アメリカの即興劇(インプロ)の文化と英語|『モダンファミリー』S10E04で学ぶ英会話

『Modern Family』コラム: アメリカの即興劇(インプロ)の文化と英語|『モダンファミリー』S10E04で学ぶ英会話

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

『モダンファミリー』シーズン10第4話では、マニーの恋人シェリーがジェイとグロリアの家に泊まりながら、即興劇(インプロ)のスターを目指して練習に励みます。家の中は、いつの間にか小さな稽古場のようになっていきます。

台本を使わずにその場で場面を作る即興劇は、アメリカでは身近な娯楽のひとつとして親しまれていることが多いようです。お題のもらい方、役作り、場面の終わらせ方という3つの切り口から、その文化と英語を見ていきます。

目次

観客から「お題」をもらう即興劇

アメリカでは、即興劇の劇団や教室、コメディ専門の小劇場が大きな都市を中心に数多くあるとされます。公演の形は劇団によってさまざまですが、客席からsuggestion(お題)をもらい、それをもとに演者がその場で場面を作る進め方がよく知られています。お題としては、職業・場所・人物の関係などがよく求められると言われます。

この回の冒頭でも、マニーが進行役となり、次の場面ではシェリーが有名人を演じると告げます。続けてマニーは、その場にいたジェイにもお題を求めます。

Manny: And, Jay, I need an occupation.
(それから、ジェイ、職業をひとつお願い。)
Jay: I agree.
(同感だ。)
Modern Family Season10 Episode4 (Torn Between Two Lovers)

I need an occupation. は「職業(のお題)をください」という意味で、進行役が客席に呼びかけるときの型をなぞっています。occupation は「職業」のやや改まった語です。ジェイの I agree. は、同じ文を「シェリーには職が必要だ」と受け取って同意したように聞こえる返しで、お題の求めとはかみ合っていません。

ジェイの説明によれば、シェリーは即興劇のスターを目指してオーディションを受けています。劇団への参加にオーディションがあることも珍しくないとされ、教室で基礎を学んでから舞台に立つ道を選ぶ人も多いと言われます。この家での練習も、オーディションを控えた時期のものです。

「creating a character」——人を観察して役を作る

別の場面で、シェリーは何をしているのかと問われ、こう答えます。

Sherry: Studying you, creating a character.
(あなたを観察して、キャラクターを作ってるの。)
Sherry: Imagine I’m not here.
(私はいないと思って。)
Jay: I’m not that creative.
(俺はそこまで想像力豊かじゃない。)
Jay: Maybe you could help me.
(お前が手伝ってくれりゃいいんだがな。)
Modern Family Season10 Episode4 (Torn Between Two Lovers)

create a character は「役を作る、キャラクターを組み立てる」という言い方で、即興劇に限らず演技の練習全般で使われます。身近な人のしぐさや口ぶりを観察して役に生かす方法は、演技の基本的な練習として広く知られています。ジェイの返しは、「いないと思え」を「いなくなってくれ」と言い換える皮肉です。シェリーはそれも材料にしていきます。

Sherry: Oh! So gruff.
(わあ! すっごく無愛想。)
Sherry: Love it.
(最高。)
Jay: I’m leaving.
(出かける。)
Sherry: I’m leaving.
(出かける。)
Jay: Good.
(いいだろう。)
Jay: You go.
(お前が出ていけ。)
Modern Family Season10 Episode4 (Torn Between Two Lovers)

gruff は「ぶっきらぼうな、無愛想な」で、シェリーはジェイの態度を役の特徴として受け止めます。続く Love it. は I love it. の主語を省いた口語で、相手の反応を「いいね」と面白がるときに短く使えます。相手の言葉や動きをそっくり返すやりとりは、即興劇の教室で行われる「ミラー」と呼ばれる練習を思わせます。ただし練習の名前や進め方は教室によって異なります。ジェイは最後に You go. と、シェリーのほうに出ていくよう促しています。

お題の出し方と「And scene!」

後半になると、ジェイはシェリーにお題を出す側に回ります。ジェイのほめ言葉には別の思惑がありますが、お題の出し方そのものは即興劇の進め方に沿っています。

Jay: You were right, Gloria.
(グロリア、お前の言うとおりだった。)
Jay: She’s hilarious.
(この子は最高に面白い。)
Jay: Do another one.
(もう一つやってくれ。)
Jay: Um T. rex in a volleyball game.
(えーと、バレーボールの試合に出るティラノサウルス。)
Jay: Look at that.
(見ろよ。)
Jay: It’s hard to spike with little arms.
(短い腕じゃスパイクは難しいな。)
Modern Family Season10 Episode4 (Torn Between Two Lovers)

T. rex in a volleyball game のように「人物や動物+意外な状況」を組み合わせたお題は、演者の発想を引き出しやすい形とされます。Do another one. は「もう一つやって」とおかわりを求める言い方で、客席からの声援としても自然です。

即興劇では、受け取ったお題を否定せずに場面へ取り込むことが大切にされると言われ、お題を出す側も短く具体的に言うほうが演者は動きやすいとされます。ジェイのお題をシェリーがそのまま演じて見せたことは、続く Look at that. と腕の短さを言う一言から読み取れます。

そして場面の終わりを告げる合図が And scene! です。即興劇では、場面を切り上げるときに進行役や演者がこう声をかける習慣があると言われ、教室や稽古でも使われます。この回の終盤、母に嫌いだと言われたとシェリーが訴えた直後、こんなやりとりがあります。

Manny: Mom, why would you say that?
(母さん、どうしてそんなことを言うの?)
Gloria: And scene!
(はい、ここでシーン終了!)
Modern Family Season10 Episode4 (Torn Between Two Lovers)

マニーの問いに、グロリアは即興劇の終わりの合図で返します。日常の会話でも、冗談めかして話を打ち切るときにこの言い方が使われることがあります。

まとめ|即興劇の文化をのぞく英語

お題の suggestion と I need an occupation、役作りの create a character、場面を切り上げる And scene! を通して、アメリカの即興劇の進め方を見てきました。舞台の言葉が日常の会話にまで入り込む様子が分かります。

シェリーの稽古に振り回される家族を観ながら、即興劇の言葉を拾ってみるのも楽しみ方のひとつです。

同じ回のほかのコラムでは、嫌われ役をめぐる夫婦の英語や、後悔を問われたときの返し方も取り上げています。

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