があります。本業はこちら、けれど実はもうひとつ手がけているものがあって、と。どちらが主でどちらが従なのかを、口に出す前に決めている自分に気づくこともあるはずです。
そんな線引きをひとことで示す「on the side」を、『BONES』シーズン1第5話の冒頭、大学での講演を終えたブレナンに学生から質問が飛び、上司のグッドマン所長が割って入るシーンから、一緒に見ていきましょう。
「on the side」の意味とニュアンス
on the side
意味:副業で、片手間に、別添えで
何かを本筋の外側に置いていることを表す言い方です。皿の中央にメインがあり、その脇に別のものが添えられている。あの配置がそのまま比喩になっています。
用法は大きく三つに分かれます。ひとつは仕事で、本業のかたわらに別の収入源を持つこと。ふたつめは料理で、ソースやドレッシングをかけずに別の器で出してもらうこと。みっつめは人間関係で、正式な相手とは別に関係を持っていることを、直接的な語を避けて示す言い方です。
訳語は散らばって見えますが、どれも中心から外れた位置を指している点は共通しています。そして位置を指定するということは、何が中心かを同時に宣言することでもあります。だから on the side には、それ自体の価値ではなく序列が刻まれます。
評価の向きは中心が何かで変わります。仕事なら勤勉さの証しにも、余技という値引きにもなる。文脈がどちらに傾いているかを読むのがこの表現の要になります。
【ここがポイント!】
- 皿の中央と脇、という配置の絵がそのまま芯にある表現
- 副業・別添え・秘密の関係と、幅広い場面を同じ構図でカバーする一言
- 脇に置く時点で序列を示しているので、褒めか値引きかを文脈で読むのがコツ
『BONES』S01E05のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
舞台は大学の講堂です。法人類学の講義を終えたブレナンへの質疑応答が始まりますが、学生たちの関心は骨の分析ではなく、彼女が書いたベストセラー小説のほうに向いています。稼ぎの話が続けざまに出たところで、司会に立っていたグッドマン所長が話を引き取ります。その一言に注目です。
Female Student: How much money have you made from your book?
(あの本でいくら稼いだんですか?)Brennan: I don’t really know. I have an accountant and an agent—
(よく知らないわ。会計士とエージェントがいるから——)Goodman: That’s not really the kind of question we’re looking for from an anthropology student.
(人類学を学ぶ学生から出る質問としては、あまり適切とは言えませんね)Male Student: Did you get your agent before or after you wrote the book?
(エージェントがついたのは、本を書く前ですか、あとですか?)Goodman: People, Dr. Brennan is an accomplished forensic anthropologist who writes books on the side.
(皆さん、ブレナン博士は優れた法人類学者であり、本業のかたわらで本を書いているのです)BONES Season1 Episode5 (A Boy in a Bush)
シーン解説と心理考察
グッドマンの一言は、小説の価値を否定してはいません。優れた法人類学者であるという評価を先に置いたうえで、本は脇にある、と配置だけを述べています。中身への論評を避けながら序列だけを示す。研究機関の長らしい、周到な言い方として響きます。
質問が二度続いた点も見どころです。印税の額、そしてエージェントがついた時期。どちらも研究の話ではなく、作家としての商業的な成功に向かっています。学問の場が有名人への好奇心に流れかけている、その傾きを止めるために所長は割って入りました。
ブレナン自身は、収入について会計士とエージェントに任せていると答えるだけで、関心のなさを隠しません。守ろうとする上司と、守られていることに気づいていない本人。二人の温度差が会話の空気をやわらかく見せています。
『BONES』流・覚え方のコツ
レストランの皿を思い浮かべてみます。中央には主役の肉、その脇に小さく添えられた人参やポテト。同じ皿に載ってはいても、どちらが主役かは配置を見れば一目で分かります。on the side が指しているのは、この脇のスペースです。
劇中のグッドマンがやっていたのも、まさに皿の上の置き直しでした。ブレナンという皿の中央に法人類学を据え、ベストセラー小説を端へ寄せる。料理そのものは変えず、位置だけを動かして序列を示しています。皿の中央と縁、その距離を思い出せば、この表現が副業にも別添えにも使える理由が、絵のほうから残ります。
例文で覚える「on the side」
仕事から食卓まで、置き場所を指定する感覚は共通しています。3つの例文で幅を見てみましょう。
She works at a law firm and writes fiction on the side.
(彼女は法律事務所で働きながら、かたわらで小説を書いている)
本業と副業を一文で並べる場面です。動詞の前に本業を置くと、序列がそのまま語順に出ます。
Could I get the dressing on the side, please?
(ドレッシングは別添えにしていただけますか)
レストランで注文を調整する場面です。かける量を自分で決めたいときの定番の頼み方になります。
A: Is the design work your full-time job?
B: No, I just do it on the side. I teach during the day.
A: That sounds like a good balance.
(A:デザインの仕事が本業なんですか?)
(B:いえ、かたわらでやっているだけです。昼間は教えていて)
(A:いいバランスですね)
仕事の比重を説明する場面です。just を添えると、控えめに位置づける響きが加わります。
あわせて覚えたい関連表現
moonlight as
(本業のかたわら〜として働く)
月明かりの下で働く、という絵から生まれた動詞です。位置を示す on the side に対して、こちらは勤務時間外に別の仕事をするという時間の側面が前に出ます。
side hustle
(副業、サイドビジネス)
近年広まった名詞で、自分の裁量で育てている小さな事業を指します。on the side が控えめに添える言い方なのに対して、こちらには前向きな熱量があります。
on the sly
(こっそりと、内緒で)
隠れて行うことに焦点がある言い方です。on the side は必ずしも秘密を意味しませんが、こちらは最初から人目を避ける含みを持ちます。
Note|一皿の上の力関係
on the side を辞書で引くと、副業、付け合わせ、秘密の関係と、つながりの見えない訳語が並びます。ところがこの三つは、同じひとつの構図を共有しています。
副業は、本業という中心の脇にある仕事です。付け合わせは、メインディッシュの脇に置かれた小皿です。秘密の関係は、正式な関係の脇に置かれた関係を指します。どれも、中心があらかじめ決まっていて、その外側に位置している。on the side が語っているのは中身ではなく、この位置関係のほうです。
同じ語なのに響きが変わるのは、中心に何が座っているかで脇の意味が決まるからです。中心が仕事なら、脇にあるものは勤勉さの証しにも、本気ではない余技にもなります。中心が料理なら、脇に置くことは味を自分で調整できる自由を意味します。中心が結婚なら、脇にあるものは裏切りになる。位置は同じでも、評価は中心が決めています。
グッドマンが on the side を選んだのも、この構図を使うためでした。彼は小説の質について何も言っていません。皿のどこに置くかだけを述べ、それによって順位を示しています。
脇に置くと決めた時点で、評価はもう始まっています。
まとめ|どちらを皿の中央に置くか
on the side は、何かを本筋の外側に置いていることを、皿の配置になぞらえて示す表現です。副業でも別添えでも、指しているのは中身ではなく位置になります。
この一言を持っておくと、自分の活動の比重を簡潔に伝えられるようになります。本業はこれで、こちらはかたわら。長い説明を足さなくても、三語で優先順位が伝わります。
中身に触れないまま、置き場所だけで序列を示したグッドマン。皿の中央と縁を意識しながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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