「beat around the bush」の意味と使い方|『メンタリスト』S01E20で学ぶ英会話

「beat around the bush」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

言いにくい用件を切り出す前に、天気や近況の話をひとしきり挟んでしまう。相手も察しているのに、なかなか本題に入れない。そんな数分が、打ち合わせの冒頭にはよくあります。

その回り道を指すのが「beat around the bush」で、核心に触れずに話す、という意味です。『メンタリスト』シーズン1第20話の中盤、CBI本部に呼び出した連邦保安官を前に、リズボンが前置きを畳んで本題へ入る場面に登場します。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。

目次

「beat around the bush」の意味とニュアンス

beat around the bush
意味:遠回しに言う、核心を避けて話す

茂みの中に用があるのに、周りばかりを棒で叩いている。その光景から生まれた表現です。中心にあるものへ手を伸ばさず、周辺を扱い続ける態度を指します。話がまったく進んでいないわけではないのに、肝心なところにだけ触れない。そのじれったさを含んだ言い方になります。

実際の会話では、否定形や制止形で登場することが圧倒的に多くなります。I won’t beat around the bush. なら「率直に言います」、Let’s not beat around the bush. なら「回りくどいのはやめましょう」、Stop beating around the bush. なら「はっきり言って」。つまり、遠回しにする宣言ではなく、それをやめる宣言として使われるのが特徴です。

肯定形で使う場合は、He beat around the bush for ten minutes. のように第三者の話し方を描写する形が中心になります。この場合は非難というより、話し方の癖を客観的に描写する響きになります。なお、イギリス英語では around の代わりに about を使う言い方も残っています。

【ここがポイント!】

  • 核にあるのは、茂みの中身ではなく周りばかり叩いているという絵
  • 否定形・制止形で「もう回り道はしない」と宣言するのが定番の使い方
  • 肯定形なら相手の話し方への評価になる、と押さえておくのがコツ

『メンタリスト』S01E20のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

被害者エディ・ルッソは証人保護プログラムの対象者で、その管理を担っていたのが連邦保安官のエクスリーとナックスでした。二週間前の麻薬摘発から、被害者だけが記録ごと消えている。その処理をしたのは保安官ではないか。証拠のないまま、リズボンは二人をCBIへ呼び出します。丁寧に部屋へ案内したあと、彼女がどう切り出すかに注目してください。

Exley: What’s the deal? We don’t have much time.
(用件は何だ。こっちは時間がない)

Lisbon: Why don’t you have a seat in my office? It’s quieter. You remember Agent Cho.
(私のオフィスへどうぞ。そちらのほうが静かです。チョウ捜査官は覚えていますね)

Exley: How you doin’?
(どうも)

Lisbon: I won’t beat around the bush. Two weeks ago, did you get Eddie Russo off the hook for a drug bust?
(遠回しには言いません。二週間前、麻薬の摘発からエディ・ルッソを逃がしましたか)

Exley: No, we did not.
(いや、していない)

The Mentalist Season1 Episode20(Red Sauce)

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シーン解説と心理考察

相手は同じ法執行機関の人間で、こちらに証拠はありません。それでもリズボンは、静かな部屋へどうぞと丁寧に案内し、席に着かせたところで前置きを一つも置かずに本題へ入ります。二週間前の記録を消したのはあなたたちか。案内の丁寧さと踏み込みの鋭さの落差が、この場面の緊張を作っています。

I won’t beat around the bush には二つの働きがあります。ひとつは、これから失礼なことを聞くという予告。もうひとつは、時間がないと言い放った相手への静かな返しです。急いでいるのはそちらでしょう、ならば手短に済ませます、という含みがこの一言に重なっています。

エクスリーの No, we did not. は短く、感情を見せません。追及される側が最初に選ぶのは、まず否定だけを置くという構えです。ここから互いの探り合いが始まる、その入口として響きます。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

茂みの中に鳥がいます。捕まえたいなら、中へ手を入れればいい。ところが手にしているのは棒で、叩いているのは茂みの周りばかり。この光景をひとつ思い浮かべておけば、意味も使いどころも一緒に取り出せます。

覚えておきたいのは、中心と周辺という位置関係です。核心は茂みの内側にあって、話し手はその外周をぐるぐる回っている。劇中のリズボンは、その回り道をやめて、いきなり内側へ手を入れました。棒を置いて茂みに踏み込む動作として覚えると、否定形で使う形がそのまま身につきます。

例文で覚える「beat around the bush」

やめる宣言として使うのが基本、と押さえたうえで、否定形と肯定形の両方を見ていきましょう。切り出し方の違いが、そのまま相手との距離に表れます。三つの場面で確かめてみましょう。

I won’t beat around the bush — we’re cutting the budget by half.
(率直に申し上げます。予算を半分に削減します)
悪い知らせを会議の冒頭で伝えるときの切り出し方です。前置きを省くと宣言することで、内容の重さをあらかじめ相手に伝えられます。この一言があるだけで、聞く側は身構える時間を持てます。

He beat around the bush for ten minutes before asking for a raise.
(彼は十分ほど回りくどく話してから、昇給を切り出した)
同僚の様子を第三者に伝える言い方です。肯定形で使うと、話し方そのものへの評価になります。before -ing を続けると、回り道の長さと本題の落差が際立ちます。

A: Is something wrong with the report?
B: Let’s not beat around the bush. The numbers don’t add up.
(A:報告書に何か問題でも?)
(B:回りくどいのはやめましょう。数字が合っていません)
指摘しにくいことを切り出す場面です。Let’s にすると相手も巻き込む形になり、詰問の角が少し取れます。指摘そのものは動かさずに、場の空気だけをやわらげられる切り出し方です。

あわせて覚えたい関連表現

cut to the chase
(本題に入る、前置きを飛ばす)
退屈な場面を飛ばしてカーチェイスへ進む、という映画由来の言い方です。今回のフレーズの否定形と働きは近いものの、こちらは早送りの感覚が前に出ます。映像編集の現場から広まったとされ、使われるのは口語が中心です。

get to the point
(要点を言う)
最も中立で、場面を選ばずに使えます。beat around the bush が話し方の癖を指すのに対し、こちらは話の構造そのものを指しています。ただし命令形の Get to the point. は率直さを通り越して失礼になりやすいので、場面を選びます。

not mince words
(歯に衣着せない)
言葉を選んで和らげることをしない、という意味です。今回のフレーズが話す順序の問題なら、こちらは語の強さの問題という違いがあります。肯定形で使うことはほとんどなく、否定形で人物評として使うのが定番です。

Note|茂みを叩いていたのは誰か

茂みの周りを叩く。改めて考えると、なぜその行為が「遠回し」の比喩になったのでしょうか。

手がかりは狩猟にあります。英語圏の狩りでは、獲物が潜む茂みや藪を棒で叩き、鳥や小動物を外へ追い立てる役目の人がいました。beater と呼ばれるこの役目は、獲物そのものを仕留めるわけではありません。中心には手を出さず、周囲を叩いて追い出すところまでが仕事で、仕留めるのは外で銃を構えている別の人間でした。つまり茂みを叩く行為は、本題の一歩手前で止まる作業として、はじめから位置づけられていたことになります。ここから、核心に触れずに周辺だけを扱う話し方の比喩が生まれた、という説明がよくなされます。ただし、いつ誰がこの言い方を最初に使ったのかについては諸説あり、はっきりしたことは分かっていません。イギリス英語では beat about the bush の形が使われ続けており、around と about という前置詞の違いに、大西洋を挟んだ言い方の分かれ目が残っています。

この背景を知ると、否定形で使われることが多い理由も見えてきます。叩くのは準備であって、本番ではない。だからこそ I won’t beat around the bush は、準備は飛ばして本番へ行きますという宣言になります。劇中のリズボンが前置きを一つも置かずに二週間前の話へ踏み込んだのも、まさにその通りの動きでした。

棒を置いて、茂みに手を入れる。その一歩の話です。

まとめ|前置きを畳むという合図

beat around the bush は、遠回しに話すこと自体を指す言葉ですが、会話で耳にするのはたいてい否定形のほうです。回り道をやめます、という合図として働き、そのあとに続く言葉の重さを先に知らせてくれます。

この一言を持っておくと、切り出しにくい話の入口が作りやすくなります。予算の削減も、契約の打ち切りも、相手の落ち度の指摘も、いきなり本題から始めれば角が立つ。かといって世間話を続けても、相手を待たせるだけです。その間に架ける短い橋のような役割を果たします。

劇中のリズボンは、時間がないと急かす相手に対して、この一言だけを置いて核心へ入りました。前置きを畳む手つきとして、会話のレパートリーに加えてみてください。

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