アメリカの誕生日の「ロースト」(からかいのスピーチ)の文化と英語|『モダンファミリー』S10E22で学ぶ英会話

『Modern Family』コラム: アメリカの誕生日の「ロースト」(からかいのスピーチ)の文化と英語|『モダンファミリー』S10E22で学ぶ英会話

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

『モダンファミリー』シーズン10第22話は、家族それぞれの誕生日を描く回です。ある年のジェイの誕生日には、グロリアが人を集め、主賓のジェイをからかうスピーチを順に披露する会を開きます。

祝いの席でわざと相手をけなすという発想は、日本の感覚からすると意外に映るかもしれません。この場面を起点に、アメリカの「ロースト」と呼ばれる催しと、その場で使われる英語を見ていきます。

目次

「roast」は、主賓をからかって祝う催し

会の発端は、ジェイとグロリアの次の言葉で語られます。

Jay: I got Gloria the greatest Valentine’s Day gift a box set of DVDs of all the Dean Martin Roasts.
(グロリアに最高のバレンタインの贈り物をしたんだ。ディーン・マーティンのローストのDVDボックスさ。)
Gloria: I was so moved by the romantic gesture that for Jay’s birthday, I invited a bunch of people over to insult him.
(そのロマンチックな心づかいにすっかり感動したから、ジェイの誕生日に、彼をけなしてもらおうと人をたくさん呼んだの。)
Modern Family Season10 Episode22 (A Year of Birthdays)

グロリアの so moved by the romantic gesture は、言葉どおりの感動ではなく皮肉です。バレンタインにからかいの番組のDVDを贈られたことへの、彼女なりのお返しとして会が開かれます。invite ~ over は「〜を家などに招く」、a bunch of people は「大勢の人」のくだけた言い方です。

roast はもともと「肉などを焼く」という動詞ですが、人を目的語にすると「さんざんからかう、こき下ろす」という意味になります。アメリカでは、主賓を囲んだ友人や同僚が、壇上で順にからかいのスピーチを披露する催しを a roast と呼ぶことがよく知られています。著名人を主賓にしたローストはテレビの特番としても放送されてきたと言われ、ジェイが贈ったDVDもそうした番組の一つとして劇中で名前が出ています。

ローストの前提にあるのは、主賓への親しみです。からかいの中身は大げさで、本気の非難とは受け取らないのが約束事とされます。ただし、どこまでの冗談が許されるかは、場の雰囲気や参加者の関係によって大きく異なります。

「No, but seriously」で、褒めるふりから落とす

会では何人かが順にジェイをからかいます。キャメロンの番では、ローストらしい切り返しが出てきます。

Cameron: No, but seriously, Jay is quite the environmentalist.
(いや、まじめな話、ジェイはなかなかの環境保護派なんだ。)
Cameron: Just this last year, he recycled a gift of mine a wonderful book about wine.
(この1年のあいだにも、僕の贈り物をリサイクルしたからね。ワインのすてきな本を。)
Modern Family Season10 Episode22 (A Year of Birthdays)

No, but seriously は「いや、まじめな話」と、冗談を切り上げて本音を言うふりをする前置きです。ローストではこのあとに褒め言葉が来るように見せて、もう一度落とすのが定番の流れとされます。quite the ~ は「なかなかの〜」で、ここでは皮肉を込めた褒め言葉として働いています。

キャメロンが言う「リサイクル」は、別の誕生日の場面で描かれる出来事を指しています。フィルの誕生日、ジェイからの贈り物の本に、キャメロンの書き込みが見つかります。

Cameron: Cam.
(キャム。)
Cameron: Yeah.
(やっぱり。)
Cameron: Jay, you re-gifted my gift?
(ジェイ、僕の贈り物を使い回したの?)
Claire: Dad!
(パパ!)
Jay: I didn’t know he wrote in it.
(書き込みがあるとは知らなかったんだ。)
Cameron: Because you didn’t open it.
(開けてもいないからだよ。)
Jay: So now I feel like a jerk.
(おかげで、ひどいやつになった気分だ。)
Modern Family Season10 Episode22 (A Year of Birthdays)

re-gift は、もらった贈り物を別の人に贈ることを指す口語です。ばれると気まずい行為として笑いの種になることが多く、ローストのネタにはうってつけと言えます。

クレアの Dad! は、父をたしなめる短い呼びかけです。ジェイの feel like a jerk は「自分がひどいやつに思える」と、きまりの悪さを認める言い方になります。ローストのネタは、その1年に主賓がしでかした出来事から選ばれることも多いと言われ、キャメロンの冗談もこの件を拾ったものです。

「That’s how you roast!」で、抗議に見せかけて締める

会が進むと、アレックスが止めに入るように話し始めます。

Alex: Enough! This is terrible! I don’t know why any of you people think this is funny! You may think these are jokes, but it’s way too real.
(やめて! ひどすぎる! なんでこれが面白いと思えるのか分からない! ジョークのつもりかもしれないけど、生々しすぎるのよ。)
Alex: We need to respect Grandpa instead of cutting him down.
(おじいちゃんをけなすんじゃなくて、敬うべきでしょ。)
Modern Family Season10 Episode22 (A Year of Birthdays)

way too ~ は「あまりにも〜すぎる」と強める言い方で、cut ~ down は「〜をけなす、こき下ろす」という句動詞です。ここまでは、からかいに我慢できなくなった孫の抗議のように聞こえます。ところが、アレックスはこう締めくくります。

Alex: And that’s how you roast! Bam!
(これがローストってもんよ! バーン!)
Modern Family Season10 Episode22 (A Year of Birthdays)

抗議そのものが、ジェイをからかうための前振りでした。That’s how you ~! は「〜はこうやるのよ」と、お手本を見せたあとに言い切る決め台詞の形です。本気の抗議に聞こえる前置きから一気に落とす組み立ては、さきほどの No, but seriously と同じ発想と読み取れます。最後の Bam! は「どうだ!」と決まったことを強調する擬音で、オチを言い切ったあとの勢いを足しています。

日常の英語でも、roast は「(親しい相手を)いじる、こき下ろす」の意味でくだけて使われます。My friends roasted me on my birthday.(誕生日に友達にさんざんいじられた)のように言えますが、相手との距離感によっては冗談が通じないこともあります。職場やあまり親しくない相手の前では、からかいより感謝の言葉を選ぶほうが無難です。

まとめ|からかって祝うローストの英語

主賓をからかって祝う roast、本音を言うふりをする No, but seriously、皮肉の褒め言葉 quite the ~、そして締めの That’s how you roast! を見てきました。親しい間柄だからこそ成り立つ、アメリカの祝い方の一つが見えてきます。

ジェイの誕生日の場面を観ながら、次回も『モダンファミリー』の英語を楽しんでいきましょう。

同じ回のほかのコラムでは、1年の目標を宣言する英語や、tense と grumpy の違いも扱っています。

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