海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
楽しみにしていた予定が、思いがけないトラブルで丸ごと消えてしまった経験はありませんか。落胆する気持ちと、それでも何とかしたい気持ちのあいだで、しばらく身動きが取れなくなる場面です。
そんなときに口にしたい「make the most of」を、『BONES』シーズン1第9話の序盤、研究所が封鎖されクリスマスの予定を失った仲間たちに、アンジェラがある提案を持ちかけるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「make the most of」の意味とニュアンス
make the most of
意味:〜を最大限に生かす、〜を存分に楽しむ
与えられた条件のなかから、引き出せる価値を目いっぱい引き出すことを表します。単に使う(use)のではなく、そこにある可能性の天井まで手を伸ばす、という含みがあります。
the most という最上級が入っているのが手がかりです。比べている相手は他人ではありません。同じ状況から取り出せたはずの結果です。もっと良い条件を望むのではなく、いま手元にある条件の上限まで行こう。そういう発想がこの言い方の芯にあります。
だからこの表現は、ほぼ必ず制約とセットで現れます。時間が足りない、予算が出ない、雨が降っている。うまくいかない何かが先にあって、そのうえで前を向くときに選ばれます。不満を述べる側から動く側へ、話し手が舵を切った合図として働く一言です。
【ここがポイント!】
- 条件の天井まで価値を引き出そうとする、上を向いた一言
- 必ず制約とセットで現れ、不満から行動への切り替えを示す表現
- 提案の形で使うと、その場の空気ごと動かせるのが強みです
『BONES』S01E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
クリスマス直前のジェファソニアン研究所。持ち込まれた遺骨から未知の菌が検出され、建物ごと隔離されてしまいます。家族と過ごすはずだった予定はすべて消え、ブースも仲間たちも言葉を失ったまま立ち尽くします。その沈黙を破ったのがアンジェラでした。
Angela: Since we’re gonna be stuck together for Christmas, we should make the most of it.
(どうせクリスマスをここで一緒に過ごすなら、この状況を目いっぱい生かすべきよ)Booth: How?
(どうやって?)Angela: We’ll decorate this place and exchange handmade gifts.
(ここを飾りつけて、手作りのプレゼントを交換するの)Goodman: An excellent idea, Miss Montenegro.
(素晴らしい考えです、ミス・モンテネグロ)BONES Season1 Episode9 (The Man in the Fallout Shelter)
シーン解説と心理考察
アンジェラの一言が効いているのは、状況を一切ごまかしていないところです。閉じ込められているという事実はそのまま置いたうえで、そこから何を取り出すかだけを提案しています。慰めでも励ましでもなく、次の行動の指し示しになっているのがこの発言の役どころです。
ブースの返しも見どころになっています。How? という短い問いは、拒否ではありません。方法さえ示されれば乗るという姿勢が、たった一語に表れています。沈んでいた場の空気が、この一往復で動き始めます。
そこへアンジェラが出したのが、飾りつけと手作りのプレゼントという答えでした。買いに行けない場所で、買わずに済む案を選ぶ。制約を数えるのではなく、制約の内側で成立する形を先に用意しておくところに、彼女の手際のよさがにじむ場面です。
『BONES』流・覚え方のコツ
手のひらに乗る小さな箱を思い浮かべてみます。箱の大きさは変えられません。できるのは、その中にどこまで詰められるかを試すことだけです。make the most of は、その詰め込む動作そのものを指しています。
劇中の研究所は、まさにその箱でした。出られない、買い物にも行けない、家族も呼べない。それでもアンジェラは箱の中を見渡して、飾りつけと手作りという二つを見つけ出しています。
箱を大きくしようとするのではなく、箱の内側を隅まで使う。あの夜の研究所を思い出せば、この表現の向きが体で分かります。
例文で覚える「make the most of」
制約を示す言葉と組み合わせると、この表現は自然に収まります。3つの例文で型を確かめてみましょう。
We only have an hour, so let’s make the most of it.
(1時間しかないから、目いっぱい使おう)
短い打ち合わせを始める場面です。so でつなぐと、制約から提案への流れが一息で示せます。
It rained the whole trip, but we made the most of it and found some great museums.
(旅行中ずっと雨だったけれど、その分を生かして良い美術館をいくつも見つけた)
思わぬ悪条件を振り返る場面です。過去形にすると、切り替えがうまくいった話になります。
A: The budget came in lower than we asked for.
B: Then we make the most of what we’ve got.
A: Fair enough. Let’s redraw the plan.
(A:予算が希望より低く出ました)
(B:なら、あるもので最大限やりましょう)
(A:そうですね。計画を引き直しましょう)
資源が足りないと分かった場面です。what we’ve got を続けると、対象がはっきりします。
あわせて覚えたい関連表現
make the best of
(悪い状況のなかで、なんとかやりくりする)
同じ形に見えますが、こちらは我慢や妥協の色が濃くなります。make the most of が可能性の上限を狙うのに対して、こちらは悪さの下限を受け入れる言い方です。
take advantage of
(〜を利用する、活用する)
機会や条件を活用する点は重なりますが、人を目的語に取ると相手の弱みにつけ込む意味になります。make the most of にはその含みがなく、使う場面を選びません。
seize the day
(今この瞬間をつかむ)
ラテン語の carpe diem の英訳として知られる言い方で、先のことを心配せず今を生きようという情熱的な響きがあります。条件のなかで工夫する make the most of より、勢いのある表現です。
Note|make the best of と make the most of ―― 同じ状況を見る二つの目線
make the best of と make the most of は、形がほとんど同じで、日本語にすると両方とも「なんとか生かす」あたりに落ち着いてしまいます。ところが英語話者にとって、この二つは心の向きが逆を向いています。
best のほうは、比較の相手が「もっとひどい結果」です。make the best of a bad situation という決まった言い方があるとおり、前提として状況が悪いことが確定しています。そのうえで、起こりうる結末のなかでいちばんましなところに着地させる。守りの発想であり、耐えるという色が濃く出ます。悪くない状況に対して make the best of it と言うと、その状況を悪いものと見なしていることになるため、相手に失礼になることさえあります。
most のほうは、比較の相手が「取り出せたはずの量」です。状況が悪いとは限りません。時間が短い、場所が狭いといった条件の限定があるだけで、そこから引き出せる価値の上限を目指す。攻めの発想であり、楽しむという色を帯びます。
だから同じ研究所の封鎖という出来事に対しても、選ぶ語で聞こえ方が変わります。アンジェラが most を選んだことで、あの提案は我慢の相談ではなく、遊びの相談になりました。best であれば、乗ってくる人はもっと少なかったはずです。
耐えるのか、引き出すのか。語を一つ替えるだけで、周りの動き方まで変わるのですね。
まとめ|箱の大きさは変えられなくても
make the most of は、いま手元にある条件の上限まで価値を引き出そうとする表現です。制約を消そうとするのではなく、制約の内側を隅まで使い切る。その姿勢がこの一言に収まっています。
この表現を持っていると、思いどおりにいかない場面で言葉に詰まらなくなります。愚痴でも空元気でもない、その中間の提案として機能してくれるからです。会議でも旅行でも、条件が崩れたときほど出番があります。
隔離された研究所で、買えないものを数える代わりに作れるものを数えたアンジェラ。あの切り替えの速さが、この表現の持ち味そのものだったのですね。


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