海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
家族が集まって、ある出来事の裏にある狙いを読み合い、話の流れが探り合いに変わっていく場面が、ドラマには時々あります。
そんな空気を一言で言い表せる「psychological warfare」を、『モダンファミリー』シーズン6第22話の中盤、タイミングを疑うクレアに続いて、フィルが口にする一言から、一緒に見ていきましょう。
「psychological warfare」の意味とニュアンス
psychological warfare
意味:心理戦
psychological warfare は、相手を動揺させたり、判断を鈍らせたりして、優位に立とうとする駆け引きを指す名詞句です。psychological は「心理的な」、warfare は「戦争行為、戦い」という意味で、剣や銃ではなく、相手の心に向けて仕掛ける戦いを表します。
実際の戦争を指すのではなく、スポーツ、受験、交渉、人間関係などで、相手の心を揺さぶる作戦を大げさに語る比喩としても使えます。相手を挑発する、自信をぐらつかせる、わざと優しくして油断させる、といった手口をまとめて指せる言葉です。
「心理戦」と訳せる表現で、駆け引きに計画性がある、というニュアンスを含みます。「その言動は偶然ではなく、狙いがある」と見抜いた側の視点から使うと、相手の行動を疑う気持ちが言外に含まれます。
主語は、仕掛けた側でも仕掛けられた側でもかまいません。use psychological warfare against 〜 なら「〜に心理戦を仕掛ける」と仕掛けた側から、fall for psychological warfare なら「心理戦に乗せられる」と仕掛けられた側から語れます。
同じ内容を、もう少しくだけた言い方で言うなら mind games があります。psychological warfare は、それよりも本格的な「作戦」の響きを持つ表現です。
【ここがポイント!】
- 「psychological warfare」は、相手の心を揺さぶって優位に立つ駆け引きの総称
- 実際の戦争ではなく、スポーツ、交渉、人間関係などの「作戦」を大げさに言う比喩
- 不可算名詞なので、a を付けず、Classic psychological warfare. のように使う
『モダンファミリー』S06E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ある人物の言動をめぐって、クレアがタイミングを疑い、アレックスが本心だったと返し、フィルがそれを一つの言葉でまとめる場面です。三人の受け止め方の違いに注目です。
Claire: Doesn’t the timing seem a little suspicious to you?
(タイミングが少し怪しいと思わない?)Alex: Maybe, but he seemed really genuine.
(そうかもしれないけど、あの人、本当に本心みたいだったの。)Phil: Classic psychological warfare. I’ve dealt with it in elite competitions. I didn’t realize it happened outside of cheerleading.
(典型的な心理戦だな。俺もトップレベルの大会で経験済みだ。チアリーディングの外でも起きるとは思わなかったよ。)— Think about it, sweetie.
(よく考えてみて。)Modern Family Season6 Episode22 (Patriot Games)
シーン解説と心理考察
クレアは Doesn’t the timing seem a little suspicious to you? と、否定形の疑問文で問いかけます。「そのタイミングは偶然ではないのでは」という疑いを、相手の同意を促す形で差し出す言い方です。
アレックスは Maybe, but he seemed really genuine. と、疑いを一度は受け止めながら、あの人は本心に見えたと返します。Maybe, but 〜 は、相手の指摘を認めたうえで、自分の印象を手放さない言い方です。
そこへフィルが、Classic psychological warfare. と一言で片づけます。classic は「典型的な、お決まりの」という意味で、めずらしい手口ではなく、見慣れた型だと受け止めていることが伝わります。続く I’ve dealt with it in elite competitions. は、自分の経験を根拠として持ち出す一言です。deal with 〜 は「〜に対処する、〜に向き合う」という動詞句で、elite は「最上位の、精鋭の」という意味の形容詞なので、elite competitions は参加者の水準が高い大会を指します。そこで心理戦に向き合ってきた経験がある、という根拠づけです。フィルはさらに、I didn’t realize it happened outside of cheerleading. と、競技の外でも同じことが起きるのかという意外さを重ねています。
疑いを問いかけの形で示すクレア、印象を守ろうとするアレックス、経験から言い切るフィル。同じ出来事に対して、三者三様の受け止め方が並んでいるところが見どころです。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
将棋盤の駒を動かすのではなく、相手の頭の中に向けて仕掛ける戦いを思い浮かべてみましょう。psychological が「心の」、warfare が「戦い」で、二つを並べると「心の中で行われる戦い」という絵になります。剣の代わりに、言葉や態度で相手の気持ちを揺さぶる、と覚えます。戦いという語が入っていても、動くのは相手の気持ちだけで、実際の争いを指すわけではない、という点も一緒に押さえておくと、比喩としての使い方が見えてきます。
フィルの Classic psychological warfare. という一言は、その戦いを見慣れた型として言い当てたものでした。classic を頭に付けたまま、一つのかたまりで口に出しておくと、次に相手の言動の裏を疑う場面に出会ったとき、この形がすっと浮かびます。
例文で覚える「psychological warfare」
ライバルの言動、交渉、友人への忠告と、場面の異なる3つの例文で確認していきましょう。
Complimenting me before the exam was just psychological warfare.
(試験の前に私をほめたのは、ただの心理戦でした。)
ライバルの言動を振り返る場面です。just が加わることで、「ただの作戦だった」と狙いを見抜いた口ぶりになります。試験のような、結果がはっきり出る場面と相性のよい例です。
Silence can be a tool of psychological warfare in negotiations.
(交渉では、沈黙が心理戦の手段になることがあります。)
交渉術を説明するビジネスの場面です。a tool of 〜 の形にすると、心理戦の中身を具体的な手段として示せます。can be と組み合わせているので、「そうなる場合がある」という幅のある言い方になっています。
A: Why is he being so nice to me today?
B: Don’t fall for it. It’s psychological warfare.
(A:どうして彼、今日はこんなに私に優しいの?)
(B:だまされちゃだめだよ。心理戦だから。)
友人への忠告の場面です。Don’t fall for it. と組み合わせると、「その優しさに乗せられないで」という警告に、心理戦の一言が根拠を与えます。相手の親切が急に増えた、という日常のちょっとした違和感にも当てはまる例です。
あわせて覚えたい関連表現
mind games
(駆け引き、心理的な揺さぶり)
mind games は、複数形で使うくだけた言い方です。psychological warfare は、それよりも本格的な「作戦」の響きがあります。
get in someone’s head
((人)の頭の中に入り込んで動揺させる)
get in someone’s head は、「相手の心を乱す」動作を表す口語の動詞句です。psychological warfare は、その手口全体を指す名詞句という違いがあります。
play A off against B
(AとBを競わせて利用する)
play A off against B は、人と人を競わせる駆け引きに重心があります。psychological warfare は、相手一人を心理的に揺さぶる場合にも使える点が違います。
Note|warfare を数えない理由と、classic が付く形
フィルの一言は Classic psychological warfare. で、a も、語尾の s も付いていません。この形の理由を、文法の面から整理します。
warfare は、戦争や戦闘という行為を全体として指す不可算名詞です。数えられる名詞の war なら、a war、two wars のように数えられます。一方 warfare は、通常 a warfare とも warfares とも言いません。war が「戦争そのもの」を指すのに対し、warfare は「戦い方、戦闘行為」を指す語で、一つ二つと数える対象ではなく、戦いのやり方の総称として扱われるためです。形容詞は前に置き、classic psychological warfare(典型的な心理戦)のように重ねられます。どうしても数えたいときは、a kind of psychological warfare(一種の心理戦)や a form of 〜 のように、kind や form を使って言い換えます。
たとえば He kept staring at me during the game as a kind of psychological warfare.(彼は試合中、一種の心理戦として私をじっと見つめ続けました。)のように、kind を使えば、一つの行為として位置づける文も作れます。
フィルが a を付けず、classic だけを前に置いたのは、ひとつの出来事ではなく、お決まりの手口の総称として言い切っているからです。
名詞が数えられるかどうかで、言い切りの形が決まります。
まとめ|相手の心を揺さぶる作戦を、一言で
psychological warfare は、相手を動揺させたり、判断を鈍らせたりして優位に立とうとする駆け引き、つまり心理戦を指す表現です。warfare は不可算名詞なので、a を付けず、Classic psychological warfare. のように使います。
試合の前の挑発、交渉での沈黙、優しさを装った近づき方など、相手の言動の裏に狙いを感じたときに使えます。mind games、get in someone’s head、play A off against B との違いも押さえておくと、駆け引きの規模や向きを選び分けられます。
相手の言動の裏にある狙いを、短く言い当てたいときに使える、そんな一言です。


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