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ほんの少し質問しただけなのに、相手が「なんでそんなに問い詰めるの」と身構えてしまう——そんなやり取りに覚えはありませんか。
そんな「根掘り葉掘りの質問攻め」を指す「the third degree」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン9第1話、失恋話を披露したスチュアートが、たった一つの質問にあわてて身構えるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「the third degree」の意味とニュアンス
the third degree
意味:厳しい尋問、根掘り葉掘りの追及、質問攻め
しつこく問い詰めること、容赦のない質問を浴びせることを指す表現です。多くは give someone the third degree(人を厳しく問い詰める)、get the third degree(問い詰められる)の形で使われます。
直訳すれば「第三度」ですが、もとはアメリカで容疑者に対して行われた厳しい取り調べを指す言葉だったとされ、そこから日常の「質問攻め」へと意味が広がりました。面白いのは、実際の会話では本当に深刻な尋問よりも、「ちょっと聞いただけなのに大げさだな」という軽口として使われることが多い点です。親が子を問い詰めるとき、パートナーが行き先を尋ねるときなど、身近な「質問攻め」を、わざと取調室めいた言葉で大げさに表現する——そのユーモアがこの表現の持ち味になっています。
【ここがポイント!】
- 「the third degree」の核は、薄暗い取調室での厳しい尋問のイメージ
- give / get と組んで「問い詰める/問い詰められる」を表す定番の形
- 深刻な追及より、軽い質問を大げさに言う冗談として使われやすい一言
『ビッグバン★セオリー』S09E01のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
失恋したエイミーを慰めようと、スチュアートが「自分も過去につらい別れを経験した」と語り出します。ところが、相手の名前を一言聞かれただけで、彼が the third degree を持ち出してはぐらかすのが見どころです。
Stuart: I know what you’re going through. My last breakup was pretty tough.
(君の気持ち、わかるよ。僕の前の失恋もかなりつらかったんだ。)Amy: Oh. What was her name?
(あら。相手の名前は?)Stuart: Hey, it’s a true story. I don’t need the third degree.
(おい、本当の話だって。尋問はやめてくれ。)The Big Bang Theory Season9 Episode1(The Matrimonial Momentum)
シーン解説と心理考察
エイミーが投げかけたのは、「相手の名前は?」というたった一つの、ごく自然な質問です。それを「the third degree はいらない」と取調室めいた言葉で大げさに拒むことで、スチュアートの失恋話が、実は怪しい——おそらく作り話か、あまり語りたくないもの——だという空気がにじむ場面です。
質問はひとつだけなのに、本人だけが厳しい尋問を受けているかのように振る舞う。この温度差そのものが笑いを生んでいます。冴えない自分を持て余し、ちょっとした問いにも防御的になってしまうスチュアートの人物像が、この一言にぎゅっと重なっています。誇張された言葉が、彼のばつの悪さをやわらかく見せています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
薄暗い取調室、容疑者の顔に一灯のライトが当てられ、刑事が机を挟んで「さあ、全部吐け」と次々に質問を浴びせる——古い刑事ドラマで見たような、あの尋問シーンを思い浮かべてください。それが the third degree の原イメージです。
このシーンなら、スチュアートが「相手の名前は?」というたった一問を、まるでその取調室に放り込まれたかのように受け止め、「尋問はやめてくれ」と身構える姿を重ねるとよいでしょう。質問の中身の軽さと、彼の大げさな反応の落差をセットで覚えれば、「(大げさな)厳しい尋問」という意味がくっきり記憶に残ります。
例文で覚える「the third degree」
「質問攻め」を大げさに言うこのフレーズの感覚を、場面の異なる3つの例文でつかんでみましょう。
My parents gave me the third degree when I got home late.
(遅く帰ったら、親に根掘り葉掘り問い詰められた。)
門限を破って質問攻めにあった場面です。give someone the third degree は、このフレーズの最も典型的な使い方になります。
Relax, I’m just asking—it’s not the third degree.
(落ち着いて、ただ聞いてるだけ。尋問じゃないんだから。)
相手が質問を重く受け止めてしまったときに、和ませる一言です。劇中の「尋問はいらない」と同じく、打ち消しの形で使うのもよくあるパターンです。
A: So who were you out with last night? And where did you go?
B: Whoa, what’s with the third degree? We just got coffee.
(A:昨日の夜は誰と出かけてたの? どこに行ったの?)
(B:おっと、なんでそんなに問い詰めるの? コーヒー飲んだだけだよ。)
立て続けの質問にたじろぐ場面です。what’s with the third degree? で「なんでそんなに問い詰めるの?」と、軽く受け流すニュアンスが出ます。
あわせて覚えたい関連表現
grill (someone)
(厳しく問い詰める、質問攻めにする)
grill は「網で焼く」イメージから、動詞一語で「容赦なく問い詰める」を表します。the third degree が「尋問という行為」を名詞句で指すのに対し、grill は問い詰める動作そのものを指す点が違いです。
cross-examine
(反対尋問する、問いただす)
法廷での反対尋問が原義で、よりかたく専門的な響きを持ちます。the third degree が口語で冗談めかして使われるのとは、フォーマル度の点で対照的です。
bombard (someone) with questions
(質問を浴びせかける)
こちらは「質問の量の多さ」に焦点があります。the third degree は厳しさやしつこさという「圧」に重きがあり、必ずしも質問数の多さを含意しないところが違いです。
Note|警察の取り調べから来た the third degree
なぜ「第三度」が「厳しい尋問」を意味するのか。the third degree の背景には、いくつかの説が重なっています。
最もよく知られているのは、かつてアメリカの警察が容疑者に対して行った厳しい取り調べ——ときに精神的・肉体的な圧力を伴う尋問——を the third degree と呼んだ、という説です。「第三段階=最も厳しい段階」という連想から、容赦のない問い詰めを指すようになったとされています。一方で、フリーメイソンの位階に由来するという説もあり、最高位の third degree に至る審査が厳格だったことと結びつける見方もあります。どちらが本当の起源かははっきりしませんが、いずれの説にも「最終段階の、最も厳しい試練」というイメージが共通しているのは興味深いところです。そして現代の日常会話では、この物々しい来歴とは裏腹に、「ちょっと質問しただけで尋問扱いしないでよ」という軽口として使われるのが普通です。Don’t give me the third degree! と笑いながら返す——その落差にこそ、この表現の面白さがあります。
このシーンのスチュアートも、たった一つの質問を「the third degree」と呼ぶことで、本格的な取調室の重みを、自分のばつの悪さを隠すための大げさな盾として使っているわけです。
物騒な来歴を持つ言葉ほど、日常では軽やかに使われる。
まとめ|スチュアートの空回りから学ぶ「質問攻め」
the third degree は、薄暗い取調室での厳しい尋問を思わせる、「根掘り葉掘りの追及・質問攻め」を表す表現です。
物々しい来歴を持ちながら、実際の会話ではむしろ「そんなに問い詰めないで」と軽く受け流すための、ユーモラスな一言として使われます。give や get と組み合わせて、問い詰める側・問い詰められる側のどちらからも言える点をつかんでおくと、会話の引き出しに加えてみてください。
たった一つの質問を尋問と呼んでみせたスチュアートの空回りの後ろに、語りたくない過去をかかえた小さな照れが、ほんの少し透けて見える場面でした。


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