海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
待ち合わせに相手が現れないとき、時計を見ながら「この時間なら、たぶんまだ渋滞だな」と口に出してしまう場面があります。確証はないけれど、状況から見て答えはほぼ決まっている。そんな瞬間です。
そのときの言い方にあたる「chances are」を、『メンタリスト』シーズン4第12話から、行方不明になった同僚を案じるリズボンにジェーンが応じるシーンを通して、一緒に見ていきましょう。
「chances are」の意味とニュアンス
chances are
意味:おそらく〜だろう / 〜の可能性が高い
The chances are that … という形から the と that が落ちて定型化した言い方です。そのため文頭に置いて、後ろにふつうの文をそのまま続けられます。Chances are he’s late. のように、接続詞を足す必要がありません。
確度としては probably とほぼ同じ位置にありますが、chances という名詞を主語に据えている分、「手元の材料から見て、こちらに重みがある」という含みがわずかに強く出ます。何となくそう思う、ではなく、根拠があってそう見積もっている、という感覚です。
後ろに文ではなく形容詞を置く形もあります。Chances are slim.(見込みは薄い)のような使い方で、この場合は chances が文字どおり「見込み」という名詞として働いています。文が続く形と形容詞が続く形、どちらも日常でよく耳にします。
くだけすぎず硬すぎない中立的な表現なので、友人との雑談でも社内メールでも使えます。断定を避けながら見通しを示せるため、報告や提案の場面でも重宝します。
【ここがポイント!】
- 文頭に置いて、後ろに文をそのまま続けられる便利な一言
- probably より少しだけ「根拠がある」感じが出る表現
- 断定を避けつつ見通しを示せるので、仕事の連絡でも使いやすいのがコツ
『メンタリスト』S04E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
同僚のヴァン・ペルトが森で消息を絶ち、捜索は保安官事務所と森林局に委ねられています。リズボンは現場に出ることを止められ、資料に目を通しながらも苛立ちを募らせている状況です。そこへジェーンが、慰めの言葉ではなく別の角度から声をかけます。
Lisbon: The organized crime unit’s been after Porchetto for a while.
(組織犯罪対策課はしばらく前からポルケットを追ってる)Jane: There’s nothing more you can do.
(君にできることは、もうないよ)Lisbon: About what?
(何の話?)Jane: Van Pelt. That’s what you’re fretting about. Van Pelt is missing because of the murder, ergo, we focus on catching the murderer, chances are we’ll find Van Pelt.
(ヴァン・ペルトだよ。君が気を揉んでいるのはそれだ。彼女がいなくなったのは殺人事件のせいだ。だから犯人を追えば、おそらく彼女も見つかる)The Mentalist Season4 Episode12(My Bloody Valentine)
シーン解説と心理考察
ジェーンが最初に口にするのは There’s nothing more you can do. です。捜査資料の話をしていたリズボンには、何の話か分からない。その一拍の遅れが、彼女が別のことを考え続けていた証拠になっています。言い当てられた側の About what? という短い返しが、そのまま図星の合図として響きます。
続く言い方の組み立ても特徴的です。ergo(ゆえに)という硬い語をあえて使い、事件と失踪をひとつの線でつなぎ、結論として chances are を置く。感情を受け止める言葉はひとつも入っていません。
それでもこの応じ方は冷たさとしては受け取られません。焦っている相手に「大丈夫」と言えばかえって不安が残る場面で、動くべき方向だけを示している。断定はせず、しかし行動の指針としては十分だという線引きが chances are にきれいに収まっています。論理の形をとった気遣いがにじむ場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
天秤の片側に、分かっている事実を一枚ずつ載せていく動きを思い浮かべてください。まだ確定ではないけれど、傾きははっきりこちら側。その傾いた方を指さす仕草が、chances are にあたります。
覚え方は単純です。「Chances are + ふつうの文」という一枚のカードとして、丸ごと頭に入れてしまいます。that も the も要らないので、思いついた文をそのまま後ろにつなげられます。
捜索に加われず苛立つリズボンに、ジェーンが慰めではなく確率の話で応じたこの場面を思い出すと、この表現が感情の言葉ではなく判断の言葉であることも一緒に残ります。
例文で覚える「chances are」
文頭に置くだけで使えるので、口をついて出やすい表現です。3つの例文で幅を見ていきましょう。
Chances are he’s still stuck in traffic.
(おそらく彼はまだ渋滞につかまっている)
待ち合わせに相手が来ないとき、周囲に状況を説明する場面です。that を挟まずに文が続くという、この表現の基本形がそのまま出ています。
Chances are we’ll need to push the deadline back a week.
(おそらく締め切りを一週間ずらす必要が出てきます)
進捗会議で見通しを共有する場面です。断定を避けながら現実的な予測を伝えられるので、悪い知らせを出すときの緩衝材になります。
A: Do you think they’ve seen the proposal yet?
B: Chances are they have. It went out Monday morning.
(A:先方はもう提案書を見たと思う?)
(B:たぶん見てるよ。月曜の朝に送ってあるから)
社内での短いやり取りです。後ろに根拠を一文添えると、なぜそう見積もったのかが伝わり、推測に説得力が出ます。
あわせて覚えたい関連表現
odds are
(おそらく〜だろう)
ほぼ同義で、そのまま置き換えられます。odds は賭けの配当に由来する語なので、今回のフレーズよりわずかに口語的で、勝負事めいた響きが出ます。
in all likelihood
(十中八九)
確度が一段高く、硬い書き言葉寄りの表現です。今回のフレーズが雑談から会議まで幅広く使えるのに対して、こちらは報告書や講演の場に向いています。
it’s safe to say
(〜と言って差し支えないだろう)
話し手が結論を引き受ける姿勢が出る言い方です。chances are が「たぶん」なら、こちらは「まず間違いなく」。確度の目盛りをもう一段上げたいときに使えます。
Note|「たぶん」を四つの目盛りで測る
英語には「たぶん」にあたる言い方がいくつもあります。どれを選ぶかは、確度の高さだけで決まっているわけではありません。
いちばん低いところにあるのが maybe です。根拠がなくても言えて、責任もほとんど発生しません。Maybe he’ll come. は、来るかどうか分からないという以上のことを伝えていません。次に来るのが probably で、話し手の見立てが入ります。ここから上は、自分の判断として言っている感覚が出てきます。
chances are はその probably とほぼ並びますが、微妙に違う位置にいます。chances という名詞を主語に立てているため、話し手の気分ではなく状況そのものが傾いている、という言い方になるからです。だから根拠を添えやすい。劇中でも、事件と失踪をつなぐ理屈を述べたうえで置かれていました。いちばん上が in all likelihood で、これは書き言葉の語彙です。統計や調査を背景に持つ文脈で使われ、雑談で口にすると大げさに響きます。
日本語なら「たぶん」「おそらく」「十中八九」と副詞を替えて調整する部分を、英語は構文ごと切り替えている。この違いを押さえておくと、聞いたときにどれくらいの重みで言われたのかを読み取れます。
どこまで自分の判断として引き受けるか。その申告が、語の選択に表れているわけです。
まとめ|見通しを渡すという応じ方
chances are は、確証がないまま先を見積もるときの表現です。文頭に置いて後ろに文をそのまま続けられる手軽さがあり、それでいて probably より一段だけ根拠のある響きを持っています。
日常の予測にも、仕事の見通しの共有にも使えます。断定できないことを断定せずに伝えられるので、報告や提案の場面で相手に無用な期待を持たせずに済みます。
慰めの言葉が見つからない場面でも、次に動く方向だけは示せる。そういう応じ方を支える表現と言えます。


コメント