海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
もう決まったも同然。そう口にしたくなる瞬間が、仕事にも勝負ごとにもあります。ただ、決まったことと、もう動かせないことは、少しだけ違います。英語はその差を、ある身近な手仕事の動作で言い分けています。
その違いを一語で背負う「sewed up」を、『BONES』シーズン1第10話の中盤、サンタモニカの浜辺で証拠なしに犯人像を語り出したブースを、ブレナンが皮肉ひとつで受け流すシーンから、一緒に見ていきましょう。
「sewed up」の意味とニュアンス
sewed up(sew up)
意味:決着がついている、確実に手中にある、まとめ上げてある
sew は縫うという動詞です。sew up となると、袋の口を縫って閉じる、あるいは傷口を縫合するという動作を指します。そこから、結果が外へ逃げないところまで固めた、という比喩として使われるようになりました。
have + 目的語 + sewed up の形が定番です。have the deal sewed up なら契約はもう動かない、have the election sewed up なら当選が確実、といった具合に、選挙・スポーツ・商談など、勝ち負けや成否がはっきりする場面によく現れます。
finish(終える)との違いは、閉じたという手触りが残るところです。単に工程が終わったのではなく、ほころびがない状態にまでした。だから他者の入り込む余地がないという含みが自然についてきます。裏を返せば、まだ縫えていない箇所があれば結果は動く。その緊張感まで背負っている表現です。
【ここがポイント!】
- 袋の口を縫い閉じて、中身が外へ出られなくするという絵が芯にある表現
- 終わったのではなく閉じたのだ、という手触りが残るのが finish との違い
- have ~ sewed up の形で覚えておくと、そのまま口に出しやすくなります
『BONES』S01E10のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
舞台はサンタモニカの桟橋近く、ビーチバレーに興じる若者たちの前です。被害者の元交際相手がこの中にいると見たブースは、証拠ではなく自分の印象から犯人像を語り始めます。並んで立つブレナンは、その飛躍を正面から否定しません。代わりに、彼の理屈をそのまま最後まで延ばしてみせます。
Booth: There’s a pretty good chance one of these leaping losers is our k*ller.
(この跳ね回ってる連中の中に犯人がいる可能性は十分ある)Brennan: You always think it’s the boyfriend.
(あなたはいつも、恋人が犯人だと思うのね)Booth: I’d say anyone who plays this stupid game is capable of m*rder.
(こんなくだらないゲームをやる奴なら、誰だってやりかねないさ)Brennan: Well then you got this case sewed up. Why don’t you just go and arrest them all?
(あら、それならこの事件はもう解決したも同然ね。全員逮捕しに行けばいいじゃない)BONES Season1 Episode10 (The Woman at the Airport)
シーン解説と心理考察
ブースの推論は、証拠からではなく好き嫌いから出発しています。このゲームをする人間なら誰でもやりかねない、という言い方に、根拠のなさがそのまま表れています。
ブレナンの返し方が見どころです。間違っていると指摘するのではなく、その前提を認めた場合に何が起きるかを示す。全員が犯人たりうるなら捜査は不要で、あとは逮捕するだけになる。sewed up という完了の言葉を置くことで、飛躍のおかしさが自分で立ち上がる形になっています。皮肉が成立しているのは、この語が「もう動かない」を意味すると二人とも知っているからです。
そして彼女は、言葉での応酬をそこで打ち切ります。ブースが呼びかけても誰も振り向かない状況に、輪の中へ踏み込んでボールを奪い、遠くへ蹴り飛ばす。話を閉じるのは言葉ではなく行動だと示す一手が、この場面をやわらかく見せています。
『BONES』流・覚え方のコツ
袋の口を糸で縫い合わせる情景を思い浮かべてみます。縫い終われば、中身はもう出てきません。傷口の縫合も同じで、閉じてしまえば開かない。sew up が指しているのは、結果が逃げ道を失った状態です。
劇中でブレナンが皮肉として使えたのも、この絵が誰にでも見えるからでした。もう縫い終わったと言われれば、あとは何もすることがないと分かる。だから、まだ何も分かっていない捜査に当てはめると、そのおかしさが際立ちます。
最後の一針を落とすところまでやってはじめて sewed up。そう覚えておくと、finish との距離がはっきりします。
例文で覚える「sewed up」
仕事にも勝負ごとにも使える表現です。3つの例文で、確定の度合いの見せ方を確かめてみましょう。
Their lawyers had the deal sewed up by Friday.
(先方の弁護士たちは、金曜までに契約をまとめ上げた)
交渉が確定した段階を報告する場面です。have + 目的語 + sewed up の語順が最も落ち着きます。
With two games left, they’ve pretty much got the title sewed up.
(残り2試合で、優勝はほぼ手中に収めている)
逆転の可能性が消えた状況を伝える場面です。pretty much を添えると、断定をわずかに和らげられます。
A: How did the pitch go?
B: Honestly? I think we have it sewed up.
A: Don’t say that out loud yet.
(A:プレゼンどうだった?)
(B:正直に言うと、もう決まりだと思う)
(A:まだ声に出さないで)
手応えを伝える場面です。確定を口にすること自体をためらう空気まで含めて、会話が回ります。
あわせて覚えたい関連表現
in the bag
(手中にある、確実だ)
獲物を袋に入れた状態を指し、勝利や成果がすでに自分のものだという自信を表します。sewed up が閉じる動作を含むのに対して、こちらは入れ終わった結果だけを見ています。
nail down
(確定させる、詰める)
釘で打ちつけて動かなくする言い方で、日程や条件など細部を固める場面に向きます。sewed up が全体の決着を指すのに対して、こちらは個別の項目にも使えます。
a done deal
(すでに決まった話)
決定済みであることを名詞句で言い切る表現です。sewed up が自分たちで閉じたという手触りを残すのに対して、こちらは誰が決めたかを問いません。
Note|sew は、綴りと音が食い違う語の代表格
sewed up を声に出すとき、最初につまずくのが sew の読み方です。この語は英語の中でも、綴りと音の対応が特にねじれています。
sew は /soʊ/ と読みます。ソー(saw)でもスー(sue)でもなく、so と同じ音です。綴りに引きずられて /suː/ と発音してしまうと、sue(訴える)に近づいてしまい、契約をまとめた話が訴訟の話に聞こえかねません。
ややこしいのは、周辺に紛らわしい語が集まっていることです。sow は「種をまく」なら /soʊ/ で sew と同じ音になりますが、「雌豚」なら /saʊ/ とまったく別の読みになります。sewer も同様で、「縫う人」なら /ˈsoʊər/、「下水道」なら /ˈsuːər/。綴りが同じでも、意味が変われば音が変わる語がこれだけ密集しているのは珍しいことです。
過去分詞にも揺れがあります。sewn と sewed の両方が使われ、この慣用表現では sewed up の形が定着していますが、sewn up と書かれた例も広く見かけます。どちらで書かれていても、指している状態は同じです。
つまりこの語は、綴りから音を推測しようとすると必ず外れます。sewed up を覚えるときは、文字の並びより先に so の音を頭に置いておく。それだけで、聞き取りにも発話にも迷いがなくなります。
綴りより先に、音を持っておきたい語です。
まとめ|最後の一針が落ちるまで
sewed up は、結果がもう動かない状態を、縫い閉じるという動作で言い表す表現です。終わったのではなく閉じたのだ、という手触りが残るところに、この語の値打ちがあります。
この一言があると、確定の度合いを一段濃く伝えられます。決まりました、では足りない場面で、もう開かないところまで含めて示せる。逆に、まだ一針残っていると言えば、油断への釘刺しにもなります。
証拠を積まずに結論へ跳んだブースに、ブレナンが返したのは反論ではなく、その結論を最後まで延長してみせる一言でした。飛躍のおかしさを、相手の言葉づかいのまま突き返す言い方と言えます。


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