海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
買ったばかりの頃は毎日眺めていたものが、いつのまにか棚の奥に置かれている。始まったときの高揚が、気づかないうちに引いていく。そういう時期の変わり目が、どんなものにもあります。
その変わり目を言い表す「the bloom comes off the rose」を、『BONES』シーズン1第8話の中盤、家宅捜索の現場で、ブースが夫婦の私生活について自分なりの持論をこぼすシーンから、一緒に見ていきましょう。
「the bloom comes off the rose」の意味とニュアンス
the bloom comes off the rose
意味:新鮮味が薄れる、熱が冷めて現実が見え始める
直訳すると、バラから bloom が落ちる、です。満開の状態が過ぎて、いちばん美しい時期が終わることを指します。
肝心なのは、始まりが良かったことを前提にしている点です。最初から期待していなかったものには使いません。輝いて見えた時期が確かにあって、それが過ぎた。だからこの表現には、単なる劣化ではなく落差の感覚がついてまわります。
対象は幅広く、恋愛、仕事、新製品、政権など、熱狂を伴って始まったものならたいてい当てはまります。報道記事では the bloom is off the rose という現在形の言い方がよく使われ、ブームの終わりや評価の下落を示す見出し表現として定着しています。
動詞は come のほか be、go、wear なども使われますが、いずれも bloom が rose から離れるという同じ絵を共有しています。
【ここがポイント!】
- 満開の時期が過ぎるという情景を、熱の冷め方に重ねた表現
- 始まりが良かったことが前提なので、落差そのものを指すのがこの言葉
- 恋愛から経済ニュースまで、熱狂を伴って始まったものなら幅広く使えるのが便利なところ
『BONES』S01E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
遺体が押し込められていた冷蔵庫が、ある夫婦の家にあったものと一致します。家宅捜索に入った捜査員たちが、次々と押収品の箱を運び出していきます。ブレナンが箱の中身を手に取り、そこに表れた人間関係の型を淡々と分析したところで、ブースが自分なりの持論を口にします。この二人らしい、噛み合わないやり取りが始まります。
Booth: Well, this only comes up when the bloom comes off the rose, if you know what I mean.
(まあ、こういうものが出てくるのは、バラの花が散ってからだな。言いたいこと、わかるだろ。)Brennan: I don’t know what you mean.
(わからないわ。)Booth: You know, when the regular stuff— when it gets old, you need to spice it up, it’s over.
(ほら、いつものやり方が、飽きてきて、刺激を足さないといけなくなったら、それはもう終わりってことさ。)Brennan: Oh, that’s for sure.
(ああ、それは確かね。)Booth: I’m sorry?
(今なんて?)Brennan: I was agreeing.
(同意しただけよ。)BONES Season1 Episode8 (The Girl in the Fridge)
シーン解説と心理考察
if you know what I mean という前置きが、この場面の仕掛けになっています。はっきり言わなくても伝わるはずだ、という合図です。ブースは直接的な言い方を避け、バラの比喩に逃げ込みました。
ところがブレナンは I don’t know what you mean と正面から返します。察してほしいという要請が、そのまま床に落ちる。婉曲表現が通じない相手を前にしたときの気まずさが、この一往復に凝縮されています。
面白いのは、そのあとです。言葉を尽くして説明したブースに対し、ブレナンは Oh, that’s for sure と即答する。今度は伝わりすぎてしまいました。I’m sorry? と聞き返す彼に返ってくるのが I was agreeing。相手が引くほど率直に同意するという、彼女の一貫した振る舞いが表れています。伝わらないことより、伝わりすぎることのほうが気まずい。そういう場面です。
『BONES』流・覚え方のコツ
花瓶に生けたバラを思い浮かべてみましょう。買ってきた日は花びらがぴんと張っていて、部屋の空気まで変わって見える。数日経つと縁がわずかに透けてきて、そのうち一枚、また一枚と落ちていく。残るのは茎と葉と棘です。
the bloom comes off the rose が指しているのは、この落ち始めの一瞬です。まだ枯れてはいません。ただ、いちばん良い時期は過ぎたと分かってしまう。
ブースが押収品を見ながら口にしたのも、そういう時期の話でした。彼にとってあの品々は、花が落ちたあとに持ち出されるものだったわけです。花瓶のバラが変わり始める瞬間を思い出せば、この表現が指す時点がずれません。
例文で覚える「the bloom comes off the rose」
報道でも日常の会話でも、熱が引いた時点を示すのに使われます。3つの例文で、その幅を見てみましょう。
Six months in, the bloom came off the rose and I started noticing the commute.
(半年経つと熱が冷めて、通勤のつらさが気になり始めました。)
新しい職場への評価が変わっていく場面です。期間を先に置くと、変化の速さが伝わります。
Investors are cautious now that the bloom is off the rose for that sector.
(その分野の熱狂が去った今、投資家は慎重になっています。)
経済ニュースでよく見る形です。is off という現在形にすると、すでに冷めた状態を指せます。
A: You used to talk about that band constantly.
B: I know. The bloom’s off the rose, I guess.
A: They did release the same album twice.
(A:前はあのバンドの話ばかりしていたよね。)
(B:そうなの。熱が冷めちゃったみたい。)
(A:同じようなアルバムを二回出したからね。)
好みが変わったことを認める会話です。I guess を添えると、しみじみとした調子になります。
あわせて覚えたい関連表現
the honeymoon is over
(蜜月期間が終わった)
良好だった関係に問題が出始めることを指し、対象が人間関係や組織に寄ります。物や流行にも使える the bloom comes off the rose より、範囲は狭くなります。
lose its luster
(輝きを失う)
魅力や名声が薄れることを、表面の光沢で表す言い方です。時期の変わり目という一点を指す the bloom comes off the rose に比べて、程度が徐々に落ちていく感覚があります。
wear off
(効果や感覚が薄れていく)
薬や興奮など、いずれ消えるものが弱まる過程を表します。花が落ちるという一点を示す表現に対して、こちらは連続的な変化を指します。
Note|bloom が指していたもの
the bloom comes off the rose の bloom を単に花と訳してしまうと、この表現の含みが半分こぼれます。
bloom には、花そのもののほかに、果実の表面を覆う白い粉という意味があります。ぶどうやすももの皮についている、あの薄い曇りです。園芸や食品の分野では果粉と呼ばれ、鮮度が保たれている印として扱われます。手で触れれば簡単に取れてしまい、一度取れたら二度と戻りません。もうひとつ、若い人の頬にさす血色を指す用法もあり、in the bloom of youth(若さの盛りに)という言い方に残っています。
つまり bloom は、そのものがいちばん良い状態にあることを外から見せている印です。花びら、果粉、血色。どれも本体そのものではなく、本体を覆っている薄い層でありながら、なくなった瞬間に全体の見え方が変わってしまう。the bloom comes off the rose が指しているのは、この印が失われる時点になります。
だからこの表現は、対象が壊れたとは言っていません。バラは残っています。ただ、良い時期であることを示していたものが、もう乗っていない。
戻らないと分かるから、寂しいのでしょう。
まとめ|いちばん良い時期が過ぎた、その一点
the bloom comes off the rose は、バラから花が落ちる情景を借りて、熱狂が引いたあとの時点を指す表現です。始まりが良かったことを前提にしているため、単なる劣化ではなく落差そのものを言い当てます。
この一言があると、変化を責めずに説明できるようになります。悪くなったと断じるのでもなく、良かったと懐かしむのでもない。時期が変わったという事実だけを、静かに置くことができます。
察してほしいブースと、言葉どおりに受け取るブレナン。噛み合わないやり取りのなかで、この比喩がかえって鮮やかに残る場面と言えます。


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