海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン6第17話には、ジェイがその日に撮影した映像を見て、自分はもう気難しい年寄りになってしまったのかと、娘のクレアに打ち明ける場面があります。
「すっかり変わってしまった」と「少しずつ近づいている」は、日本語でもつい言い分けたくなる違いです。ジェイの問いと、それに答えるクレアの言葉から、変化の段階を表す英語を順に見ていきます。
「I am an old grump now.」昔の自分と比べる言い方
その日に撮った映像を見たと話したジェイは、昔の自分と今の自分を並べて、こう言います。
Jay: Yeah, I’m not that cheery, likable celebrity I was 30 years ago.
(ああ、俺はもう、30年前の陽気で好かれる有名人じゃない。)Jay: I am an old grump now.
(今の俺は、年寄りの気難し屋だ。)Jay: When did I turn that corner?
(俺はいつ、その角を曲がったんだ?)Modern Family Season6 Episode17 (Closet? You’ll Love It!)
I’m not that ~ I was 30 years ago. は「30年前の〜な自分ではもうない」と、過去の自分を基準に今を語る形です。I’m not the person I was. のように the を使うのが基本の形で、ここでは that を使うことで、かつて人気者だったころの自分を指す響きが加わります。
grump は「不機嫌な人、気難し屋」を指す名詞です。形容詞の grumpy(不機嫌な)と同じ仲間の語で、old grump で「気難しい年寄り」という決まった響きになります。文末の now が、昔とは違う今の状態を際立たせます。
三つ目の When did I turn that corner? が、このコラムの出発点です。turn a corner はもともと「角を曲がる」ですが、そこから「転機を迎える」「境目を越える」という意味で使われます。辞書では、苦しい時期を抜けて好転する場面でよく見られる言い方として説明されることが多いようです。ジェイはこれを逆向きに使い、気難しい年寄りの側へ曲がってしまったのはいつなのかを問う一言です。
自分の話に置き換えるなら、I’m not the runner I was ten years ago.(10年前のように走れる自分ではもうない。)のように、the や that のあとに昔の姿を置けば、変化を一文で伝えられます。
「creep up to it」と「blinker on」まだ曲がっていない段階
ジェイの問いに、クレアは次のように答えます。
Claire: You haven’t.
(曲がってないって。)Claire: You haven’t.
(曲がってない。)Claire: I mean, you’re creeping up to it.
(というか、じわじわ近づいてはいるけど。)Claire: You got your blinker on, but you haven’t yet.
(ウインカーは出してる。でも、まだ曲がってないわよ。)Modern Family Season6 Episode17 (Closet? You’ll Love It!)
You haven’t. は You haven’t turned that corner. の省略で、相手の問いの動詞を受けて「そうはなっていない」と打ち消す答え方です。英語では、相手の文の動詞部分を省いて have や do だけで返す形がよく使われます。
ただしクレアは、2度否定したあと I mean, で言い直します。I mean は「というか」「つまり」と、直前の発言を補ったり修正したりするときの前置きです。全面的な否定から一歩引いて、正確な言い方に直す流れが読み取れます。
creep up to ~ は「〜にじわじわ近づく」です。creep には「そっと、ゆっくり進む」というニュアンスがあり、本人が気づかないうちに少しずつ迫っていく様子を表します。続く You got your blinker on の blinker は車の方向指示器のことで、曲がる合図は出しているがまだ曲がってはいない、という段階を表します。ジェイの turn という語に合わせて、車の言い方でつないでいるのが面白いところです。
| 表現 | 表す段階 |
|---|---|
| turn that corner | 境目を越えて、すっかり変わった |
| have your blinker on | 変わる手前で、合図が出ている |
| creep up to it | 少しずつ近づいている |
| a long way from ~ing | まだまだ遠い |
表の最後の a long way from ~ing は、このあとクレアの口から出てきます。詳しい使い方はフレーズ記事に譲ります。
「I swore I’d never be like that.」変わりたくない気持ちと励まし
ジェイは、自分の父が変わっていくのを見てきたと話したうえで、こう続けます。
Jay: I swore I’d never be like that.
(俺はああはならないって誓ったんだ。)Claire: You’re not that bad.
(そこまでひどくないわよ。)Claire: If you were, why would we all spend all our time over here?
(もしそうなら、どうしてみんな、ここに入り浸ってると思うの?)Jay: You just come here for the pool.
(プールが目当てなだけだろ。)Modern Family Season6 Episode17 (Closet? You’ll Love It!)
I swore I’d never ~ は「決して〜しないと誓った」で、過去の決意を振り返るときに使えます。like that は、直前に語った父の変わり方を指しています。
クレアの You’re not that bad. の that は「そんなに」で、not that + 形容詞 は「それほど〜ではない」と程度をやわらげて打ち消す形です。続く If you were, why would ~? は、「もし本当にそうなら、なぜ〜するのか」と仮定から反論する組み立てで、みんながこの家に集まっていることを根拠にしています。これに対するジェイの You just come here for the pool. は軽口として返されていて、本音かどうかは言葉からは決められません。
最後にクレアは、もう一言だけ助言を足します。
Claire: You just have to fight it a little.
(少し抗えばいいだけよ。)Jay: I appreciate it, honey.
(ありがとな。)Modern Family Season6 Episode17 (Closet? You’ll Love It!)
fight it の it は、気難しくなっていく流れそのものを指していると読み取れます。just have to ~ a little は「少し〜すればいいだけ」と、相手の負担を小さく見せて背中を押す言い方です。変化を止められないものとして扱わず、抗える段階にあると伝えている点が印象的です。
まとめ|変わってしまったか、変わりかけか
境目を越えた turn that corner、合図だけ出ている have your blinker on、少しずつ迫る creep up to it。ジェイとクレアのやりとりから、変化の段階を細かく言い分ける英語が見えてきます。
『モダンファミリー』の家族の会話を観ながら、こうした段階の言い分けにも耳を傾けていきましょう。
様子の変わったジェイに家族が声をかける場面の英語は、同じ回のほかのコラムで読めます。


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