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手強い相手が二人で口裏を合わせている。まとめて相手にしても崩せないとき、どうするか——答えは驚くほど単純です。
そんなときに使えるのが「divide and conquer」、分断して各個撃破するという表現です。『BONES』シーズン1第3話から、ブースが容疑者の生徒たちをどう崩すか立案する場面をもとに、一緒に見ていきましょう。
「divide and conquer」の意味とニュアンス
divide and conquer
意味:分断して攻略する、手分けして片づける
divide は「分ける」、conquer は「征服する」。結束した相手を小さく分けることで、まとめて相手にするより容易に攻略するという戦略を指します。
もともとは軍事や政治の言葉ですが、現代では意味の幅がかなり広がっています。使われ方は大きく二つに分かれます。
一つは本来の戦略的な用法です。結託した相手を切り崩す、団結を壊して弱体化させるという文脈で、否定的な響きを伴います。Management used divide and conquer to break up the union.(経営陣は分断策で組合を切り崩した)のような使い方がこれにあたります。
もう一つが、日常での用法です。大きな仕事を分担して片づけるという意味で、こちらには攻撃的な含みがまったくありません。Let’s divide and conquer.(手分けしよう)は、大掃除でも引っ越しでも使える気軽な一言です。
同じ表現が、組合潰しにも家の片づけにも使われる。その振れ幅の大きさが、この言葉の特徴になっています。
【ここがポイント!】
- 束ねた棒は折れないが、一本ずつなら折れる——この一枚の絵が核
- 「相手を切り崩す」戦略的用法と「手分けする」日常用法の二つがある
- 日常用法には攻撃的な含みがない、と押さえておくのがコツ
『BONES』S01E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
名門私立校の生徒が遺体で発見された事件。捜査線上に浮かんだ二人の生徒は、互いの証言で守り合っています。手詰まりに見えた状況で、ブースが口にした作戦は、彼自身の出自と結びついたものでした。
Brennan: What do we do now?
(これからどうするの?)Booth: Well this is where a public school education comes in handy. Divide and conquer was the playground motto.
(こういうときこそ公立校仕込みが役に立つ。分断して攻略——校庭の鉄則だ)Bones Season1 Episode3(A Boy in the Tree)
シーン解説と心理考察
このセリフの妙味は、ブースが作戦をどこから引いてきたかにあります。FBI の捜査手法としてでも、訓練で習った技術としてでもない。彼はそれを playground motto、つまり子どもの遊び場の鉄則として語ります。
ここには反転があります。ブースはこの回を通して、名門私立校の特権性に不信を向け続けてきました。学校とつながった有力者たちが捜査を動かそうとする構造の中で、彼は一貫して外側に立たされる側でした。ところがこの場面で、彼は自分の公立校出身という出自を、引け目としてではなく武器として差し出します。
comes in handy(役に立つ)という言い方が、その反転を軽やかに支えています。特権の側が持っていないものを、自分は持っている——そう力んで言い切るのではなく、こういうときに役立つんだ、と肩の力を抜いて示す。ブースという人物の構え方が、この一言によく表れています。
古代からの戦略用語が、校庭の話として口にされる落差も、この場面の可笑しさを作っています。
『BONES』流・覚え方のコツ
束ねた棒を折ろうとする場面を思い浮かべてください。何本もまとめて握られていると、どれだけ力を込めても折れません。ところが一本ずつ抜き出せば、あっけなく折れていきます。
このシーンで束ねられているのは、口裏を合わせている二人の生徒です。同じ部屋にいる限り、互いの話を確かめ合えるので崩れません。別々の部屋に分けた瞬間、それぞれが相手の証言を知らないまま話すことになり、食い違いが表に出ます。
ブースがこれを「校庭の鉄則」と呼ぶのも、記憶の助けになります。難しい戦略用語ではなく、子どもが遊び場で自然に覚える程度の単純な原理。divide(分ける)と conquer(攻略する)という二語の直球さが、そのまま意味になっていると腑に落ちます。
例文で覚える「divide and conquer」
日常用法と戦略的用法、両方を見ていきましょう。
Let’s divide and conquer — you take the kitchen, I’ll do the garage.
(手分けしよう。君はキッチン、僕はガレージ)
大掃除や引っ越しで分担を決める場面です。日常でのこの用法には、攻撃的な含みは一切ありません。
Management used divide and conquer to break up the union.
(経営陣は分断策で組合を切り崩した)
本来の戦略的な意味が出る使い方です。報道調の文脈では、この否定的な響きが前面に出ます。
A: Twelve boxes and we’re out of time.
B: Divide and conquer. You start upstairs, I’ll take this floor.
(A:段ボール12箱、もう時間がない)
(B:手分けしよう。上の階から始めて、こっちはこの階をやる)
締め切りに追われる場面での会話です。名詞句として単独で投げると、作戦を宣言する一言として機能します。
あわせて覚えたい関連表現
break it down
(細かく分解する)
複雑なものを扱いやすい単位に分ける表現です。対象は問題やタスクで、divide and conquer のような「相手を崩す」含みはありません。
play both sides against each other
(両者を争わせる)
分断したうえで、互いに対立させることを指します。divide and conquer より積極的に相手同士をぶつける策略性が強く出ます。
one at a time
(一つずつ、一人ずつ)
順に処理するという手順だけを示す表現です。戦略性はなく、divide and conquer の「分けてから当たる」のうち後半だけを取り出した形になります。
Note|public school は英米で意味が真逆になる
ブースのセリフに出てくる a public school education は、文脈から明らかなとおり「公立校で受けた教育」を指します。名門私立校を舞台にしたこの事件で、彼は自分が公立校出身であることを持ち出しているわけです。
ところが、この語をイギリス人が聞くと、まったく違うものを思い浮かべます。イギリス英語の public school が指すのは、名門私立校の方だからです。イートン校やハロー校といった、まさにハノーバー・プレップのような学校がそれにあたります。同じ語が、大西洋を挟んで正反対を意味する。学習者が最も足をすくわれる語の一つです。
なぜこうなったのか。ブリタニカ百科事典は、この語が18世紀に現れたと説明しています。一部のグラマースクールの評判が地元を越えて広まり、寄宿費を払える家庭の子弟を受け入れるようになった。その結果、地元の子だけが通う local な学校に対して、public な学校と呼ばれるようになったという経緯です。
つまりここでの public は、「誰でも入れる」ではなく「地元に限られない」という意味でした。ウィキペディアの記述はさらに踏み込み、住む土地・宗派・親の職業といった属性を問わずに門戸が開かれていた点を public の内実として挙げています。開かれているという看板を掲げたまま、その中身は次第に階級と結びつき、結果として最も閉じた学校を指す語になりました。一方アメリカでは、public が文字どおり「公費で運営される」の意味で定着し、公立校を指すようになります。
この違いを知ると、ブースのセリフが二重に読めてきます。アメリカ人の彼が public school education と言うとき、それは特権の対極にある育ちを意味します。けれど同じ音を、イギリス英語の耳で聞けば、それはハノーバー・プレップ側の言葉になる。同じ二語が、階級のどちら側にも立てるということです。
言葉が指すものは、それを使う社会の形に沿って決まります。
まとめ|校庭で覚えた鉄則が、捜査を動かす
divide and conquer は、結束した相手を分けることで攻略しやすくする表現です。組合を切り崩すような戦略的用法と、大掃除を手分けするような日常用法の両方を持ち、後者には攻撃的な含みがありません。
この一言が使えるようになると、大きな課題を前にしたときの構え方を、英語で一言で示せるようになります。仕事でも家事でも、束ねられたものを解く発想は同じです。
ブースが校庭で覚えた鉄則は、名門校の生徒たちを前にしても通用しました。単純な原理ほど、場所を選ばずに効くのかもしれません。表現の引き出しに加えてみてください。


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