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『フレンズ』シーズン1第22話では、キャロルの出産に備えて、ロスが新しいポケベルを持ち歩くようになります。ところが、そのポケベルには別の人あての呼び出しも次々と届きます。
ポケベルはどう呼ばれ、どう使われていたのか。電話番号をアルファベットで表すとはどういうことか。放送当時の通信機器をめぐる3つの場面を手がかりに、文化と英語を順に見ていきます。
「It’s my new beeper.」作中のポケベルと呼び出しの英語
カフェのセントラルパークで、ポケベルが鳴ったロスに、レイチェルが声をかけます。
Rachel: What are you playing with?
(何いじってるの?)
Ross: It’s my new beeper.
(新しいポケベルだよ。)
Joey: Why does a paleontologist need a beeper?
(なんで古生物学者がポケベルなんか要るんだよ?)
Friends Season1 Episode22(The One with the Ick Factor)
beeper は「ピーッ」と鳴る音の beep から来た呼び名で、同じ機械は pager とも呼ばれます。日本語のポケベルにあたるもので、呼び出しを受けるための小さな端末です。この回の放送は1995年で、ロスはこの機械を「新しい」持ち物として見せています。
恐竜の緊急事態用なのかとからかうモニカに、ロスはこう説明します。
Ross: No. It’s for when Carol goes into labor. She can get me wherever I am.
(違うよ。キャロルが産気づいたとき用なんだ。俺がどこにいても連絡がつく。)
Ross: All she has to do is dial 55-JIMBO.
(55-JIMBO にかけるだけでいいんだ。)
Chandler: A cool phone number and a possible name for the kid.
(かっこいい電話番号だし、子どもの名前の候補にもなるね。)
Friends Season1 Episode22(The One with the Ick Factor)
get は「つかまえる」から転じて、ここでは「(人に)連絡をつける」という意味です。電話で相手につながったときの I finally got him.(やっと彼と連絡がついた)と同じ使い方になります。wherever I am は「どこにいても」で、持ち歩く端末ならではの言い方と言えます。
ポケベルで呼び出されることは、受け身の形で be beeped と言います。作中の別の場面でも、ロスはこの言い方を使って電話をかけ直しています。呼び出しが届いたら、こちらから電話をかけて用件を聞く、という使い方がこのやりとりからうかがえます。
「Jumbo with a “U”」文字で覚える電話番号
別の場面では、カフェのセントラルパークでジョーイと話していたロスのポケベルが鳴ります。赤ちゃんが生まれると思って声を上げたロスを、ジョーイが落ち着かせ、ロスは携帯電話でかけ直します。
Ross: Yeah, hi. I was just beeped.
(ああ、どうも。今呼び出しがあったんですが。)
Ross: No. Andre is not here.
(いえ、アンドレはいません。)
Ross: Third time today.
(今日これで3回目だ。)
Friends Season1 Episode22(The One with the Ick Factor)
最後の一言は、電話の相手ではなくジョーイに向けたものです。電話の相手とのやりとりのあと、ロスはこう伝えます。
Ross: Yeah, you want 55-JUMBO.
(ええ、おかけになりたいのは55-JUMBOですね。)
Ross: That’s right.
(そうです。)
Ross: That’s right. Jumbo with a “U,” sir.
(そうです。U の入ったJUMBOです。)
Friends Season1 Episode22(The One with the Ick Factor)
アメリカの電話のボタンには、数字とあわせてアルファベットが割り振られていることが一般的です。そのため、番号の一部を単語の形にして覚えたり、伝えたりすることがあります。こうした番号は vanity number と呼ばれることが多く、店や会社の番号を覚えてもらう工夫として使われることもあるようです。
ロスの番号の 55-JIMBO と、ロスが案内した 55-JUMBO は一文字しか違いませんが、I と U は別のボタンなので、電話番号としては別物になります。with a “U” は「U の入った」とつづりを伝える言い方で、It’s Smith with an “i.” のように名前のつづりを確認するときにも使えます。
チャンドラーの A cool phone number and a possible name for the kid. は、JIMBO を人名のように聞いて、番号が子どもの名前の候補にもなると冗談を言っている一言です。番号を言葉として読めるからこそ成り立つ冗談と言えます。
「If she punches in 911」数字で用件を伝える取り決め
さらに別の場面で、セントラルパークでまたロスのポケベルが鳴ります。ロス以外の全員が反応するなか、モニカが尋ねます。
Monica: Aren’t you going to..?
(……しなくていいの?)
Ross: Carol and I have a new system. If she punches in 911 it means she’s having a baby.
(キャロルと新しい決まりを作ったんだ。911って打ち込んだら、赤ちゃんが生まれるって意味。)
Ross: Otherwise, I just ignore it.
(それ以外は無視してる。)
Friends Season1 Episode22(The One with the Ick Factor)
punch in は「(ボタンを押して)数字を打ち込む」という意味の句動詞です。ロスの説明からは、呼び出す側が打ち込んだ数字が、ロスのポケベルに届く仕組みが読み取れます。system はここでは機械ではなく、二人のあいだで決めた「取り決め」「段取り」を指しています。
911 はアメリカで緊急通報に使われる番号です。ロスとキャロルは、その番号を呼び出しの合図に使うと決めています。数字だけで用件の重さを伝える工夫になっています。
Otherwise, I just ignore it. の otherwise は「そうでなければ」で、取り決めに当てはまらない呼び出しには応じない、という線引きを示しています。ignore は「無視する」で、知らないふりをするというより、ここでは「反応しない」と決めておく使い方です。似た場面では I’ll just let it ring.(鳴らしておくだけにする)のような言い方もできます。
まとめ|ポケベルと電話番号から見える当時の連絡手段
beeper と be beeped、文字で覚える vanity number、数字を打ち込む punch in を見てきました。放送当時の通信機器をめぐる言葉からは、作中の時代の連絡の取り方が伝わってきます。
ロスのポケベルが鳴るたびに起きる騒ぎを観ながら、当時の電話の文化をたどってみるのも楽しみ方のひとつです。
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