海外ドラマを使って英語表現を学ぶ「ドラマdeエイゴ」へようこそ。
『メンタリスト』シーズン1エピソード16では、爆発事故に巻き込まれ一時的に視力を失ったジェーンを、病院で担当医が診察する場面が描かれます。今回はその診察室でのやり取りから、はっきりとした答えを避ける医師のヘッジ英語を読み解いていきます。
婉曲な言い回しを重ねる医師の話し方の先に、ふと踏み込んで言い切る瞬間もたどりながら、その温度差に触れていきます。
「it’s hard to say, really」と「so to speak」に滲む医師のためらい
視力がいつ回復するのか、リズボンが単刀直入に尋ねる場面から始まります。
Lisbon: How long will his vision be affected?
(「彼の視力はいつ元通りになりますか?」)Doctor: Well, it’s hard to say, really. The body’s healing powers are unpredictable, but 48 to 72 hours is the norm. We must wait and see, so to speak.
(「そうですね、正直なところ何とも言えません。体の治癒力には個人差がありますが、目安としては48時間から72時間というところでしょう。いわば、様子を見るしかない、といったところです。」)Jane: Huh. Humor. Great. Everybody loves a witty doctor in times of trouble.
(「へえ、冗談がお好きで。結構ですね。誰だって、こんな時こそウィットに富んだ医者がお気に入りですから。」)The Mentalist Season1 Episode16 (Bloodshot)
it’s hard to say, really は、「正直なところ何とも言えない」という意味の言い回しです。it’s hard to say だけでも成立しますが、really を添えることで、はぐらかしではなく本当にわからないのだという含みが強まります。個人差や不確定要素が大きい事柄について、無責任な断定を避けたいときに便利な一言です。
続く the body’s healing powers are unpredictable(体の治癒力には予測できないところがある)は、断定を避ける理由づけとして機能しています。そのうえで 48 to 72 hours is the norm(目安は48時間から72時間)という数字を添えることで、何も言わないわけではないが確約もしない、という距離感を作っています。締めくくりの so to speak(いわば、言ってみれば)は、we must wait and see(様子を見るしかない)という言葉に、比喩的な言い方だという注釈を添える働きをしています。断定を避ける表現を三段階重ねることで、医師の誠実さと配慮の両方が伝わってくる受け答えです。
婉曲の先にある「this is temporary」という言い切りと、ジェーンの切り返し
一連のやり取りに区切りをつけたあと、医師はジェーンに向き直り、今度は違う調子で話しかけます。
Doctor: Mr. Jane, this is temporary. Your sight will return and you’ll be back to work, but it’s gonna take time and patience.
(「ジェーンさん、これは一時的なものです。視力は戻りますし、仕事にも復帰できます。ただ、それには時間と忍耐が必要ですよ。」)Jane: Well, time I have, but patience I lost a while ago.
(「時間ならありますが、忍耐ならとうに失くしましてね。」)The Mentalist Season1 Episode16 (Bloodshot)
ここで医師が使う this is temporary(これは一時的なものです)は、先ほどまでの hard to say や so to speak とは対照的な、はっきりとした言い切りの表現です。患者本人に直接呼びかける場面になると、あいまいな言い回しから一歩踏み込み、your sight will return(視力は戻る)と未来を明言しています。ただし it’s gonna take time and patience(時間と忍耐が必要になる)という一言で、無条件の保証ではなく回復には相応の期間がかかることも同時に伝えており、断定と配慮のバランスを取っている点は変わりません。
これを受けたジェーンの返しが効いています。time I have, but patience I lost a while ago(時間ならあるが、忍耐はとうに失っている)という言い回しは、医師が並べた time and patience という二語を逆手に取り、片方はある、片方はない、と対比させる語呂合わせになっています。深刻になりすぎず、それでいて苛立ちも滲ませる、ジェーンらしい皮肉の効かせ方です。婉曲に婉曲を重ねる医師の話し方と、要点だけを鋭く突くジェーンの返し。同じ「時間」という言葉を挟んでも、立場によってこれほど言葉の重ね方が変わるのが興味深いところです。
まとめ|断定を避ける英語と、踏み込む英語の境目
it’s hard to say, really、so to speak、this is temporary。同じ診察室での会話に、婉曲に徹する言い方と要点を言い切る言い方が共存している様子が見えてきます。状況に応じた使い分けが、英語表現の幅として見えてくる場面です。
次回も『メンタリスト』の会話を通して、英語表現を見ていきます。
このエピソードで使われている表現は、フレーズ記事やエピソードまとめでも取り上げています。
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