海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
何を言っても聞く耳を持ってもらえなくて、「この件に関してはもう諦めるしかないな」と肩をすくめた経験はありませんか。
そんなときにぴったりの「a lost cause」を、『BONES』シーズン11第21話の中盤、映画の話題でブレナンに通じないとわかったブースが、苦笑まじりにつぶやくシーンから、一緒に見ていきましょう。
「a lost cause」の意味とニュアンス
a lost cause
意味:見込みのないもの/努力しても無駄な人・事柄
直訳すると「失われた大義」。もともと cause には「主義・大義・運動」という意味があり、勝ち目のなくなった運動や、支持しても報われない取り組みを指す言葉でした。そこから転じて、「もう挽回の余地がない人・物・状況」を表す日常表現として広く使われています。
人に対して使えば「あの人に言っても無駄」、物事に対して使えば「この計画はもう望み薄」というニュアンスになります。深刻な断念にも、軽い冗談めかしたお手上げにも使える幅の広さが特徴です。トーン次第で、突き放しにも親しみのあるからかいにもなります。
【ここがポイント!】
- 核は「失われた大義」、勝ち目・挽回の余地がないというイメージ
- 人にも物事にも使える、深刻な断念から軽口まで幅広く対応する表現
- 言い方次第で突き放しにも愛あるからかいにもなる、トーンを読むのがコツ
『BONES』S11E21のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ホッジンズが映画『ピンクパンサー』のクルーゾー警部のモノマネを披露しますが、ブレナンはその元ネタの映画をまったく知りません。映画に疎いブレナンに、ブースが「もう諦めろ」とばかりに軽く匙を投げる、コンビの息の合った掛け合いが楽しい場面です。
Booth: Don’t bother. She’s a lost cause.
(やめときな。彼女はお手上げなんだよ)Brennan: In terms of movies, I mean.
(映画に関しては、ということだけれどね)Bones Season11 Episode21(The Day in the Life)
シーン解説と心理考察
ここでの a lost cause は、けっして冷たい言葉ではありません。ブースの「やめときな」には、長年の相棒だからこそ言える、親しみのこもった呆れが混じっています。映画の教養に関してブレナンに何を言っても通じない――それを毛嫌いではなく、半ば微笑ましいものとして受け止めているトーンが伝わってきます。
さらに面白いのは、ブレナン自身が「映画に関しては、ね」と冷静に補足するところです。自分が a lost cause だと言われても気を悪くするどころか、適用範囲を律儀に限定してみせる。この理屈っぽい返しが、彼女らしさを際立たせています。同じ a lost cause でも、突き放しではなく、互いの違いを認め合うコンビの空気が見どころと言えます。
『BONES』流・覚え方のコツ
旗を立てて戦っていた軍勢が、もう勝てないと悟って旗を下ろす――そんな「降りる」イメージを思い浮かべてみてください。cause(大義)が lost(失われた)状態、つまり「これ以上推し進めても勝ち目がない」という構図が、a lost cause の骨組みです。
ブースがブレナンに匙を投げる場面を重ねると、この表現の「もう手を引く」感覚がつかめます。ただしブースの口調には呆れと親しみが同居していました。降ろした旗を、怒ってではなく苦笑しながら畳む――そのニュアンスごと覚えると、冷たい言葉にならずに使えます。
例文で覚える「a lost cause」
人にも計画にも使える便利な表現です。突き放す言い方から、軽いお手上げまで、3つの例文で温度差を感じてみましょう。
After three failed attempts, he decided the project was a lost cause.
(3度失敗して、彼はその計画はもう望み薄だと判断した。)
ビジネスや作業の場面で、「これ以上やっても無駄」と見切る使い方です。
Don’t waste your energy. Convincing him is a lost cause.
(労力の無駄だよ。彼を説得するのはお手上げさ。)
人を説得しきれない状況で使う定番の形。「言うだけ無駄」というニュアンスが出ます。
A: I’m trying to get my dad to use his new smartphone.
B: Honestly, that might be a lost cause.
(A:父に新しいスマホを使わせようとしてるんだ。)
(B:正直、それはお手上げかもしれないね。)
日常会話で、軽い冗談めかしたお手上げを表す使い方です。
あわせて覚えたい関連表現
a hopeless case
(見込みのない事例、どうしようもないケース)
a lost cause と意味はほぼ重なりますが、case は「事例・症例」寄りで、人の性質を半ば諦め気味に評する場面で使われます。
beyond help
(もう助けようがない)
こちらは「手の施しようがない」という到達点を示す表現。a lost cause が「大義」起点なのに対し、help 起点で同じ断念を表します。
a long shot
(成功する見込みの薄い試み、一か八か)
a lost cause が「ほぼ諦め」なのに対し、a long shot は「望みは薄いがゼロではない」点が違います。諦めの度合いを対比で覚えられます。
Note|「cause(大義)」から見る lost cause
a lost cause を理解する鍵は、cause という単語の意外な語義にあります。私たちが「原因」と覚えがちな cause には、「主義・大義・人々が支持する運動」という、まったく別の顔があります。
cause が「大義」を意味するとき、それは誰かが信念をもって支える目標を指します。社会運動、政治的な主張、守りたい価値――そうした「掲げて戦うもの」が cause です。a lost cause は文字どおり、その大義が「失われた=もはや勝てない」状態を表します。歴史的には、敗北が決まった政治運動や、支持しても報われない取り組みを指して使われてきました。つまり、もとは壮大なスケールの言葉だったのです。それが日常へ下りてくる中で、「説得できない人」「立て直せない計画」といった身近な場面にも広がりました。背景に「掲げた旗を下ろす」というドラマチックな構図があると知ると、ただの「無理」とは違う、どこか潔い断念のニュアンスが見えてきます。
ブースがブレナンに「お手上げだ」と言うとき、そこには映画教養という小さな「大義」を、もう追わないと決めた潔さがにじんでいます。語源を知ると、軽口の奥にある含みまで味わえます。
掲げた旗を下ろす――その情景ごと覚えたい表現です。
まとめ|ブースの匙投げから学ぶ「お手上げ」の一言
a lost cause は、「失われた大義」という成り立ちから「もう見込みがない人・事柄」を表すようになった表現です。深刻な断念にも、親しみを込めた軽いお手上げにも使える幅広さが魅力です。
この一言を知っておくと、「説得しても無駄」「立て直せない」という状況を、ひと言で潔く言い表せるようになります。長い説明を重ねずに、諦めのニュアンスまで伝えられます。
突き放しにも愛あるからかいにもなるこの表現を、トーンを意識しながら表現の引き出しに加えてみてください。


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