海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
ふだんあまり来ない人が自分の職場や地元に現れたとき、「どうしてこっちに?」と声をかけたくなる場面がありますよね。
そんなときにぴったりの「neck of the woods」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン5第8話の中盤、カフェテリアに現れたエイミーに、レナードが軽く声をかけるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「neck of the woods」の意味とニュアンス
neck of the woods
意味:このあたり、近所、(自分のいる)界隈
neck of the woods は「自分の住んでいる地域」「いま自分がいる界隈」を指す、くだけた口語表現です。one’s neck of the woods(〜の地元)、this neck of the woods(このあたり)のように使われます。
おもしろいのは neck(首)という単語です。ここでの neck は身体の首ではなく、「土地の細長い一帯」という古い意味で使われています。woods(森・林)と組み合わさって、もともとは開拓地の「森の中のひとつの区画」を指していたとされ、そこから「自分の縄張り・地元」というニュアンスに広がりました。
改まった場では使いませんが、親しみのある軽い言い回しとして日常会話で頻繁に登場します。What brings you to …?(どうして〜に来たの?)という来訪を尋ねる表現とセットで使われることも多い表現です。
【ここがポイント!】
- neck は「首」ではなく「土地の細長い一帯」を指す古い用法が残った言葉
- 「自分の地元・界隈」を親しみを込めて指す、くだけた口語表現
- What brings you to …? と組み合わせて「どうしてこっちに?」と聞くのが定番
『ビッグバン★セオリー』S05E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ふだん神経生物学の研究室にこもっているエイミーが、めずらしく男性陣のいるカフェテリアに現れます。レナードがその来訪を、軽い挨拶で迎えるところから会話が始まります。
Leonard: Hey, Amy, what brings you to our neck of the woods?
(やあエイミー、どうしてこっち方面に?)Amy: Your neurology department loaned me a culture of prions for my research on bovine spongiform encephalopathy.
(おたくの神経科が、牛海綿状脳症の研究用にプリオンの培養を貸してくれたの。)Sheldon: She popped by to borrow a cup of mad cow disease.
(狂牛病を一杯借りに、ちょっと寄ったというわけだ。)The Big Bang Theory Season5 Episode8(The Isolation Permutation)
シーン解説と心理考察
このやり取りの面白さは、neck of the woods という軽い口語と、エイミーの返答の硬さの落差が会話の温度を変えているところにあります。レナードがくだけた調子で「どうしてこっちに?」と尋ねたのに、エイミーは bovine spongiform encephalopathy(牛海綿状脳症)という専門用語で生真面目に答えます。
そのズレを、シェルドンが「狂牛病を一杯借りに寄った」と言い換えてすかさず茶化します。borrow a cup of …(〜を一杯借りる)は、本来「砂糖を一杯貸して」のようなご近所付き合いの言い回しで、それを致死性の病原体に当てはめる不釣り合いが笑いどころとして響きます。
軽い挨拶ひとつをきっかけに、登場人物それぞれの個性 ―― レナードの常識人ぶり、エイミーの生真面目さ、シェルドンの皮肉屋ぶり ―― が一気に表れています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
地図の上で、森の中にぽつんと囲まれた自分の区画を思い浮かべてみてください。その「森の一区画(neck of the woods)」が、そのまま「自分の縄張り・地元」になります。
レナードのシーンのように、ふだん来ない人が自分のテリトリーに足を踏み入れた場面とセットで覚えると、「このあたり=自分の森の区画」というイメージが定着しやすくなります。森の中に手で囲った自分のエリアを思い描くのがコツです。
例文で覚える「neck of the woods」
「自分の地元・界隈」を親しみを込めて指すこの表現は、来訪や偶然の再会の場面でよく登場します。3つの例文で使い方を見ていきましょう。
What brings you to this neck of the woods?
(どういう風の吹き回しで、こっちの方に来たの?)
ふだん見かけない相手が自分の地元に現れたときの定番の一言です。What brings you to …? と組み合わせて、軽い驚きと歓迎を同時に伝えます。
There aren’t many good restaurants in our neck of the woods.
(うちの界隈には、いいレストランがあんまりないんだよね。)
自分の住む地域について語る場面です。our neck of the woods で「うちのあたり」と、肩の力を抜いた言い方になります。
A: I didn’t expect to see you here!
B: Yeah, I had a meeting in your neck of the woods, so I thought I’d drop by.
(A:こんなところで会うとは思わなかった!)
(B:うん、君の地元で打ち合わせがあってさ、寄ってみようと思って。)
偶然の再会で使われる会話です。your neck of the woods で「あなたの地元のあたり」と、相手のテリトリーを軽く指す言い方になります。
あわせて覚えたい関連表現
around here
(このあたり、この近所)
neck of the woods とほぼ同じ「このあたり」を指しますが、around here のほうがニュートラルで使う場面を選びません。neck of the woods は親しみとくだけた響きが加わる、と覚えておくと使い分けられます。
in these parts
(このあたりでは、この地方では)
neck of the woods と近い意味ですが、in these parts はやや古風で、田舎町や西部劇のような響きを持ちます。同じ「界隈」でも、より土地に根ざした言い回しです。
stomping ground(s)
(よく行く場所、なじみの場所)
neck of the woods が「住んでいる地域」を指すのに対し、こちらは「自分がよく出入りする縄張り・行きつけ」を指します。地元つながりの表現として、あわせて覚えておくと便利です。
Note|neck はなぜ「首」から「土地の一帯」になったのか
neck of the woods という表現でいちばん不思議なのは、なぜ身体の「首」を表す neck が、土地を指しているのか、という点です。
実は neck には古くから「細長く突き出た部分」という意味があります。地形を表す言葉として、neck of land(陸の細い一帯=地峡)のように使われてきました。首が頭と胴をつなぐ細い部分であることから、「細長くつながった一帯」という連想が働いたものとされます。この neck が woods(森林地帯)と結びついて、neck of the woods という形になりました。この言い回しは18〜19世紀のアメリカで広まったとされ、当時の開拓者たちが森を切り開いて暮らしていた背景と深く結びついています。森の中に点在する集落のひとつひとつを「森の一区画(a neck of the woods)」と呼んだことから、やがて「自分の住む地域・界隈」という意味に定着したと言われています。
レナードが何気なく使ったこの一言の奥には、森を開拓して暮らしたアメリカの土地の記憶が、薄く残っているのです。
身近な口語ほど、たどると意外な歴史が顔を出します。
まとめ|カフェテリアの軽い挨拶から学ぶこと
neck of the woods は、「このあたり」「自分の界隈」を親しみを込めて指す、くだけた口語表現です。neck が身体の首ではなく「土地の細長い一帯」を指すという成り立ちを知っておくと、意味がぐっと頭に残ります。
この表現が使えるようになると、ふだん見かけない相手が現れたときに、What brings you to this neck of the woods? と、軽い驚きと歓迎を一度に伝えられるようになります。堅すぎず、かといってぞんざいでもない、ちょうどいい距離感の挨拶です。
レナードの何気ない一言の後ろに、森を開拓した土地の記憶が透けて見える場面でした。


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