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勝ったのに「あれはずるい」と言われて、後ろ暗いところなど何もないのに、と言い返したくなった経験はありませんか。勝ち方を疑われるのは、負けを認めてもらえないこと以上に、後味の悪いものです。
そんなときに使える「fair and square」を、『メンタリスト』シーズン1第6話の中盤、カジノで勝った金でチームの全員に土産を買ってきたジェーンが、それを受け取れないとリズボンにとがめられる場面から、一緒に見ていきましょう。
「fair and square」の意味とニュアンス
fair and square
意味:正々堂々と、不正なしに
fair は「公正な」、square は「きっちりした・ゆがみのない」。どちらも似た意味を持つ語で、それを並べて言い切ることで「一点の曇りもない」という強い断定が生まれます。動詞のあとに置いて、その行為のやり方を説明するのが基本の形です。とりわけ、勝敗や取得をめぐって「何か手を使ったのでは」という疑いが場に漂っているとき、それを正面から打ち消すために使われます。言い訳を並べるかわりに、二語で言い切ってしまう潔さが持ち味です。裏を返せば、誰も疑っていない場面ではあまり登場しません。win、beat、earn といった動詞との相性がよく、選挙、勝負ごと、契約の獲得など、結果の正当性が問われる場面で活躍します。文末に置いて I won fair and square. と言い切る形が最も自然で、文の途中に差し込むことはあまりありません。副詞のはたらきをしながら、二語で一組として動く点も特徴といえます。
【ここがポイント!】
- 核は「定規で引いたように、角がまっすぐ整っている」イメージ
- 意味の近い二語を重ねることで、断定の強さを出している言い回し
- 疑いが場にあるときに効く一言で、win や earn と組み合わせるのが定番
『メンタリスト』S01E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
カジノで大きく勝ったジェーンが、その金でチームの面々に高価な土産を買い、オフィスに戻ってきます。捜査中の身でありながら賭博で得た金、しかもその使い道が同僚への贈り物。リズボンにとっては、とても受け取れる代物ではありません。彼女が持ち出した「規則」に、ジェーンが正面から切り返します。
Lisbon: We can’t keep this stuff.
(こんな物、受け取れないわ)Van Pelt: We can’t?
(受け取れないんですか)Lisbon: It’s against regulations.
(規則違反よ)Jane: No, it’s not. Why would it be? I won the money fair and square, and I spent it fair and square. Where do the regulations come into it?
(いや、違うよ。どうしてそうなる? 僕は正々堂々と勝って、正々堂々と使った。どこに規則が入り込む余地があるんだい)The Mentalist Season1 Episode6(Red Handed)
シーン解説と心理考察
リズボンが差し出すのは「規則」という一語だけです。それが彼女の判断の拠りどころであり、余計な説明を必要としない基準でもあります。受け取れないという結論が先にあり、理由は短く済ませる——この簡潔さに、彼女の職業倫理が表れています。
ジェーンの返しは、その基準そのものを組み替えるものでした。勝ち方にも使い方にも曇りはない、だから規則の出る幕はない。fair and square を二度繰り返すことで、両方の段階に問題がないと畳みかけています。ここには、このシリーズが繰り返し描く対立が凝縮されています。リズボンは組織の規則で線を引き、ジェーンは自分の倫理で線を引く。どちらも「正しさ」を語っていながら、拠って立つものが違う——その差が会話の温度を変えています。彼はこの少し前、カードを記憶していたことを理由にカジノを出入り禁止になったばかりです。それでも本人の中では筋が通っている。そのずれが、この場面の可笑しみを生んでいます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
定規を当てて切りそろえた木材の断面を思い浮かべてみましょう。角がまっすぐ直角に出ていれば、どこにもごまかしはありません。逆に角が丸まっていたり、斜めにゆがんでいたりすれば、どこかで手を抜いた証拠になります。square にはもともと「直角の・きっちりした」という意味があり、そこから「まっすぐで、ごまかしのない」という評価の意味が育ちました。fair(公正な)と square(きっちりした)を並べるのは、「曲がったところがひとつもない」と念を押す身ぶりです。劇中のジェーンも、勝ち方と使い方の両方に定規を当ててみせました。ゆがみのない直角、という絵と結びつけると、この二語重ねの働きが見えてきます。
例文で覚える「fair and square」
このフレーズは、結果の正当性が問われる場面で活躍します。三つの例文で、勝敗・仕事・日常のそれぞれでの収まり方を見ていきましょう。
He won the election fair and square.
(彼は正々堂々と選挙に勝った)
選挙結果をめぐる報道などで見かける形です。win とセットで覚えておくと、そのまま使える場面が多くなります。負けた側が結果を受け入れるときの言い方としても使われ、その場合は潔さがにじみます。
She earned that promotion fair and square.
(彼女はその昇進を正当に勝ち取った)
同僚をめぐる陰口を打ち消す場面です。earn と組み合わせると、実力で得たという含みが強まります。誰かをかばう場面で、短く言い切れるのが強みになります。
A: I still think you cheated.
B: I beat you fair and square, so pay up.
(A:やっぱりズルしたと思う/B:正々堂々と勝ったんだから、払ってよ)
友人との賭けが決着した場面です。疑いをかけられた側が押し返す言い方として、この表現がよくなじみます。軽い口調でも、言い分ははっきり伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
above board
(公明正大に、隠しごとなく)
テーブルの上に手を出したままにする、という発想の表現で、隠していないことに焦点があります。結果の正当性を語る fair and square に対し、こちらは過程の透明性を語る言い方です。取引や会計の説明で、やましいところがないと示すときによく使われます。
by the book
(規則どおりに、手順に従って)
定められた手順を守ったことを表します。道義的な公正さを含む fair and square とは違い、形式に合っているかどうかを問う表現です。劇中のリズボンの立場に近いと言えます。手順を守ったかどうかだけを問題にする、事務的な響きを持ちます。
on the level
(正直な、まっとうな)
人や話に裏がないことを表す口語表現です。行為のやり方にかかる fair and square に対し、こちらは人物や情報の性質にかかります。Is he on the level? と尋ねれば、信用できる相手かどうかを確かめる問いになります。
Note|英語に多い「二語重ね」の言い回し
fair も square も、それぞれ単独で「公正な」という意味を持っています。それなのに、なぜわざわざ二つ並べるのでしょうか。
英語には、意味の近い語を二つ並べて言い切る慣用句が数多くあります。null and void(無効な)、safe and sound(無事に)、each and every(ひとつ残らず)、first and foremost(何よりもまず)、terms and conditions(契約条件)。どれも片方だけで意味は通るのに、二語で一組として定着しています。この型がとりわけ多いのが法律や契約の文書です。中世以降のイングランドでは、フランス語由来の語と英語本来の語を並記する習慣があったと説明されることがあり、null(仏語系)と void(仏語系)、breaking and entering のような組み合わせがその名残とされます。意味を取り違えられないよう二重に言っておく、という実務上の必要が背景にあったという見方です。一方で、語呂やリズムの良さから広まった組み合わせもあり、成立の事情は一様ではありません。共通しているのは、二語並べても意味が増えるわけではないという点です。増えるのは断定の強さで、「まちがいなく、そうである」という念押しの働きが加わります。fair and square もこの系譜に連なる一つで、公正さを二度言うことで、疑いの余地をふさいでいます。ただし、個々の組み合わせがいつどこで生まれたかについては、辞書によって説明が異なります。
劇中のジェーンが、勝ち方と使い方の両方にこの表現を重ねたのも同じ理屈でした。二度繰り返すことで、どちらの段階にも隙はないと押し切っています。
二つ並べて、疑う余地をふさいでしまう言い方だったのですね。
まとめ|ジェーンの言い分から学ぶ「正々堂々と」
fair and square は、ゆがみのない直角という square の像から、不正なくまっとうに行われたことを表す表現でした。意味の近い二語を重ねることで、断定の強さが生まれています。勝負ごとから選挙、契約の獲得まで、結果の正しさが問われる場面ならどこにでも置ける一言です。
結果に疑いをかけられたとき、この一言があると、長い説明をせずに「やましいところはない」と押し返せます。声を荒らげずに言い切れるところも、この表現の使いどころです。
規則を持ち出したリズボンに、自分の筋を通してみせたジェーンの一言が、この表現の効きどころを教えてくれる場面でした。


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