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食わず嫌いだった料理をすすめられて、断る前にひと口だけ試してみる。そんなふうに、判断を保留したまま様子を見る場面が、日常には意外と多くあります。
その姿勢をそのまま言葉にしたのが「keep an open mind」で、先入観を持たない、決めつけずにおく、という意味です。『メンタリスト』シーズン1第23話の序盤、行方の分からない娘について両親から話を聞く場面で、リズボンが口にします。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。
「keep an open mind」の意味とニュアンス
keep an open mind
意味:先入観を持たない、決めつけずにおく
mind を扉に見立てて、それを閉じないでおく、という発想の表現です。新しい情報や別の可能性が入ってくる余地を残しておく状態を指します。
大事なのは、これが積極的に何かを信じる話ではないという点です。閉めない、という消極的な動作にとどまります。だからこそ、結論をまだ出せない場面や、出したくない場面で重宝します。
使われる場面は大きく二つに分かれます。ひとつは捜査や調査のように、結論が求められているのに材料が足りない場面。もうひとつは、新しい提案や未知の体験のように、試す前に拒まれてしまいそうな場面です。前者では中立の宣言として、後者では柔軟さのお願いとして働きます。
形も柔軟で、Keep an open mind. と単独で言うほか、about を続けて何について決めつけないかを示せます。with an open mind と副詞句にすれば、その姿勢で何かに臨むという意味になります。形容詞の open-minded は人柄そのものの評価になるため、一時的な姿勢を指す動詞句とは役割が違います。
【ここがポイント!】
- 核は「心の扉を閉めないでおく」という、開けっぱなしの状態
- 何かを信じることではなく、可能性を閉じないという消極的な姿勢を指す一言
- about を続ければ、何について決めつけないのかを限定できるのがコツ
『メンタリスト』S01E23のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
殺害された姉エマの自宅で、行方の分からない妹マヤについて両親から話を聞く場面です。父ノアは、感情を抑えた口ぶりで専門家としての見解を求めます。捜査機関が家族に対して普通は避ける質問に、ジェーンは緩衝材をいっさい置かずに答えました。その直後、リズボンが差し出したのがこの表現です。
Noah: In your professional judgment, do you think that Maya is dead also?
(専門家としてのご意見を伺いたい。マヤも死んでいると思われますか)Jane: Yes.
(ええ)Lisbon: We keep an open mind. We’re assuming that she’s alive. There’s always hope.
(私たちは可能性を決めつけません。生きているという前提で動いています。希望は常にあります)Jane: Not much.
(そう多くはありませんがね)The Mentalist Season1 Episode23(Red John’s Footsteps)
シーン解説と心理考察
リズボンのこの一言は、二つの仕事を同時にこなしています。組織としての公式見解を示すことと、傷ついた家族への即席の手当てをすることです。捜査の建前を述べる表現が、この場では慰めの機能まで担っている点に、言葉の使われ方の妙が表れています。
主語が I ではなく We になっているのも見どころです。個人の見立てではなく、機関としての姿勢だと示すことで、直前のジェーンの Yes を組織の答えから切り離しています。とっさの防波堤と言えます。
ところがその手当ては、数秒で剥がされます。Not much. の一言で、希望の量が値踏みされてしまう。優しい嘘を許さない人物と、その場をなんとか保たせようとする人物の対比が、四つの短い発言に凝縮されています。
父ノアが最後に返すのは、感謝の言葉でした。率直さへの礼という形を取りながら、その声には受け止めきれないものがにじむ場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
頭の中に一枚の扉があると考えてみましょう。扉が閉まっていると、新しい情報は入ってきません。すでに部屋の中にあるものだけで、判断が完結してしまいます。keep an open mind は、その扉を開けたままにしておく、という指示です。
ポイントは、開けておくだけで、何かを招き入れているわけではないという点にあります。だから「信じる」でも「賛成する」でもなく、判断を先に固めない、という位置にとどまります。
劇中では、父親が「死んでいると思うか」と扉を閉めにかかり、リズボンが「まだ開けておきます」と押しとどめていました。誰かが結論を確定させようとした瞬間に、扉に手をかける言葉。そう覚えておくと、使う場面を外しません。
例文で覚える「keep an open mind」
軽い誘いにも、公式な説明にも使えます。三つの例文で、そのフォーマル度の幅を見ていきましょう。
Just keep an open mind and try one bite before you say no.
(とりあえず決めつけないで、断る前にひと口食べてみてよ)
見慣れない料理を友人にすすめる場面です。命令形で軽く使えるため、押しつけがましくならずに一歩を促せます。
We’re keeping an open mind about the cause of the outage.
(障害の原因については、まだ可能性を絞り込んでいません)
調査中の案件について、途中経過を社内外に伝える場面です。進行形にすると、今まさに判断を保留しているという現在の姿勢が伝わります。
A: I heard the new manager is really strict.
B: Let’s keep an open mind until we actually work with him.
(A:今度の上司、すごく厳しいらしいよ。)
(B:実際に一緒に働くまでは、決めつけないでおこう。)
噂が先行している状況をいったん保留する会話です。until を続けると、いつまで判断を待つのかが明確になります。
あわせて覚えたい関連表現
give someone the benefit of the doubt
(疑わしい点があっても、相手を信じておく)
対象が人に限られ、相手に有利な解釈をあえて選ぶ言い方です。今回の表現が可能性全体を開いておくのに対し、こちらは特定の誰かへの態度を指します。
hear someone out
(相手の話を最後まで聞く)
内面の姿勢ではなく、聞く時間を確保するという行動の依頼です。今回の表現とは役割が違うため、二つを並べて使うこともできます。
reserve judgment
(判断を保留する)
意味は近いものの、かたく事務的な響きになります。報告書や公式コメントに向き、食事や旅行の誘いには合いません。
Note|判断を最後まで保留する、という決まりごと
keep an open mind は、日常の軽い誘いにも使える一方で、捜査や司法の場面で驚くほど頻繁に現れます。この偏りには理由があります。
アメリカの刑事裁判では、陪審員が評議に入るまで結論を固めないことが制度の前提になっています。審理の途中で心証を決めてしまえば、そのあとに提出される証拠が意味を失うためです。そこで裁判官は、審理の初めや休廷のたびに、事件について結論を出さないよう陪審員に念を押します。法廷ドラマで繰り返し描かれてきた、おなじみの場面でもあります。
つまりこの表現は、個人の心構えであると同時に、手続きを成立させるための条件として扱われてきました。開いておくことが礼儀ではなく義務になる場所がある、ということです。捜査機関の会見や捜査官の説明でこの言い方が選ばれるのは、その系譜の延長にあると考えられます。説示の具体的な文言や運用は法域によって異なるため、細部については断定を避けておきます。
劇中でリズボンが We keep an open mind. と主語を We にしたのも、この文脈で読むと腑に落ちます。彼女が述べたのは個人の希望的観測ではなく、機関として守るべき姿勢のほうでした。
開けておくことが、仕事の一部になる場面があるわけです。
まとめ|閉めない、という選択
keep an open mind は、判断を先に固めず、別の可能性が入ってくる余地を残しておくことを表す表現でした。何かを信じる宣言ではなく、扉を閉めないという消極的な姿勢を指している点が、この言い方の輪郭になります。
材料がそろわないうちに結論を求められたとき、噂だけで人物像が決まりかけているとき。断定と沈黙のどちらも選びたくない場面で、姿勢そのものを言葉にできるようになります。
娘の生死を問われて、機関としての答えを差し出したリズボン。決めつけないという返事が、そのまま希望を手放さない宣言にもなっていました。表現の引き出しに加えてみてください。


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