海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン5第3話では、不動産の仕事をするフィルが、何人もの顧客の予定を同時に抱えます。その顧客たちが一つの場に居合わせたことで、フィルの何気ない一言が思わぬ受け取られ方をします。
同じ「済ませる」でも、選ぶ表現によって相手に伝わる気持ちは変わります。今回は、その違いがはっきり表れたやり取りを入り口に、予定が重なったときの英語を見ていきます。
「finish up with」が「get it over with」に聞こえるとき
フィルは顧客のロレインと一緒にいるところで、別の顧客ダイアンに声をかけられます。
Diane: Oh, is that why you couldn’t show me The Colonial later? I made that corn bread that you like.
(あら、だから後でコロニアルの物件を案内できないって言ってたの? あなたの好きなコーンブレッドを作ったのに。)Phil: W we’re gonna make it to that.
(そ、そっちにはちゃんと行けるよ。)Phil: I just have to finish up with Lorraine.
(ロレインの用事を済ませるだけだから。)Lorraine: Oh, you mean, like, “get it over with“?
(あら、それって「さっさと片づける」ってこと?)Phil: No, I I don’t mean that.
(い、いや、そういう意味じゃない。)Modern Family Season5 Episode3 (Larry’s Wife)
finish up with ~ は「〜との用事を最後まで済ませる」という意味で、それ自体には良い悪いの色がつかない中立の表現です。I just have to を前に置くと「〜を済ませるだけ」と、残りがわずかであることを伝える形になります。
一方の get it over with は、it に当たる物事を「早く終わらせてしまう」という意味で、気の進まないことや嫌なことについて使われることが多い表現です。
ロレインは、自分との用事を「片づけるべき面倒ごと」のように扱われたと受け取り、この言い方で聞き返しています。フィルがすぐに No, I don’t mean that. と打ち消していることからも、2つの表現の受け取られ方の差が分かります。このあとロレインは、ズッキーニのパンが好物だと思っていたと言い出し、フィルはズッキーニのパンもコーンブレッドも両方好きなのだと言い張ります。顧客ごとに好みを合わせていたことが、ここで表に出てしまう流れです。
| 表現 | 意味 | 相手に伝わる気持ち |
|---|---|---|
| finish up with ~ | 〜との用事を最後まで済ませる | 中立 |
| get it over with | 早く終わらせてしまう | 気が進まない・嫌々 |
ダイアンへの返事の make it to ~ は「〜に間に合う、〜に行ける」という意味で、予定を守れると請け合うときに使えます。また、不動産の文脈で show someone ~ と言えば、物件を案内することを指します。
「I thought you had ~」と「Just another client.」
そこへ、さらに別の顧客ロニーが現れます。
Ronnie: I thought you had a doctor’s appointment.
(お医者さんの予約があるんじゃなかったの?)Ronnie: That’s why you had to Miss Darrell’s swim meet.
(だからダレルの水泳大会に来られなかったんでしょ。)Modern Family Season5 Episode3 (Larry’s Wife)
ロニーの言葉を聞いて、その場にいたダイアンが尋ねます。
Diane: Who’s she?
(その人は誰?)Phil: Just another client.
(ただの顧客だよ。)Ronnie: “Just another client”?
(「ただの顧客」?)Phil: No, that’s what is this? Uh-oh, it is.
(いや、そうじゃ……これは何だ? あっ、来た。)Phil: It’s my office.
(会社からだ。)Phil: Got to take it.
(出なきゃ。)Modern Family Season5 Episode3 (Larry’s Wife)
I thought you had ~ は「〜があると聞いていたけど」と、以前に聞いた話と目の前の状況が食い違うときに問いただす言い方です。続く That’s why ~ は「だから〜だったんでしょう」と、その話を理由にして起きたことを突きつけています。
just another ~ は「大勢いる〜の一人にすぎない」という意味で、目の前のダイアンに向けて言った言葉が、ロニーには自分を軽く扱う言葉として届いています。ロニーが “Just another client”? と同じ言葉で聞き返しているのは、相手の言葉を繰り返すことで不満を示す形です。
最後の Got to take it. は I’ve got to take it. の省略で、「(この電話に)出なきゃ」という意味です。take a call で「電話に出る」となり、It’s my office.(会社からだ)と合わせて、そこで話を区切る一言になっています。
電話の「hold on a second」と「Call back.」
予定の掛け持ちは、電話のやり取りにも表れています。フィルは電話口でこう話しています。
Phil: You hold on a second? Lorraine, how’s my favorite client?
(ちょっと待っててくれる? ロレイン、俺のお気に入りの顧客さん、調子はどう?)Modern Family Season5 Episode3 (Larry’s Wife)
hold on a second は「少し待って」という意味で、電話を保留にするときや、相手に少し待ってもらうときに使われます。疑問文の形にすると、待ってもらえるかを尋ねる柔らかい響きになります。how’s my favorite client? は、顧客に親しみを込めて調子を尋ねる一言です。待たせた相手から別の相手へと、呼びかけを切り替えながら話を続けているのが分かります。
別の場面では、クレアとの間でこんなやり取りがあります。
Claire: I’ll leave you a message.
(メッセージを残しておくね。)Phil: Hello?
(もしもし?)Claire: Phil.
(フィル。)Phil: Sorry.
(ごめん。)Phil: Call back.
(かけ直して。)Modern Family Season5 Episode3 (Larry’s Wife)
leave someone a message は「〜に伝言を残す」、call back は「かけ直す」という意味です。電話に出たフィルにクレアが名前を呼び、フィルは Sorry. Call back. と短く返します。主語を省いたこうした返事は、急いでいる場面では便利ですが、そっけなく聞こえることもあります。少し丁寧にするなら、Sorry, can I call you back?(ごめん、かけ直してもいい?)のように、自分からかけ直すと申し出る形がよく使われます。
まとめ|同じ「済ませる」でも響きが変わる
中立の finish up with ~ と、嫌々のニュアンスを含む get it over with。さらに I thought you had ~ や Just another client.、電話の hold on a second や Call back. まで、予定が重なる場面の英語には、言葉選びひとつで相手の受け取り方が変わる表現が並んでいます。
次回も『モダンファミリー』の会話から、場面に合った英語を一緒に拾っていきましょう。
同じ回のほかのコラムやフレーズ記事もあわせて読むと、フィルの一日の英語がよりつながって見えてきます。


コメント