海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手ががっかりするとわかっている話を、どう切り出そうかと言葉を選んでためらった経験はありませんか。
そんなときに使える「break it to someone」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン10第17話の冒頭、お金にルーズなラージの家計を仲間たちが立て直そうとする場面から、一緒に見ていきましょう。
「break it to someone」の意味とニュアンス
break it to someone
意味:(言いにくいこと・悪い知らせを)相手に切り出す、告げる
break it to someone は、相手がショックを受けたり残念がったりするであろう知らせを、配慮しながら伝えることを表します。ただ事実を伝える tell とは違い、「相手が傷つく前提で、衝撃をやわらげながら口にする」という気づかいがにじむ表現です。
近い言い回しに break the news to someone(知らせを伝える)があり、こちらは「知らせ」という言葉を表に出す分、break it to someone はより口語的で、その場の文脈で内容を受けます。gently break it to someone(やんわり切り出す)のように副詞を添えることも多く、解雇の通告、別れ話、不合格の連絡など、言う側にも少し勇気がいる場面で登場する言葉です。
【ここがポイント!】
- 核は「相手が傷つく知らせを、衝撃をやわらげて割って渡す」イメージ
- 単なる tell と違い、聞き手への配慮がにじむのが特徴
- gently を添えたり break the news の形にしたりと、応用が利く一言
『ビッグバン★セオリー』S10E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
借金まみれのラージの家計を、シェルドンたちが容赦なく仕分けしていく場面です。ラージがLAの動物園のペンギンにスポンサー料を払っていることが判明し、シェルドンが「予算を組んでラージに守らせるのは楽しそうだ」と毒づいた直後、ペニーがこの一言を挟みます。
Sheldon: Although I would enjoy drawing up a budget and forcing Raj to adhere to it without an ounce of compassion.
(とはいえ、予算を組んでラージに一片の情けもなく守らせるのは、楽しめそうだけどね。)Penny: Wait, wait, who’s gonna break it to the penguin?
(待って待って、誰がペンギンに切り出すの?)Raj: Okay, Sheldon. Yeah, I’m putting you in charge of my finances.
(わかったよ、シェルドン。うん、僕の財布は君に任せる。)The Big Bang Theory Season10 Episode17(The Comic-Con Conundrum)
シーン解説と心理考察
シェルドンが家計のムダを一つずつ切り捨てていく中で飛び出した、ペニーらしい軽口です。スポンサーを打ち切られるのはペンギンなのに、「誰がペンギンに break it to するの?」と、まるで人間に別れ話を告げるかのように扱うズレが、この一言の可笑しさになっています。
break it to someone が本来持つ「相手を気づかって悪い知らせを伝える」という重みを、相手が言葉のわからない動物だという一点でずらして笑いに変えている構図が見どころです。深刻になりかけた家計の話に、ペニーが横から空気をゆるめる役割を果たしているのも伝わってきます。シリアスな単語を、あえて場違いな相手に向けることで生まれるユーモアが、このグループの会話らしさとして表れています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
break は「割る・壊す」が基本の意味です。重い知らせを一気にぶつけると相手の心が壊れてしまうので、硬い殻をそっと割って、中身を少しずつ手渡すような動作をイメージしてみてください。
このシーンでは、スポンサー解消という知らせを「ペンギンにどう break するか」という、ちょっと笑える絵で出てきました。言いにくいことを切り出す=break it という結びつきを、ペニーのボケとセットで思い浮かべると意味が残りやすくなります。殻をそっと割った先で、契約打ち切りを告げられてしょんぼりするペンギン──その一コマまで思い描けば、break it to someone はもう忘れません。
例文で覚える「break it to someone」
言いにくい知らせを切り出す場面で使える表現です。日常からビジネスまで、3つの場面で見てみましょう。
I don’t know how to break it to him that he didn’t get the job.
(彼が採用されなかったことを、どう切り出せばいいか分からない。)
友人や同僚の不採用を本人に伝える役回りになった場面です。how to break it to ~ で「どう切り出すか」と悩む気持ちがそのまま表せます。
The manager had to break the bad news to the whole team.
(マネージャーはチーム全員に悪い知らせを告げなければならなかった。)
プロジェクト中止やリストラなど、職場で重い連絡をする場面です。break the bad news to ~ の形も、break it to と同じ気づかいのニュアンスで使えます。
A: Someone has to tell her the trip is canceled.
B: I know. I’ll break it to her gently.
(A:旅行が中止になったこと、誰かが彼女に言わないと。)
(B:わかってる。私がやんわり切り出すよ。)
楽しみにしていた予定の中止を伝える場面です。gently を添えると、相手を気づかいながら伝える優しさが前面に出ます。
あわせて覚えたい関連表現
break the news (to someone)
((主に重大な)知らせを伝える)
break it to someone とほぼ同じ意味で、it の代わりに the news を置いた形です。it はその場の文脈で内容を受けるのに対し、break the news は「知らせ」という言葉を明示する分、ややあらたまった響きになります。
let someone down easy
(相手を傷つけないよう、やんわり断る)
break it to が「告げる」行為そのものを指すのに対し、こちらは「失望させ方をやわらげる」配慮の部分に焦点があります。告白を断るような場面で、break it to と組み合わせて使われることもあります。
drop a bombshell
(衝撃的な事実を突然ぶつける)
配慮しながら伝える break it to とは逆に、相手の心構えができていないところに爆弾を落とすイメージです。対になる表現として並べて覚えると、break it to の「やわらげる」性格がより際立ちます。
Note|break が「割る」から「伝える」へ広がった道筋
break it to someone の break は、なぜ「割る」なのに「伝える」の意味になるのでしょうか。この一語の広がりをたどると、ニュースをめぐる英語表現の面白さが見えてきます。
break はもともと「硬いものを割る・壊す」が基本の意味です。そこから「閉じていたものを開いて中身を外に出す」という発想が生まれ、隠れていた事実を明るみに出す、つまり「公にする・初めて伝える」という意味へ広がっていったとされています。報道の世界で使う break a story(特ダネを報じる)や breaking news(速報)も、この「閉じていた情報の殻を割って世に出す」イメージの延長線上にあると言われています。break the news、break it to someone も同じ流れに位置づけられ、とりわけ「相手にとって重い情報の殻を、そっと割って渡す」という気づかいの色を帯びていきました。
こう見ていくと、break it to someone が単なる「伝える」ではなく、「閉じていた事実を、相手を気づかいながら開いて見せる」表現だということが腑に落ちます。シーンでペニーが使った break it も、ペンギンにとっての重い知らせ、という前提を一瞬で立ち上げていたわけです。
割るという動作の奥に、知らせを手渡す気づかいが隠れている言葉です。
まとめ|ペニーのボケから学ぶ「切り出す」一言
break it to someone は、相手が傷つくとわかっている知らせを、衝撃をやわらげながら切り出す表現です。同じ「伝える」でも、聞き手への配慮があるかどうかで tell とは選ばれる言葉が変わってきます。
この一言が引き出しにあると、言いにくい連絡を任されたときに「どう切り出そうか」という気持ちまで含めて、自然な英語で表せるようになります。gently を添えたり、break the news の形にしたりと、場面に合わせて表情を変えられるのも心強いところです。
深刻な家計の話に、ペンギンへの気づかいまで重ねて笑いに変えてみせた、ペニーの軽やかな一言とともに覚えておきたい表現です。


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