海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
初対面の相手を見て、なんとなくこういうタイプだろうと当たりをつける。あとで話してみたら見当違いだった、という場面が誰にでもあるはずです。悪気はなくても、人はまず相手をどこかに置いてから話し始めてしまいます。
そんなふるまいを言い当てる「peg A for」を、『BONES』シーズン1第12話の序盤、ジェファソニアン研究所でホッジンスが同僚のザックに投げかけるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「peg A for」の意味とニュアンス
peg A for ~
意味:Aを〜だと決めつける、〜だと思い込む
ある人物を特定の型に当てはめて理解することを表します。peg はテントを地面に留める杭や、洗濯ばさみのような留め具を指す名詞。動詞になると、その位置に固定するという意味になります。
think と違うのは、判断が動かない点です。think なら考えを改める余地がありますが、peg は留めてしまう動作なので、相手をそこから動かさない前提が含まれます。地図にピンを刺すような固さがあります。
実際には have A pegged for/as ~ の形で使われることがほとんどです。過去の判断を振り返る文になりやすく、I had you pegged for ~ と言えば、決めつけていたけれど違ったらしい、という含みが自然に生まれます。
相手を否定する言葉ではありませんが、勝手に分類していたと認める言い方でもあります。
【ここがポイント!】
- 杭で留めるという動作から生まれた、人を型に固定する言い方
- have A pegged for の形が基本で、外れた判断を振り返る文脈に馴染む表現
- 決めつけた側が自分の見立てを明かす言い方なので、悪意なく響くのが特徴
『BONES』S01E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
路地で見つかった遺体のそばに、袋に入った物体が落ちていました。分析にかけたところ、正体は劣化した紙の束、つまりコミックだと判明します。それを報告したホッジンスに対し、助手のザックが自分は読まないと即座に否定したところから、短い応酬が始まります。
Zack: I never read comic books.
(僕はコミックなんて読みません)Hodgins: Really? I had you pegged for a graphic novel nut.
(本当か? てっきりグラフィックノベル好きだと思ってたよ)Zack: …Why?
(…どうしてです?)Hodgins: Star Wars, Star Trek, Stargate, Battlestar Galactica.
(スター・ウォーズ、スター・トレック、スターゲイト、宇宙空母ギャラクティカ)Brennan: Focusing, gentlemen.
(集中して、お二人とも)BONES Season1 Episode12 (The Superhero in the Alley)
シーン解説と心理考察
注目したいのは、ホッジンスが語をすり替えている点です。話題に出ていたのは comic book でしたが、ザックの見立てには graphic novel を当てています。子ども向けの読み物ではなく、もっと本格的なほうを読んでいると思っていた、という言い方になっています。
決めつけではあっても、そこには相手を上に見る気配があります。読まないと言われた瞬間に語を選び直したあたりに、この人物の器用さが表れています。
さらにおもしろいのが、理由を問われたときの答えです。作品名を四つ並べただけで、説明はありません。同じ話が通じる相手だと思っていた、という含みだけが残ります。二人のあいだの距離の近さが、この省略にそのまま出ています。そこへブレナンの一言が入り、脱線が打ち切られる流れも小気味よい場面です。
『BONES』流・覚え方のコツ
昆虫標本の箱を思い浮かべてみると、この表現の感触がつかめます。虫を愛するホッジンスの手つきで、ザックという人物が一本のピンで台紙に留められる。名札の下に置かれたら、もう動けません。
peg が指すのは、まさにその留め具です。テントを張るとき、布が風で飛ばないよう地面に打ち込む杭。相手を分類の中に打ち込んで、そこから動かないようにする。それが人に向けられたときの意味になります。
劇中でザックは、留められた場所から一言で抜け出しました。読まない、と言い切っただけです。ピンは刺されても抜ける。その情景ごと覚えておくと、この表現の輪郭が残ります。
例文で覚える「peg A for」
外れた見立てを振り返る言い方として登場することが多い表現です。3つの例文で確認していきましょう。
I had her pegged for a quiet type, but she runs the whole department.
(物静かな人だと思い込んでいたけれど、部署全体を仕切っている人だった)
第一印象との落差に驚いた場面です。but でつなぐと、見立てが崩れた流れがそのまま出ます。
Don’t peg me for a beginner just because this is my first week.
(今週が初日だからといって、初心者だと決めつけないでください)
評価を先回りされたときの切り返しです。命令形にすると、はっきりした拒否になります。
A: You brought your own tools?
B: Always. Why?
A: Honestly, I had you pegged for the type who’d borrow mine.
(A:自分の工具を持ってきたの?)
(B:いつもそうだよ。どうして?)
(A:正直、僕のを借りるタイプだと思ってた)
相手の意外な一面に触れた場面です。Honestly を添えると、決めつけを認める照れが混じります。
あわせて覚えたい関連表現
size someone up
(相手を値踏みする、品定めする)
観察して判断しようとしている最中の動きを表します。peg が固定された結論を指すのに対して、こちらは判断が定まる前の段階に焦点があります。
pigeonhole
(型にはめる、細かく分類する)
仕分け棚の小さな区画に押し込む動作が原義で、窮屈さがはっきり出ます。peg より否定的で、当てはめられた側の不自由さを訴える場面で選ばれます。
typecast
(役柄を固定する、同じ型の役ばかり当てる)
演劇や映画で、俳優を似た役に繰り返し起用することを指す語です。peg が個人的な思い込みなのに対して、こちらは周囲や業界の側が繰り返し固定していく動きになります。
Note|comic book と graphic novel を分けるもの
ホッジンスは comic book と言われたザックに対して、graphic novel という別の語を当てました。日本語ではどちらも漫画になりますが、英語圏ではこの二語が指すものが違います。
comic book が指すのは、薄い中綴じの定期刊行物です。二十数ページで一区切りとなり、続きは翌月号へ持ち越されます。スーパーヒーローものを中心に、書店ではなく専門店や売店で売られてきました。一方の graphic novel は、まとまった分量を一冊に収めた装丁のある本を指します。図書館や一般書店の棚に並び、書評の対象にもなります。作品によっては、複数の comic book をまとめ直したものがこの形で刊行されます。
違いは中身よりも、体裁と流通と受け取られ方にあります。同じ絵と文字の作品でも、薄い冊子として売られるか、背表紙のある本として棚に立つかで、読者から見た格が変わってしまう。graphic novel という呼び方が広まった背景には、この読み物を子ども向けの枠から出したいという書き手や版元の意識がありました。
そう考えると、ホッジンスの言い直しの意味が変わってきます。読まないと言われた瞬間に上の語へ移したのは、相手の知性に合わせた敬意の表明でもありました。決めつけを直すのではなく、決めつけの中身を格上げしてみせたわけです。
呼び名が変われば、置かれる棚も変わります。
まとめ|ピンは刺されても抜ける
peg A for は、相手をひとつの型に留めて理解することを表す言い方です。杭で固定するという動作が芯にあり、think よりも判断が動かない硬さがあります。実際には have A pegged for の形で、外れた見立てを振り返る場面に多く現れます。
この表現を知っていると、自分の見立てが外れたことを軽やかに認められるようになります。誤解していた、と重く言うかわりに、そう思い込んでいたと伝えるだけで、相手との距離が近くなる場面もあります。決めつけを認めることが、そのまま相手への関心を示す一手になるわけです。
誰かに置かれた場所から、読まないという一言だけで抜け出したザック。貼られたラベルは案外あっさり外れると言えます。


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