海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
しばらく会っていなかった人と、思いがけず顔を合わせる。近況を尋ねようとして、何から聞けばいいのか一瞬迷ってしまう。そんな場面があります。
そんなときに使える「catch up」を、『BONES』シーズン1第8話の序盤、研究所に思いがけない客が現れ、ブレナンがその場で食事に誘うシーンから、一緒に見ていきましょう。
「catch up」の意味とニュアンス
catch up
意味:久しぶりに会って近況を話す、遅れを取り戻す
catch up の直訳は追いつくです。前を行く人との距離を詰める動きが元にあります。
会話で使うときは、この距離が時間に置き換わります。会っていなかったあいだに、お互いの人生はそれぞれ進んでいる。相手の現在地を知らないままでは話が噛み合わないので、まず追いつく。近況を話すという訳は、その結果として出てくるものです。
だから、昨日会ったばかりの相手には使いません。空白と呼べるだけの時間があって初めて成り立つ表現です。Let’s catch up soon のように誘いの形で使われることが多く、別れ際の社交辞令としてもよく登場します。
仕事の文脈では、遅れを取り戻すという元の意味がそのまま生きます。catch up on emails なら、溜まったメールを片づけること。人が対象なら近況、作業が対象なら遅れ、と何に追いつくかで訳が変わります。
【ここがポイント!】
- 前を行く相手との距離を詰める、その動きが芯にある表現
- 空白の時間があって初めて成り立つので、昨日会った相手には使わない一言
- 人が相手なら近況、作業が相手なら遅れ、と対象で訳が変わるのがコツ
『BONES』S01E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
研究所の上階の手すりに、見覚えのある男が寄りかかっています。ブレナンの大学時代の指導教授マイケル・スティルズ、三年ぶりの再会です。どちらから降りるかを言い合ったすえ、階段の中ほどまで互いに歩み寄った二人。話題が仕事に移ったところで、ブレナンのほうから切り出します。少し離れた場所では、ラボの仲間たちがその一部始終を眺めていました。
Michael: I assumed they tried you first.
(君のところに先に話が行ったんだろうと思っていたよ。)Brennan: I already had a job.
(もう仕事があったから。)Brennan: It seems like we should have dinner tonight, catch up?
(今夜、食事をするのが妥当に思えるわ。近況の埋め合わせも兼ねて。)Michael: Sounds reasonable.
(理にかなっているね。)BONES Season1 Episode8 (The Girl in the Fridge)
シーン解説と心理考察
誘い方に、この人物らしさが表れています。会いたい、話したいとは言いません。It seems like we should、つまり、そうするのが妥当に思える、という組み立てです。感情ではなく判断として提示することで、断られたときの逃げ道も同時に用意している。
受けるマイケルの Sounds reasonable も同じ調子です。嬉しい、楽しみだ、ではなく、理にかなっている。三年ぶりに再会した二人が、合理性の言葉で食事の約束を交わしています。同じ話し方を選んでいることが、この関係の距離を物語っています。
catch up という語の選び方も見どころです。空白を埋めるという実務的な目的を掲げることで、会いたいという気持ちを表に出さずに済む。この一語が、ブレナンにとっての盾になっています。
『BONES』流・覚え方のコツ
二人が並んで走っている情景を思い浮かべてみます。片方が先を行き、もう片方が遅れる。距離が開いたまま時間が過ぎ、やがて足を止めて振り返る。追いついて、また横に並ぶ。この一連の動きが catch up です。
会話で使うときは、走っているのがお互いの人生になります。三年のあいだに、マイケルの人生もブレナンの人生も、それぞれ前へ進んでいました。食事の席でその距離を詰めようという提案が、あの一言です。
階段の中ほどまで互いに歩み寄った二人の姿は、この表現の絵柄そのものでした。どちらかが全部歩くのではなく、両方が動いて距離を詰める。そのイメージごと覚えておくと、使いどころを外しません。
例文で覚える「catch up」
人が相手のときと、作業が相手のとき。両方の使い方を3つの例文で見てみましょう。
We should catch up over coffee sometime.
(そのうちコーヒーでも飲みながら、近況を話しましょう。)
別れ際の社交辞令としても使える言い方です。sometime を添えると、日程を詰めない軽い誘いになります。
I spent the whole weekend catching up on emails.
(週末はまるまる、溜まったメールを片づけるのに使いました。)
遅れを取り戻す側の用法です。on のあとに対象を置くと、何に追いつくのかがはっきりします。
A: It’s been what, five years?
B: Something like that. We have a lot to catch up on.
A: Then let’s not do this standing in a parking lot.
(A:何年ぶりだろう、5年?)
(B:それくらいね。話すことが山ほどあるわ。)
(A:じゃあ駐車場に立ったままはやめよう。)
偶然の再会を、あらためての約束につなげる会話です。a lot to catch up on と言えば、積もる話の量を一言で伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
fill someone in
(〜に事情を説明する、情報を伝える)
知らない側の空白を、知っている側が埋めてあげる言い方です。お互いが埋め合う catch up に対して、こちらは情報が一方向に流れます。
touch base
(短く連絡を取り合う)
接点を保つことが目的の、軽い連絡を指します。腰を据えて話し込む catch up に比べて、時間も内容もずっと短くなります。
keep up with
(遅れずについていく)
すでに追いついている状態を保つ表現です。離れた距離を詰める catch up とは、出発点が違います。
Note|catch up と keep up の役割分担
catch up と keep up は形がよく似ていますが、担当する場面ははっきり分かれています。
分けているのは、話し手が今どこにいるかです。catch up は遅れている状態から始まります。距離が開いている前提があり、それを詰める動きを表す。だから完了させることができて、I’ve caught up と言えば追いついた時点が生まれます。一方の keep up は、すでに並んでいる状態から始まります。開かないように保ち続ける動きなので、終わりがありません。keep up with the news なら、毎日ニュースに触れ続けているという話になります。
同じ相手についてでも、どちらを使うかで自分の立ち位置が変わります。久しぶりに会った友人と話すのは catch up。その友人の投稿を毎日追いかけているのは keep up。前者には空白があり、後者にはありません。
さらに言えば、catch up には終わりが見えているという安心感があります。埋めるべき空白の量は決まっていて、話し終えれば追いつく。keep up のほうは、走り続けているかぎり終わりません。同じ追いかける動きでも、片方には着地点があり、もう片方にはないわけです。
ついていくのか、追いつくのか。英語は話し始める前に、そこを決めています。
まとめ|空白があるから、埋められる
catch up は、開いた距離を詰めて相手に追いつく表現です。人が相手なら近況を、作業が相手なら遅れを埋める。どちらの場合も、埋めるべき空白があることが前提になります。
この一言があると、久しぶりの相手にかける言葉に迷わなくなります。元気だった、で終わらせずに、話す時間そのものを提案できる。誘いの形にも、別れ際の挨拶にも使えます。
会いたいと言わずに食事へ誘ったブレナンの一言は、この表現が持つ実務的な顔をうまく使ったものでした。空白があるからこそ、埋める約束ができるのかもしれません。


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