海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
仕事の中身について指摘を受けたはずなのに、自分そのものを否定されたように感じてしまう。そんな経験はありませんか。切り分けたほうがいいと頭では分かっていても、感情のほうが先に動いてしまいます。
そのずれを言い当てる「take personally」を、『BONES』シーズン1第8話の終盤、法廷の外の廊下でブレナンとマイケルが向き合うシーンから、一緒に見ていきましょう。
「take personally」の意味とニュアンス
take ~ personally
意味:〜を自分への攻撃として受け取る、個人的なこととして受け止める
take は受け取るという動詞で、personally は個人として、という副詞です。差し出されたものを、一般論としてではなく自分個人宛てのものとして受け取る。それがこの表現の構図になります。
実際には否定形で使われることが圧倒的に多く、Don’t take it personally が定番の形です。厳しいことを言う前や、相手が落ち込んでいるときに添える緩衝材として働きます。あなたを否定しているのではない、と先に線を引く一言です。
裏返せば、この言葉が出てくる場面には、必ず線引きをめぐる争いがあります。言った側は仕事の話だと主張し、言われた側は自分への評価だと感じている。どちらの言い分にも理があるからこそ、この表現は使われるたびに少し緊張をはらみます。
目的語には it、this、things などが入り、少し硬い場面では take criticism personally のように名詞を置くこともできます。
【ここがポイント!】
- 差し出されたものを、自分個人宛てとして受け取ってしまうという構図の表現
- 実際には Don’t take it personally の否定形で使われることがほとんど
- 言う側と言われる側で線の引き方が違うので、温度に気をつけたい一言
『BONES』S01E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
裁判は思わぬ形で進みます。ブレナンのかつての指導教授マイケルが被告側の専門家証人として法廷に立ち、彼女の証言の信頼性そのものを揺さぶりました。休廷になった廊下で資料を読み込むブレナンのもとへ、マイケルが歩み寄ります。前の晩に上司のグッドマンから受けていた助言が、ここで効いてきます。
Michael: Is it safe to approach, Dr. Brennan?
(近づいても安全かな、ブレナン博士?)Brennan: Don’t charm, Michael.
(愛想で誤魔化さないで、マイケル。)Michael: I think you’re taking this too personally.
(これを個人的に受け取りすぎだと思うよ。)Brennan: You think I should be more rational?
(もっと理性的になれということ?)Michael: Yes.
(そうだ。)Brennan: Go to hell.
(地獄に落ちればいいわ。)BONES Season1 Episode8 (The Girl in the Fridge)
シーン解説と心理考察
taking this too personally という指摘は、一見すると正論です。裁判で対立するのは職務上のことであって、個人的な感情を持ち込むべきではない。マイケルはその線引きを持ち出しています。
ただし彼は法廷で、ブレナンがなぜこの職業を選んだのかにまで踏み込む発言をしていました。専門家証人としての職務を離れ、人物そのものを疑わせる言い方をしたのは彼のほうです。線を最初に越えた側が、越えるなと言っている。その倒錯がこの場面の核心にあります。
そして Go to hell という返しが効きます。前の晩、上司のグッドマンはブレナンにこう助言していました。もし彼が君を説き伏せようとしたら、そう言ってやりなさい、と。理屈で押してくる相手に、理屈を捨てた三語で応じる。冷静さを求められた直後にこの言葉が置かれる並びが、彼女の答えそのものになっています。
『BONES』流・覚え方のコツ
批判を、宛名の書かれた封筒だと考えてみましょう。宛名の欄に書かれているのは、仕事の中身でしょうか。それとも自分の名前でしょうか。take it personally とは、その封筒を自分宛てとして開けてしまうことです。
Don’t take it personally という一言は、封筒を渡す側が、これは君宛てではないと添えている状態にあたります。ただし宛名を決めるのは渡す側だけではありません。受け取る側にも読み取る権利がある。だからこの言葉は、しばしば押し問答になります。
廊下の場面でも、封筒の宛名をめぐる争いが起きていました。仕事の話だと言う側と、それだけではないと感じている側。どちらが正しいかではなく、宛名が二通りに読めるという構図を覚えておくと、この表現の使いどころがはっきりします。
例文で覚える「take personally」
否定形での緩衝材としての使い方が中心です。3つの例文で、その加減を見てみましょう。
Don’t take this personally, but the layout needs to be redone.
(気を悪くしないでほしいのですが、レイアウトは作り直しが必要です。)
指摘の前に置く定番の形です。but のあとを具体的にすると、前置きが言い訳に聞こえません。
In this line of work, you learn not to take rejection personally.
(この仕事では、断られても自分への否定だと受け取らないことを覚えます。)
自分の心構えを語る場面です。learn not to と組むと、身につけた技術として語れます。
A: He barely said two words to me all evening.
B: I wouldn’t take it personally. He’s like that with everyone.
A: That’s oddly comforting.
(A:彼、今晩ほとんど口をきいてくれなかった。)
(B:個人的に受け取らないほうがいいよ。誰に対してもああだから。)
(A:妙に慰められるわね。)
落ち込んでいる相手を励ます会話です。I wouldn’t と控えめに始めると、押しつけになりません。
あわせて覚えたい関連表現
take offense
(気を悪くする、腹を立てる)
不快に感じたという結果に焦点があります。受け取り方そのものを問題にする take personally に対して、こちらは生じた感情を指します。
take something to heart
(真剣に受け止める、心に刻む)
言われたことを深く内側に入れる表現で、良い意味でも使えます。攻撃として解釈する take personally とは、受け取ったあとの扱いが違います。
get defensive
(守りに入る、むきになる)
指摘に対して反論や言い訳が出てしまう態度を指します。take personally した結果として現れる振る舞いにあたります。
Note|argument と person を切り分ける英語
Don’t take it personally という言い方には、英語圏の議論の作法が凝縮されています。主張と、その主張をした人は別のものだという前提です。
この前提には名前がついています。主張ではなく人格のほうを攻撃する論法を、argumentum ad hominem、略して ad hominem と呼びます。17世紀末に哲学者ジョン・ロックが著作のなかで論じたことで広まったとされ、現在では議論の誤りの代表例として教科書に載っています。英語圏の教育では、議論の相手と議論の内容を切り分ける訓練が早い段階から行われ、attack the argument, not the person という言い方も定着しています。
日本語にも人格攻撃という語はありますが、こちらは主に非難のための言葉で、日常会話で相手をなだめる定型句にはなっていません。悪く取らないで、気にしないで、といった表現は、受け取り方そのものより、高ぶった感情の鎮め方のほうに寄っています。personally という一語で宛先の話に持ち込む言い方は、日本語にちょうど対応するものがありません。
だから Don’t take it personally を悪く取らないでと訳すと、意味が少しだけ痩せます。原文が言っているのは、感情を抑えてほしいということではなく、この批判の宛先は君ではないということだからです。
宛先を確かめてから開ける。英語はその作法を、この一語に託しています。
まとめ|宛先を確かめてから開ける
take personally は、差し出された言葉を自分個人宛てとして受け取ってしまうことを表します。そして実際には、そう受け取らないでほしいという否定形で使われるのがほとんどです。
この一言があると、厳しい内容を伝えるときに相手の身構えを解けます。逆に落ち込んでいる相手には、その言葉は君宛てではないと伝えられる。批判をやり取りする場面で、角を落とすために働く言い方です。
理性的になれと言われた直後に、ブレナンが選んだのは理屈ではありませんでした。宛先を決めるのは差し出す側だけではない。そう言い返すこともできる、そんな一言です。


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