海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
自分のことを軽んじられたと気づいた瞬間、相手に怒鳴るのではなく、静かに身を引くことで毅然とした態度を示す。そんな大人の振る舞いが胸に残る場面が、ドラマには時々あります。
そんな一場面に登場する「be embarrassed by」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン10第8話の後半、ラージが好きになった相手の職業を仲間に偽っていたことが発覚するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「be embarrassed by」の意味とニュアンス
be embarrassed by
意味:(人や物事を)恥ずかしく思う、(〜のことで)きまりが悪い
embarrass は「(人に)恥ずかしい思いをさせる」という他動詞です。そのため「自分が恥ずかしい」と言いたいときは、be embarrassed と受動態にして「恥ずかしい思いをさせられている=恥ずかしい」と表します。
そして by 〜 を続けると、その恥ずかしさの原因が示せます。be embarrassed by someone なら「その人の存在や言動を恥ずかしく感じる」、be embarrassed by something なら「その物事できまりが悪い」という意味になります。日本語の「恥ずかしい」をそのまま能動態で表そうとして間違えやすいポイントで、英語では受動態が基本の形になる点を押さえておくと、表現がぐっと正確になります。
【ここがポイント!】
- embarrass は「恥をかかせる」他動詞、だから自分は受け身の be embarrassed
- by のうしろに「恥ずかしさの原因」(人・物事)を置くのが定番
- 日本語につられて能動態にしないのが、間違えないコツ
『ビッグバン★セオリー』S10E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
清掃員のイザベラに惹かれたラージは、見栄を張って仲間に彼女を「天文学者」と偽って紹介していました。そこへハワードが現れ、その嘘がうっかり露見します。自分の職業を恥じられていたと気づいたイザベラは、静かにその場を去ろうとします。
Isabella: You told him I was an astronomer?
(私のことを、天文学者だって彼に言ったの?)Isabella: It’s okay, Rajesh, I’m a grown woman. I don’t have to waste my time with someone who’s embarrassed by me.
(いいのよ、ラージ。私は大人の女だもの。私を恥ずかしいと思うような人に、時間を使う必要はないわ。)The Big Bang Theory Season10 Episode8(The Brain Bowl Incubation)
シーン解説と心理考察
イザベラの毅然とした態度が、この短い一言に表れています。怒鳴ったり責めたりするのではなく、「私を恥じるような人に、自分の時間は使わない」と静かに線を引くことで、彼女の自尊心の強さがにじむ場面です。
someone who’s embarrassed by me という言い回しが、恥の感情の原因が by 以下の「私(という存在)」にあることを、はっきりと示しています。ラージが恥じたのは彼女自身ではなく彼女の職業でしたが、イザベラはそれを「自分という存在を恥じられた」と受け止めています。清掃という仕事に誇りを持つ彼女にとって、それを隠されたことは尊厳に関わる問題だったと読み取れます。ラージの見栄が招いた気まずさと、それを大人の対応で受け流すイザベラの落ち着きの対比が、このシーンの見どころです。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
be embarrassed by は、矢印の向きをイメージすると覚えやすい表現です。embarrass は「恥をかかせる」という、外から自分に向かってくる矢印を持つ動詞です。その矢印を受け止める側が自分なので、be embarrassed と受け身になり、矢印の出どころを by のうしろに置きます。
劇中のイザベラは、embarrassed by me と言うことで、「恥ずかしさの矢印が、私という存在から出てラージに向かった」構図を言葉にしていました。「誰が恥ずかしさの原因なのか」を by の後ろで指し示す、この矢印の向きを意識すると、能動と受動の使い分けに迷わなくなります。イザベラが静かに去る背中と一緒に、「by の後ろ=原因」と覚えておきましょう。
例文で覚える「be embarrassed by」
be embarrassed by は、身近な人や出来事に対する気まずさを表す場面で活躍します。3つの例文で使い方の幅を見ていきましょう。
He was embarrassed by his father’s loud jokes at the party.
(彼はパーティーでの父親の大声の冗談が恥ずかしかった。)
身内の言動が恥ずかしい場面です。by のうしろに「恥ずかしさの原因」を置く、もっとも基本的な形です。
She felt embarrassed by the mistake in front of her boss.
(彼女は上司の前でのミスが恥ずかしかった。)
職場での失敗の場面です。feel embarrassed by の形にすると、「その時に感じた」気まずさを生き生きと描けます。
A: Aren’t you embarrassed by where you grew up?
B: Not at all—I’m proud of where I come from.
(A:育った場所が恥ずかしくないの?)
(B:全然。自分の出身地を誇りに思ってるよ。)
出自について問われたときの会話です。否定文で答えることで、「恥じてなどいない」という自尊心を、イザベラのようにはっきりと示せます。
あわせて覚えたい関連表現
be ashamed of
(〜を恥じる)
ashamed of は、より深く道徳的・人格的な「恥」を表します。社交的で一時的なきまりの悪さを指す embarrassed by より、感情が重く、罪悪感に近い響きを持ちます。
be humiliated by
(〜に屈辱を受ける)
humiliated は、人前で尊厳を傷つけられる強い屈辱を表します。embarrassed by のきまりの悪さよりもずっと深刻で、痛みを伴う感情です。
be self-conscious about
(〜を気にして恥ずかしがる)
self-conscious about は「人目が気になって落ち着かない」継続的な心理状態を指します。特定の原因に対する具体的な恥の感情である embarrassed by とは、感情の性質が異なります。
Note|embarrassed / ashamed / humiliated の恥の深さ
be embarrassed by を調べると、似た意味の ashamed や humiliated との違いが気になってきます。どれも「恥」に関わりますが、感情の深さと原因が違います。
整理の鍵は「恥の重さ」と「原因の種類」です。embarrassed は、人前でのちょっとした失敗や気まずさを指す、もっとも軽い恥です。服のタグが出ていた、人の名前を間違えた、といった日常の小さなバツの悪さがこれにあたります。ashamed は、もっと深く、自分の行いや人格そのものに対する道徳的な恥で、罪悪感に近い感情です。嘘をついたことを ashamed と表せば、良心が痛んでいる重さが伝わります。そして humiliated は、人前で尊厳を踏みにじられたときの強い屈辱で、3語の中でもっとも痛みが大きい言葉です。たとえば、大勢の前でひどく叱責されて立つ瀬がなかった、というような場面で使われます。同じ「恥ずかしい」でも、軽いきまり悪さから深い屈辱まで、英語はこの3語で段階を細かく描き分けているわけです。
劇中のイザベラが使ったのは embarrassed by でした。ラージの行為は彼女を humiliated(屈辱)させるほど攻撃的ではなく、「恥ずかしく思われた」という embarrassed のレベルにとどまっています。それでも彼女が静かに身を引いたのは、その軽い恥の奥にある「軽んじられた」という尊厳の問題を、彼女自身が見抜いていたからだと読み取れます。
恥の言葉は、その深さで選び分けられます。
まとめ|イザベラの背中が教えてくれること
be embarrassed by は、embarrass という「恥をかかせる」他動詞を受け身にして、「自分が恥ずかしい」と表す形です。by のうしろにその原因を置けば、何を、あるいは誰を恥ずかしく感じているのかまで、正確に伝えられます。
日本語の「恥ずかしい」をそのまま能動態にしてしまう間違いを避けられると、感情を伝える英語がぐっと自然になります。身内の言動から自分の失敗まで、日常のさまざまな気まずさを、この受動態の形ですくい取れます。
自分を恥じる相手に時間は使わない、と静かに言い切ったイザベラの背中に、軽い恥の言葉の奥にある尊厳が、そっと透けて見える場面でした。


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