やろうと思いつつ先延ばしにしてきたこと、誰にでも一つや二つありますね。そんなとき英語では It’s high time… という言い方で「もうとっくにやるべき頃だ」と切り出すことができます。『ビッグバン★セオリー』シーズン7エピソード2で、拗ねたシェルドンがこの表現を使って、避けてきた話題に踏み込みます。high time は意味だけでなく、後ろの動詞が過去形になるという文法上の面白さも持っています。この一語を押さえると、ちょっと大人びた英語の催促ができるようになります。
「high time」の意味とニュアンス
high time は「とっくに〜すべき頃だ」「もう〜してもいい頃合いだ」という意味です。単に「そろそろ時間だ」と言うより、「本来もっと早くやるべきだった」という軽い焦りや催促のニュアンスを含みます。
決まった形があります。It’s (about) high time + 主語 + 動詞の過去形、という構文です。たとえば It’s high time we left.(もう出発すべき頃だ)のように、内容は現在から未来のことなのに、動詞は過去形になります。これは仮定法過去と呼ばれる用法で、「本来そうあるべきなのに、まだ実現していない」という気持ちを過去形で表しています。about を挟んで It’s about high time… とすると、さらに口語的で自然な響きになります。
【ここがポイント!】
It’s high time + 主語 + 過去形、がセットです。意味は「今・これから」なのに動詞は過去形。この「ねじれ」こそが high time の文法的な核心です。
シーンで見てみよう
レナードが航海から早く帰っていたのに自分に黙っていた、という事実が発覚し、シェルドンは傷つき拗ねています。気まずい空気の中、シェルドンは持ち前の理屈っぽさで「向き合うべき問題」を切り出します。
Sheldon: Oh, no, no, let’s not sugarcoat this. You find me finicky, pedantic and annoying.
(いやいや、ごまかすのはやめよう。君は僕のことを、神経質で、細かくて、うっとうしいと思っている。)
Leonard: I actually have used those exact words before. In that order.
(実はその言葉、前に使ったことがある。しかも、その順番で。)
Sheldon: Well, Leonard, I think it’s high time you and I address the tweepadock in the room.
(レナード、そろそろ君と僕とで、この部屋のトゥイーパドックに向き合うべき頃合いだと思う。)
The Big Bang Theory Season7 Episode2 (The Deception Verification)
シーン解説と心理考察
シェルドンが内心では傷ついているのに、それをまっすぐ口に出さず、It’s high time you and I address… という格式ばった構文で核心に入っていくのが見どころです。仮定法を使ったこの硬い言い回しには、感情を理屈で包もうとするシェルドンらしさがよく出ています。
直後の the tweepadock in the room も効いています。これは本来 the elephant in the room(皆が気づいているのに触れない問題)という慣用句を、エイミーが作った造語に置き換えたもの。深刻な話を切り出しておきながら妙な言葉でボケる、その緊張と脱力の同居がこのシーンの面白いところです。high time という大人びた表現を、子どもっぽい意地と一緒に使うアンバランスさに、シェルドンの不器用な歩み寄りが読み取れます。
覚え方のコツ
high のイメージは「太陽が高く昇りきった真っ昼間」です。high noon(真昼)という言葉があるように、high には「時間がすっかり進んでしまった」という感覚があります。日が高く昇っているのに、まだやるべきことに手をつけていない。その「遅れ」の焦りが high time の核心です。時計の針が思ったより進んでいて「もうこんな時間!」と気づく、あの瞬間を思い浮かべると、意味と結びつきます。劇中のシェルドンが先延ばしの限界で切り出す様子と重ねると、さらに記憶に残ります。
例文で覚える
催促やうながしの場面で活躍します。後ろの動詞を過去形にするのを忘れないのがコツです。
It’s high time we talked about our budget.
(そろそろ予算について話し合うべき頃だ。)
It’s about high time this company updated its old policy.
(この会社も、いいかげん古い方針を見直してもいい頃だ。)
A: I still haven’t apologized to her.(彼女にまだ謝ってないんだ。)
B: It’s high time you did, don’t you think?(そろそろ謝るべきじゃない?)
日常の相談から、ビジネスでの問題提起、友人へのやんわりした催促まで、過去形のセットを保ったまま幅広く使えます。
あわせて覚えたい関連表現
about time
(いい加減〜すべき頃だ/やっとだ)
high time とほぼ同義です。ただし It’s about time! と単独で使うと「やっとか!」という到着・実現への安堵や皮肉になります。high time のほうがやや改まった響きです。
long overdue
(とっくに実行されるべきだった/大幅に遅れている)
This change is long overdue.(この変更はとっくにやるべきだった)のように使う形容詞表現です。high time を一語で言い換える感覚で使えます。
it’s time + 主語 + 過去形
(もう〜する時間だ)
high の強調がない、素朴な「〜すべき時だ」。同じく動詞が過去形になる仲間で、セットで覚えると仮定法の感覚が身につきます。
Note|仮定法なのに過去形 ―― It’s high time の文法のふしぎ
It’s high time you went home.(そろそろ家に帰る頃だよ)―― この文を初めて見ると、多くの学習者が引っかかります。「今」のことを言っているのに、なぜ動詞が went と過去形なのか。
これは仮定法過去と呼ばれる用法です。仮定法過去では、現在の事実と違うことや、現実にはまだ実現していないことを、あえて過去形で表します。If I had a car…(もし車があれば ―― 実際にはない)が代表例です。
It’s high time + 過去形も、この仲間です。「本来もう〜しているべきなのに、現実にはまだしていない」という、現実とのズレを過去形で示しています。だから「帰るべき頃なのに、まだ帰っていない」という気持ちが went という過去形に込められるわけです。時間軸の過去ではなく、「現実からの距離」を表す過去形だと考えると腑に落ちます。
同じ構造を持つ表現に I’d rather you didn’t.(あなたにはそうしてほしくない)や It’s time we left.(もう出発する時間だ)があります。いずれも、内容は現在・未来なのに動詞は過去形。この「ねじれ」をパターンとしてまるごと覚えてしまうのが、遠回りに見えて一番の近道です。
It’s high time you mastered this.(そろそろこれをマスターすべき頃だ)―― この一文を口に出して、過去形のリズムごと体に入れておくと、いざというとき自然に出てきます。
まとめ|先延ばしを終わらせる一言
high time は「とっくに〜すべき頃だ」という、軽い焦りを含んだ催促の表現です。It’s (about) high time + 主語 + 動詞の過去形、という形がセットで、意味は現在・未来なのに動詞が過去形になる点が最大の特徴と言えます。
太陽が高く昇りきった「真っ昼間」の遅れの感覚を思い出せば、意味は忘れません。文法のねじれも、仮定法過去の「現実からの距離」と捉えれば怖くなくなります。シェルドンのように、避けてきたことにそっと踏み込むとき、この一語が静かに背中を押してくれます。


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