海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
うまくいくか分からないけれど、ダメ元でやってみようかな——そんなふうに、結果が読めないことに一歩踏み出した経験はありませんか。
今回は、その気持ちを表す「worth a shot」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン9第11話の後半、シェルドンの夢に現れた恩師アーサーが、ある試みに失敗して飄々とつぶやくシーンから、一緒に見ていきましょう。
「worth a shot」の意味とニュアンス
worth a shot
意味:試す価値がある/ダメ元でやってみる価値はある
成功するかどうかは分からないけれど、「やってみる価値はある」と挑戦を後押ししたり、正当化したりするときに使う口語表現です。shot はもともと「一発の射撃」や「ゴールへのシュート」を指し、そこから「一回の試み」という意味に広がっています。
It’s worth a shot.(やってみる価値はあるよ)のように、これからの挑戦を勧める形でも、It was worth a shot.(ダメ元でやってみたんだ)のように、終わった試みを振り返る形でも使えます。共通しているのは、「失敗してもたいした損はない」という気軽さです。リスクが小さく、当たれば儲けもの——そんな場面で背中を押してくれる、軽快な前向きさを持った表現です。
【ここがポイント!】
- shot は「一発・一回の試み」、worth a shot で「試す価値がある」
- これからの挑戦にも、終わった試みの振り返りにも使える
- 「失敗しても損は小さい」という気軽な前向きさが核
『ビッグバン★セオリー』S09E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
亡き恩師プロトン教授(アーサー)が、シェルドンの夢にまた現れます。アーサーは毎回この夢から抜け出そうと何か試みるのですが、今回もうまくいかず、肩をすくめて受け入れます。
Sheldon: I suppose you’re here because I’ve decided to be physical with my girlfriend.
(君がここにいるのは、私が恋人と一線を越えると決めたからだろうね。)Arthur: Eh, excuse me for a moment. Well, it was worth a shot.
(えー、ちょっと失礼。まあ、ダメ元で試してみたんだがね。)The Big Bang Theory Season9 Episode11(The Opening Night Excitation)
シーン解説と心理考察
夢から抜け出そうと試みて、あっさり失敗する——それでもアーサーは「まあ、ダメ元だったしね」とばかりに、軽く受け流します。この飄々とした諦めのよさが、worth a shot という一言にやわらかく重なっています。深刻にならず、うまくいかなくても笑って切り替える、アーサーの人柄がよく表れた場面です。
直後にアーサーは、初めての親密な関係に戸惑うシェルドンの相談に、穏やかに乗ってあげます。重大な悩みの導入に、この力の抜けたひとことが置かれている対比も効いています。深刻な相談と軽妙なつぶやきが隣り合うことで、シーン全体の空気がやわらかく保たれています。亡き恩師が夢の中で見せる、飾らない優しさがにじむ場面と言えます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
ダーツの矢を一本、的に向かって軽く投げる様子を思い浮かべてみてください。当たるかどうかは分からないけれど、一発(a shot)投げてみる価値はある(worth)——これが worth a shot のイメージです。外しても矢を一本使っただけで、大きな損はありません。アーサーが夢からの脱出を試みて、失敗しても「worth a shot」と肩をすくめた姿は、まさに気軽に一投を放った後の表情そのもの。「狙って、一発撃って、外れても笑う」という一連の動作ごと覚えると、このフレーズの軽やかな前向きさが体に馴染みます。
例文で覚える「worth a shot」
挑戦を勧める場面でも、振り返る場面でも使えるこのフレーズを、3つの形で見てみましょう。
I’m not sure they’re hiring, but it’s worth a shot to apply.
(採用しているか分からないけど、応募してみる価値はあるよ。)
成功するか不確かな挑戦を後押しする、もっとも典型的な使い方です。「ダメかもしれないけど、とりあえず」という気持ちが自然に伝わります。
It didn’t work out, but hey, it was worth a shot.
(うまくいかなかったけど、まあ、やってみる価値はあったよ。)
過去形で、終わった試みを前向きに振り返る言い方です。劇中のアーサーと同じ、失敗を笑って受け止めるニュアンスが出ています。
A: Do you really think they’ll give us a discount?
B: Probably not, but it’s worth a shot — the worst they can say is no.
(A:本当に値引きしてくれると思う?)
(B:たぶん無理だけど、ダメ元でやってみる価値はあるよ。最悪でも断られるだけだしね。)
リスクの小さい挑戦を勧める会話です。the worst they can say is no(最悪でも断られるだけ)という定番の言い回しと相性のいい表現です。
あわせて覚えたい関連表現
worth a try
(試す価値がある)
worth a shot とほぼ同じ意味です。worth a shot のほうがややカジュアルで「ダメ元」の響きが強く、worth a try は中立的で、ややフォーマルな場面にもなじみます。
give it a shot
(やってみる/挑戦してみる)
worth a shot が「価値がある」という評価なのに対し、give it a shot は「実際にやってみて」と行動をうながす言い方です。同じ shot を使う表現どうし、セットで覚えると便利です。
nothing to lose
(失うものは何もない)
挑戦を後押しする発想は同じですが、worth a shot が「やる価値がある」と前向きに評価するのに対し、nothing to lose は「失敗してもリスクがない」と損の小ささを強調します。
Note|a shot を使った慣用句の広がり
worth a shot の shot は「一発・一回の試み」という意味ですが、この shot を使った慣用句は、実はかなりの広がりを持っています。
中心にあるのは「一発・狙い」というイメージです。まず give it a shot(やってみる)は、worth a shot とほぼ兄弟のような表現で、「価値がある」のか「実際にやる」のかという違いだけです。そこから少し離れると、a long shot(可能性の低い賭け・大穴)があります。これは遠くの的を狙う一発、つまり当たる確率の低い試みを表すとされています。さらに call the shots(采配を振る・指揮を執る)になると、「どこを撃つかを決める人」=決定権を持つ人、という意味に広がります。a shot in the dark(当てずっぽう)は、暗闇の中で的も見えずに撃つ一発、というわけです。こうして並べてみると、どれも「一発撃つ」という核となるイメージから、試み・賭け・決定・推測へと意味が枝分かれしていることが見えてきます。一つの単語を軸に慣用句を地図のように整理すると、まとめて記憶に残りやすくなります。
アーサーが夢からの脱出に放った「一発」も、この shot ファミリーの一員だと思うと、何気ないひとことに英語の表現の奥行きが感じられます。
一つの単語から、こんなにも表現が枝を伸ばしているのですね。
まとめ|気軽な一投を後押しする言葉
worth a shot は、「うまくいくか分からないけれど、試す価値はある」という気軽な前向きさを表す口語表現です。shot(一発・一回の試み)を軸に、これからの挑戦にも、終わった試みの振り返りにも使える、振り幅のある一言です。
この表現を覚えておくと、迷っている相手の背中をそっと押したり、自分の「ダメ元の挑戦」を軽やかに言い表したりできるようになります。失敗を重く受け止めず、笑って切り替える——そんな空気を会話に運んでくれます。
夢からの脱出に失敗しても飄々としていたアーサーのように、結果に縛られず一歩を踏み出せる、そんな表現と言えます。


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