「suck it up」の意味と使い方|『メンタリスト』S02E06で学ぶ英会話

「suck it up」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

こみ上げてきた不満を、そのまま飲み込むしかない場面があります。しかもそれを、原因を作った本人から言い渡されるとしたら。

そこで登場するのが「suck it up」で、文句を言わずに耐えろ、という意味です。『メンタリスト』シーズン2第6話の中盤、留置場のジェーンに呼び出されたリズボンが、用件の薄さに苛立つ場面で使われます。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。

目次

「suck it up」の意味とニュアンス

suck it up
意味:文句を言わずに耐える、泣き言を言うな

suck は吸う、up は上へ。こみ上げてきたものを、外に出さずに吸い戻す動作です。it が指しているのは、涙かもしれませんし、痛みや不満かもしれません。出しかけた感情を体の内側へ引き戻せ、というのがこの表現の中身です。

命令形で使われることがほとんどです。厳しい練習や仕事に音を上げた相手へ、もう少しこらえろと発破をかける。そういう場面で選ばれます。

ただし響き方には幅があります。信頼のある間柄なら励ましとして届きますが、そうでなければ、相手の訴えを退ける冷たい一言になります。相手の苦しさを認めないという含みを持ちやすいため、使う相手と場面はよく選ぶ必要があります。

自分に向けて使う形も便利です。I’ll just have to suck it up. なら、変えられない状況を受け入れる独り言になり、角が立ちません。

【ここがポイント!】

  • こみ上げたものを吸い戻す動作が、感情を抑える比喩になっている
  • 命令形が基本。励ましにも突き放しにもなる
  • 一人称で使うと、自分に言い聞かせる形として角が立たない

『メンタリスト』S02E06のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

留置場に入ったままのジェーンから、どうしても会いたいと呼び出されたリズボンが、マフィンまで持って面会に来ます。ところが伝えられたのは、容疑者の一人がシロだという電話で足りる内容でした。呼び出しの本当の狙いは、面会室に入って別の人物に接触することだったと明かされます。

Lisbon: That’s interesting, but you could have told me that on the phone.
(興味深い話ではあるけど、電話で済んだでしょう)

Jane: I needed a visitor so I could get into the visitors room.
(面会人が必要だったんだ。面会室に入るためにね)

Lisbon: How I wish I had my gun.
(銃を持ってくればよかった)

Jane: Hey, crime-fighting’s hard. Suck it up.
(おいおい、犯罪捜査は大変なんだ。我慢しろ)

The Mentalist Season2 Episode6(Black Gold and Red Blood)

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シーン解説と心理考察

リズボンの一言が見事です。銃を持ってくればよかった。撃ちたいとは言っていませんし、怒鳴ってもいません。それでも、こみ上げているものの量ははっきり伝わります。マフィンまで買って駆けつけた相手に対する仕打ちを思えば、当然の反応です。

そこへ返されるのが suck it up でした。本来この言葉は、苦しい状況に置かれた人へ外側から投げかけるものです。ところがここでは、苦しい状況を作った当人が使っています。しかも crime-fighting’s hard と、まるで一般論のように前置きを添えました。

自分の都合で人を呼びつけ、その相手に耐えることを求める。悪びれなさが極まった一言です。それでも会話が続いてしまうところに、この二人の関係の型が出ています。リズボンはこのあと、椅子で殴ってやるとまで言いながら、結局ジェーンの計画に付き合っていきました。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

泣きそうになったときに、鼻の奥へこみ上げてくるものを音を立てて吸い戻す。あの動作を思い浮かべてみましょう。外に出しかけたものを、体の中へ引き戻す動きです。

suck it up の it は、そのこみ上げてきた何かにあたります。涙かもしれないし、痛みや不満かもしれません。それを外に出すな、吸い戻せ、という命令がこの表現です。

劇中のリズボンには、まさに何かがこみ上げていました。マフィンを持って駆けつけたのに、面会室に入るための口実として使われた。その怒りを、当のジェーンが吸い戻せと言って封じます。飲み込む側と、飲み込ませる側。この構図で覚えておくと、突き放した冷たさまで一緒に記憶に残ります。

例文で覚える「suck it up」

自分に向けても、相手に向けても使える表現です。三つの例文で見ていきましょう。

I hate early meetings, but I’ll just have to suck it up.
(早朝の会議は嫌いだけど、我慢するしかない)
変えようのない予定を、自分に言い聞かせて受け入れる場面です。一人称で使うと角が立たず、独り言として自然に響きます。まずはこの形から使ってみるのが安全です。

Everyone’s tired. Just suck it up and finish the last two boxes.
(みんな疲れてる。文句言わずに最後の2箱を片づけよう)
作業の終盤で、士気が落ちた仲間に声をかける場面です。Just を添えると命令の角が少し丸くなり、Everyone’s tired. と前置きすることで、相手だけを責めていない形になります。

A: This chair is killing my back.
B: Suck it up. We’re almost done.
(A:この椅子、腰が死ぬ)
(B:我慢して。もうすぐ終わるから)
軽い不満に、軽口で応じる場面です。親しい間柄でのみ成立する返し方で、距離のある相手には使えません。

あわせて覚えたい関連表現

deal with it
(自分でどうにかしろ、受け入れろ)
感情を抑えることではなく、状況への対処を求める言い方です。同じエピソードの序盤で、ボスコがリズボンに向けてこの形を使っています。今回の表現より適用範囲が広く、事務的にも響きます。

tough it out
(耐え抜く)
苦しい期間を最後まで持ちこたえるという、時間の幅がある表現です。今回の表現が持つ、今こみ上げているものを飲み込むという瞬間性とは対照的になります。

grin and bear it
(笑って我慢する)
表情まで取り繕う点が加わります。不満を見せないことに重心があり、相手に命令する形ではあまり使われません。

Note|我慢しろ、と言える相手

suck it up は、スポーツのグラウンドや軍隊の訓練といった現場で長く使われてきた言葉だとされています。痛みや疲れを口にする者に、続けろと発破をかける。集団で同じ苦しさを共有している場面だからこそ成立する叱咤です。

その背景を考えると、この表現が持つ条件が見えてきます。言う側と言われる側が、同じ苦しさを引き受けている。あるいは、言う側がすでにその苦しさを通ってきている。この前提があるとき、suck it up は仲間としての励ましになります。逆に前提が欠けたまま使われると、他人事の押し付けになってしまいます。

近年は、この言い方そのものを見直す議論も生まれています。感情を口に出すことを弱さと結びつける文化への反省から、つらいと言えない空気こそが問題ではないか、という見方です。実際、職場や家庭でこの一言を安易に使うことへの抵抗感を語る人も少なくありません。

だからといって、使えない表現になったわけではありません。自分に向けて使う場合や、気心の知れた相手との軽口では、今も自然に登場します。判断の基準は、相手の苦しさを認めたうえで言っているかどうか。ここが分かれ目になります。

劇中のジェーンは、その基準からはっきり外れた側にいました。苦しさの原因を作ったのが自分だからです。だからこそ、あの一言があれほど図々しく響きました。

まとめ|飲み込ませる側と、飲み込む側

suck it up は、こみ上げてきたものを外に出さずに吸い戻せ、と伝える表現でした。涙も不満も痛みも、まとめて it の一語で受け止めます。

変えられない予定を受け入れるとき、終盤で疲れた仲間に声をかけるとき、親しい相手の軽い不満に軽口で返すとき。まずは自分に向けた I’ll just have to suck it up. から使ってみると、距離感を間違えずに済みます。

マフィンを持って駆けつけた相手に、耐えろと言い放ったジェーン。それでも結局は付き合ってしまうリズボン。飲み込ませる側と飲み込む側の関係が、短いやり取りに凝縮された場面でした。

このエピソードを見るには

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