海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
何かを正式に決めてしまう前に、まず信頼できる誰かに「ちょっとこれ、見てもらえる?」と意見を求めた経験はありませんか。自分の判断にまだ自信が持てないとき、一度だれかに通しておくと安心できるものです。
そんなときにぴったりの「run something by someone」を、『BONES ―骨は語る―』シーズン11第16話、新人インターンのミルズが、厳しいブレナンではなく上司のカムに先に所見を相談するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「run something by someone」の意味とニュアンス
run something by someone
意味:〜に意見を聞く/〜に確認を通す
あるアイデアや提案、調べた内容などを、正式に決めたり提出したりする前に、相手に軽く見せて意見や反応をうかがうことを表します。run(走らせる)と by(〜のそばを)が組み合わさり、「自分の案を相手のそばをすっと通して見てもらう」というイメージが核にあります。
ポイントは、その「軽さ」です。きっちりした報告(report)ではなく、「ちょっと見てもらって、おかしくないか確かめたい」という打診のニュアンスがあります。something の部分には it / this idea / the plan などが入り、「決める前にひと声かけて反応を見ておく」という、相談と確認のあいだのような場面で活躍します。
【ここがポイント!】
- 核は「案を相手のそばを通して見せる」=決定前に反応をうかがうイメージ
- 正式な報告ではなく、「ちょっと確認」という打診の軽さがある
- run it by you のように something の位置に it / this idea を入れて使う
『BONES ―骨は語る―』S11E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。厳しいブレナンに一度叱られた新人インターンのミルズが、自分の発見を直接ブレナンに持っていく勇気が出ず、まず上司のカムに見てもらおうとします。カムは「ブレナンを怖がってはダメ」と諭しつつ、結局は所見を聞いてやる、面倒見のよい場面です。
Mills: I found fracturing on both olecranon processes of the ulnae.
(両方の尺骨の肘頭突起に骨折を見つけました。)Saroyan: And why are you showing me and not Dr. Brennan?
(それで、どうしてブレナン博士じゃなくて私に見せるの?)Mills: Well, I just wanted to run it by you. I mean, you’re the boss.
(その、ちょっと意見をうかがいたくて。ほら、ボスですから。)Saroyan: Ms. Mills, you can’t be afraid to go to Dr. Brennan.
(ミルズさん、ブレナン博士のところへ行くのを怖がってはダメよ。)BONES Season11 Episode16(The Strike in the Chord)
シーン解説と心理考察
注目したいのは、ミルズが「run it by you」という軽い言い回しを選んでいる点です。正式に「報告します(I’d like to report)」ではなく、「ちょっと見てもらいたくて」とぼかすことで、自分の発見にまだ確信が持てない新人の心細さが伝わってきます。本当はブレナンに見せるべきところを、まず安全な相手で下見しておきたい——その気持ちが言葉選びに表れています。
カムの返しも見どころです。「you’re the boss(ボスですから)」と立てるミルズに対し、カムは「ブレナンを怖がってはダメ」とやんわり背中を押す。新人の逃げ場になってあげつつ、本来向き合うべき相手から逃げないようにと導く、上司としての気づかいが感じられます。run by という軽い表現の裏に、職場の人間関係の機微がにじむ場面と言えます。
『BONES ―骨は語る―』流・覚え方のコツ
「run something by someone」は、自分のアイデアという車を、相手の机の前でゆっくり走らせて(run)、そばを通り過ぎ(by)ながら「どう? おかしくない?」と反応をうかがう様子をイメージすると覚えやすくなります。正式提出というゴールに突っ込む前の、いわば“試走”です。
劇中のミルズが、こわいブレナンに直接ぶつける前に、まずカムの前で自分の所見をそっと走らせてみる姿を思い浮かべてください。ゴールテープを切る手前で一度コースを試し走りする——その「決める前の軽い一周」の感覚ごと、「意見を聞く・通しておく」という意味を結びつけると定着します。
例文で覚える「run something by someone」
決定の前に、誰かの反応を軽くうかがいたいときに使える表現です。ビジネスから日常まで、3つの場面で見てみましょう。
Let me run this idea by you before the meeting.
(会議の前に、このアイデアをちょっと聞いてもらえる?)
正式な提案の前に、信頼できる相手へ事前相談する場面です。ビジネスで最もよく使われる形で、「決定前のひと声」を自然に表せます。
Run it by legal before you send the contract.
(契約書を送る前に、法務に確認を通しておいて。)
部署間の確認を指示する場面です。命令形にすると、「先に通しておけよ」という手順の指示として使えます。
A: Can I run something by you real quick?
B: Sure, what’s on your mind?
(A:ちょっとだけ相談していい?)
(B:いいよ、どうしたの?)
気軽に意見を求める会話です。something で中身をぼかして切り出すと、決めかねていることをそっと持ちかける、肩の力が抜けた前置きになります。
あわせて覚えたい関連表現
ask someone’s opinion
(〜の意見を聞く)
純粋に意見を求める、最も直接的な表現です。run by には「決定前に通しておく」「承認の感触を得る」という根回し的な含みも加わるのに対し、ask someone’s opinion は意見そのものを尋ねる点に重きがあります。
check with someone
(〜に確認を取る)
可否や事実を確かめるニュアンスの表現です。run by が自分の案や成果物を見せて反応を見る、能動的な“提示”であるのに対し、check with は相手に問い合わせて答えを得る点が違います。
bounce an idea off someone
(〜にアイデアをぶつけて反応を見る)
run by とよく似た、ややくだけた表現です。run by が確認・承認寄りなのに対し、bounce off はブレインストーミングや壁打ちのように、アイデアを試しにぶつけ合うニュアンスがより強くなります。
Note|英語圏の「事前に通しておく」打診の作法
run something by someone は、英語圏のビジネスの現場で驚くほど頻繁に耳にする表現です。その背景には、「事前に通しておく」という打診の作法があります。
英語圏の職場でも、いきなり正式な場で案を出すのではなく、関係者にあらかじめ run by して反応を確かめておくことは、大切なマナーとされています。会議で突然提案して相手の面子をつぶしたり、はしごを外されたりしないよう、先に「これ、通しておきますね」と一声かけておくわけです。これは日本でいう「根回し」と一見よく似ています。ただし、ニュアンスには違いがあります。日本の根回しが合意形成や全体の調和を重んじる傾向があるのに対し、英語圏の run by はあくまで個人どうしの率直なフィードバックのやり取りに近く、「あなたの意見を聞かせて」という対等な打診の色が濃いのが特徴です。相手も「いいんじゃない」「ここはこうした方がいい」と気軽に返す。この軽やかな“事前のひと声”の文化が、run by という表現の使われやすさを支えています。
劇中のミルズがカムに「run it by you」と切り出したのも、まさにこの「決める前に一度通しておきたい」心理からだと読めます。この作法を知っておくと、ビジネスシーンでの自然な使いどころが見えてきます。
ひと声かけておく習慣が、職場の信頼を静かに支えているわけです。
まとめ|新人インターンの相談から学ぶ「意見を聞く」
「run something by someone」は、アイデアや調べた内容を、正式に決める前に相手に軽く見せて反応をうかがう表現です。run と by が生む「案を相手のそばを通して見せる」イメージが核で、報告よりも軽い、打診の一言として使えます。
この表現を知っておくと、「決める前にちょっと意見を聞いておきたい」という、報告と相談のあいだのような場面を自然に切り出せます。劇中のミルズのように、本番の前にまず誰かに通しておきたいときの、心強い前置きになります。
決定前のひと声をスマートに添える表現として、表現の引き出しに加えてみてください。


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