海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
頼みの綱が断たれて、進むことも戻ることもできない――そんな「もうお手上げ」の状況に追い込まれた経験はありませんか。
そんな窮地を表す「up the creek without a paddle」を、『CHUCK』シーズン2第4話の中盤、値引き販売の大失敗で店が大赤字を出し、モーガンが挽回策を募るシーンから、一緒に見ていきましょう。
「up the creek without a paddle」の意味とニュアンス
up the creek without a paddle
意味:お手上げの窮地に陥って、万事休すで、打つ手がなくて
creek(小川)を up(上流へ)進もうとしているのに、漕ぐための paddle(パドル・櫂)がない――進むことも戻ることもできない、completely stuck な状況を描いたイディオムです。
「打つ手がない・どうにもならない」というお手上げ感が核にあります。be up the creek without a paddle、get up the creek without a paddle のような形で使われ、トラブルで身動きが取れなくなった場面、頼みの綱が断たれた場面で登場します。後半の without a paddle を省いて、up the creek だけでも同じ意味で通じます。深刻な状況を表しつつ、どこかユーモラスで口語的な響きを持つのも、この表現の持ち味です。
【ここがポイント!】
- パドルなしで川に浮かぶ=進めず戻れず、が核のイメージ
- 「打つ手がない・万事休す」という強いお手上げ感を表す
- without a paddle を省いて up the creek だけでも通じるのがコツ
『CHUCK』S02E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
新任の店長代理レスターが打ち出した「お客と値段を交渉する」販売方針が大失敗し、Buy More が大赤字を出してしまった場面です。取り乱すレスターに代わり、モーガンが店員たちを集めて挽回策を募ります。本来の下品なイディオムを、少し上品に言い換えたコミカルなセリフに注目です。
Lester: But no matter how many times I crunch the numbers, we’re still out 2,700 bucks.
(でも何度計算し直しても、まだ2,700ドルの赤字なんだ。)Morgan: All right, come on. Pull yourself together here, man. All right, everybody, listen up. We are up excrement creek without a paddle. So we’re just looking for a few ideas to make a lot of cash by tonight. Any ideas?
(よし、しっかりしろ。みんな、聞いてくれ。俺たちは完全に万事休すだ。だから今夜までに大金を稼ぐアイデアを探してる。何か案は?)Chuck Season2 Episode4(Chuck Versus the Cougars)
シーン解説と心理考察
モーガンの “We are up … creek without a paddle” には、絶望的な状況を率直に認めつつ、それでも打開策を探そうとする彼の前向きさが表れています。直前の “Pull yourself together”(しっかりしろ)でレスターを立て直し、すぐに全員へ号令をかけるテンポの良さが、場の空気を切り替えています。
普段は頼りないモーガンが、こういう局面で妙にリーダーシップを発揮するギャップが、このシーンの可笑しさを生んでいます。そして本来 up shit creek という下品な形のイディオムを、わざわざ excrement(排泄物)と言い換えているのも見どころです。窮地を宣言する深刻なセリフに、ほんのり上品ぶった言い換えが混じることで、コメディとしての軽やかさが会話の温度を変えています。
『CHUCK』流・覚え方のコツ
小川(creek)に浮かんだボートに、自分が乗っている場面を思い描いてください。流れに逆らって上流(up)へ進みたいのに、手元を見るとパドルがない――漕げないから前に進めず、ただ流されるばかり。この「進むことも戻ることもできない」絵が、そのまま「お手上げ・万事休す」の意味になります。
劇中では、赤字という「流れ」に押し戻される店員たちが、まさにパドルを失ったボートの乗組員です。モーガンが「俺たちはパドルなしで川にいる」と宣言してから、全員で必死に「パドル(=挽回策)」を探し始める――その構図ごと覚えると、忘れにくくなります。
例文で覚える「up the creek without a paddle」
ピンチを率直に言い表したいときに使えるのが、このフレーズです。3つの例文で、未来形・短縮形・会話での使い方を見ていきましょう。
If we miss this train, we’ll be up the creek without a paddle.
(この電車に乗り遅れたら、もうお手上げだ。)
予定が崩れそうな緊迫した場面です。will be up the creek ~ の未来形で「そうなったら万事休す」と警告する、使いやすいパターンです。
Without the backup files, the whole team was up the creek without a paddle.
(バックアップファイルがなければ、チーム全体がお手上げだった。)
仕事のトラブルをふり返る場面です。劇中の「打つ手がない」状況に近い、ビジネスでの定番の使い方です。
A: Did you ever get your laptop fixed before the deadline?
B: Nope. I was totally up the creek.
(A:締め切り前にノートパソコン直せたの?)
(B:いや。完全にお手上げだったよ。)
トラブル談を語る会話です。without a paddle を省いた up the creek だけの短縮形で、これでも十分に通じます。
あわせて覚えたい関連表現
in deep water
(苦境に陥って、深刻な問題を抱えて)
同じ「水」の比喩ですが、こちらは「手に負えない深刻な状況」全般を指します。up the creek without a paddle が「打つ手がない手詰まり感」をより具体的に描くのに対し、in deep water は危うさそのものに重きがあります。
in a tight spot
(窮地に立って、にっちもさっちもいかなくて)
一般的な「困った状況」を表す中立的な表現です。up the creek without a paddle のほうが比喩が鮮やかで、ユーモラスで口語的な響きを持ちます。
at one’s wit’s end
(途方に暮れて、知恵が尽きて)
「もう打つ手の知恵が尽きた」という心理面の困り果てを強調します。up the creek without a paddle が状況そのものの行き詰まりを指すのに対し、こちらは本人の心境に焦点が当たります。
Note|下品語をやわらかく言い換える minced oath
劇中でモーガンは “up excrement creek without a paddle” と言っています。実はこのイディオム、本来はもっと下品な up shit creek という形で広まったもの。モーガンはその shit を excrement(排泄物)という硬い言葉に言い換えて使っているのです。
英語には、下品・冒涜的とされる語を、響きの似た穏当な語にすり替える「婉曲(minced oath)」の文化があります。たとえば shoot は shit の、darn は damn の、gosh は God の言い換えとして使われてきました。テレビや人前など、強い言葉を避けたい場面でこうした言い換えが選ばれます。モーガンの excrement も、本来の下品なイディオムを「ちょっと上品ぶって」言い換えた一種の minced oath で、深刻な窮地の宣言にコメディらしいおかしみを添えています。汚い言葉をそのまま使わず、あえて遠回しに上品ぶるところに、キャラクターの愛嬌がにじみます。
この言い換えの仕組みを知っておくと、劇中のセリフが「なぜそこで excrement なのか」まで含めて楽しめます。
強い言葉を避ける工夫が、笑いに変わっているのですね。
まとめ|「万事休す」を一言で
up the creek without a paddle は、「進むことも戻ることもできない、お手上げの窮地」を、パドルを失ったボートの絵で鮮やかに言い表す表現です。in a tight spot のような中立的な言い方より、比喩の力でピンチの深刻さとおかしみを同時に伝えられます。
頼みの綱が断たれたとき、トラブルで身動きが取れなくなったとき、この一言があれば、状況の行き詰まりをユーモアごと言葉にできます。without a paddle を省いて up the creek だけでも通じる、という気軽さも覚えておくと便利です。
「もうお手上げ」と言いたい場面を思い浮かべながら、表現の幅を広げてみてください。
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※配信状況は変更される場合があります(2026年5月時点)


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