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『モダンファミリー』シーズン10第21話では、ジェイが高校の卒業式で祝辞を述べる大役を担います。ミッチェルはその日を楽しみにし、ジェイも通気口の真下の席を避けたがるほど準備に力が入ります。
アメリカの卒業式では、招かれた人が卒業生に向けて話す祝辞が式の見せ場のひとつとして知られます。この回の場面を手がかりに、祝辞をめぐる習慣と、そこで使われる英語を見ていきます。
「commencement」は卒業式、祝辞は「commencement address」
卒業式の前、ミッチェルはキャメロンにこう話します。
Mitchell: Well, it could be fun with my dad giving the commencement address, though.
(でも、父さんが卒業式の祝辞を述べるんだから、楽しいかもしれないよ。)
Modern Family Season10 Episode21 (Commencement)
アメリカでは卒業式を commencement と呼ぶことがあり、この回の英題もこの語です。commence はもともと「始まる」という意味の動詞で、卒業を新しい人生の始まりととらえた呼び名だと説明されることが多い言葉です。日常的には graduation や graduation ceremony も使われ、場面や学校によって呼び方は異なります。
式で招かれた人が述べる祝辞は commencement address または commencement speech と呼ばれ、話し手は commencement speaker です。大学などでは、学外から著名人や卒業生を招いて話してもらう形がよく知られています。一方で、卒業生代表が話す valedictorian のスピーチとは別のものとして扱われるのが一般的です。高校では校長や地域の人が話すこともあり、形式は学校によってさまざまです。
ミッチェルはこのあと、父の下書きのカードをのぞいた話も続けます。スピーチを小さなカードにまとめておく習慣は、note cards という言い方とあわせて覚えておくと便利です。
「take this speech so seriously」祝辞への備え
式の前には、ジェイとグロリアのこんなやりとりが描かれます。
Jay: Can we switch seats? I’m right under a vent.
(席を替わってくれないか。通気口の真下なんだ。)
Jay: This is not good for my instrument.
(俺の楽器によくない。)
Gloria: Oh, so nice that you’re taking this speech so seriously.
(あら、このスピーチをそんなに真剣に考えてるなんて、いいわね。)
Gloria: When you did Mitch and Cam’s wedding toast, you had your mouth full of cashews.
(ミッチとキャムの結婚式で乾杯のあいさつをしたときは、口いっぱいにカシューナッツを頬張ってたのに。)
Modern Family Season10 Episode21 (Commencement)
ジェイの instrument は「楽器」ですが、ここでは自分の声を楽器にたとえていると読めます。通気口の真下の席を避けたがるほど、本番に向けて構えている様子が伝わってきます。take ~ seriously は「〜を真剣に受け止める」で、グロリアはそれを過去の wedding toast(結婚式の乾杯のあいさつ)と引き比べます。Thanks for taking this so seriously.(真剣に考えてくれてありがとう)のように、相手の熱意をねぎらう場面でも使える形です。
結婚式の乾杯のあいさつは身内や友人が短く話す場であるのに対し、卒業式の祝辞は大勢の卒業生と家族の前で話す公式の役目です。招かれる側にとっては名誉な依頼とされ、準備に時間をかける人が多いと言われます。ジェイの力の入り方も、その重みを映していると言えます。
この回のジェイは、マニーとの会話の中で、祝辞の一節を前もって口にする場面もあります。人生の教訓を短い言葉にまとめるのは、祝辞でよく見られる組み立て方のひとつとされます。
「commencement speaker」の紹介と、祝辞の受け止め方
式の本番では、校長代行のキャメロンがジェイを紹介します。
Cameron: All right, and now on to our commencement speaker.
(さて、それでは祝辞をお願いする方の登場です。)
Cameron: He is a pillar of the community, an entrepreneur and closeteer Mr. Jay Pritchett.
(地域社会の柱であり、起業家にしてクローゼット職人、ジェイ・プリチェットさんです。)
Jay: Commencement.
(コメンスメント。)
Modern Family Season10 Episode21 (Commencement)
now on to ~ は「さて、次は〜へ」と進行を切り替える司会の決まり文句です。a pillar of the community は「地域の大黒柱、地域を支える人物」という意味で、講演者の紹介で経歴とあわせて添えられることが多い言い方です。closeteer は、ジェイがクローゼットの会社を営んできたことにかけた言葉です。ジェイはこのあと単語の頭文字に言葉を当てはめて話し始め、学生たちがはやし立てます。
祝辞の受け止め方は、家族の会話にも表れます。アレックスの大学の卒業式では、別の講演者の祝辞について、ジェイがこう話します。
Jay: I still can’t get over that commencement speech.
(あの卒業式のスピーチ、いまだに信じられん。)
Jay: Not a single laugh.
(笑いがひとつもなかった。)
Jay: I’ll tell you one element he didn’t discover hilarium.
(あいつが発見しなかった元素をひとつ教えてやる。ヒラリウムだ。)
Modern Family Season10 Episode21 (Commencement)
ヒラリウム(hilarium)は hilarious「大笑いの」にかけた造語です。can’t get over ~ は「〜がいまだに信じられない、忘れられない」で、驚きやあきれをこめて使われます。I can’t get over how quiet it was.(あんなに静かだったなんて信じられない)のように、how 以下で中身を続ける形もあります。祝辞にはユーモアを交えて場を和ませるものも多いと言われ、ジェイの Not a single laugh. はその期待を裏返した感想です。
まとめ|卒業式の祝辞を英語で知る
commencement という呼び名、commencement address と commencement speaker、Not a single laugh. という感想まで、祝辞をめぐる文化と英語を見てきました。祝辞の言葉を知ると、卒業式の場面がぐっと身近になります。
ジェイの晴れ舞台を思い浮かべながら『モダンファミリー』のこの回を観返すと、祝辞の場面がまた違って見えてきます。
同じ回のほかのコラムでは、急に式を任されたキャメロンの英語や、卒業を前に迷うアレックスへの言葉も取り上げています。


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