海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今すぐ決めたい人と、ひとまず後回しにしたい人が同じ場にいて、話が前に進まなくなることはないでしょうか。
そんなときに話題を脇へ置く「put a pin in it」を、『モダンファミリー』シーズン10第22話の後半、ヘイリーが子どもたちの誕生を報告したあとのやり取りから、一緒に見ていきましょう。
「put a pin in it」の意味とニュアンス
put a pin in it
意味:その話をいったん保留にする、あとで改めて話すことにして脇に置く
put a pin in itは、議論や決定を打ち切るのではなく、「今は置いておいて、あとでもう一度取り上げよう」という含みで話題を脇に置く口語表現です。文字どおりには「それにピンを刺す」で、刺したピンは目印になります。あとで戻ってくる話題に印をつけておく、というイメージです。
形の面では、itの部分が話題を表す指示語になり、直前に出た話題を受けます。ドラマではitではなくthatが使われ、put a pin in thatの形で出てきます。itでもthatでも、前に出た話題を指す点は同じで、意味は変わりません。話題を具体的に名指ししたいときは、put a pin in the budget talk(予算の話は保留にする)のように、名詞を入れることもできます。
「あとで戻る」という前提がある点が、単に「やめておく」と言う場合との違いです。話題そのものを取り下げるのではなく、順番をあとに回すだけなので、相手の発言を否定する響きが出にくい言い方です。
日本語にするときは、「その話はいったん保留にしよう」「その件は一旦置いておこう」を基本にします。「棚上げにする」と訳すと、戻るつもりがない響きに傾くので、あとで話す前提がある場面では「保留」「いったん置いておく」のほうが合います。
【ここがポイント!】
- 話題にピンを刺して目印をつけ、あとで戻る前提で脇に置く表現
- itの位置には、thatや話題を表す名詞も入る
- 話を打ち切るのではなく、あとで話し合う含みで先送りにする
『モダンファミリー』S10E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェイの「調子はどう?」という声かけに、ルークが自分のことを答えた直後の場面です。ヘイリーが、男の子と女の子が生まれたと報告します。マニーが「二人の名前は何ていうの?」と素直に尋ねると、クレアがput a pin in thatの一言で、その話題を先送りにします。フィルの言葉やグロリアの反応も含めて、短い掛け合いの流れを追ってみましょう。
Phil: I don’t think he was talking to you, buddy. It’s overwhelming. Just feeling so many different emotions.
(あの人はお前に話しかけたんじゃないと思うぞ、なあ。胸がいっぱいでさ。いろんな感情が一度にこみ上げてくるんだ。)Haley: I’m also doing great. I have a son and a daughter, and once they washed them off, they were really cute.
(私も元気だよ。男の子と女の子が生まれたの。洗ってもらったら、すごくかわいかった。)Gloria: Aww!
(わあ!)Manny: Oh, what are their names?
(へえ、二人の名前は何ていうの?)Claire: We’re gonna put a pin in that until the drugs wear off.
(その話は、薬が抜けるまで保留よ。)Modern Family Season10 Episode22 (A Year of Birthdays)
シーン解説と心理考察
クレアのWe’re gonna put a pin in that until the drugs wear off.は、マニーの質問への返事です。マニーはOh, what are their names?と、生まれた二人の名前をごく自然に尋ねています。それに対してクレアは、名前の話を、薬が抜けるまで先送りにします。
thatは、マニーの質問が向けられた話題、つまり二人の名前の話を指しています。until the drugs wear offは「薬の効き目がなくなるまで」を表す形で、期限を示す役目があります。期限がつくので、話題は消えたのではなく、あとで改めて話す前提で脇に置かれたことがわかります。gonnaはgoing toの口語形で、We’re gonna …は「私たちはこうする」と、その場にいる人たちに向けて決めたことを伝える形です。wear offは「だんだん消えていく」を表す動詞句で、効き目が少しずつ抜けていく様子を指します。
その前のフィルのIt’s overwhelming.やJust feeling so many different emotions.は、胸がいっぱいで気持ちがあふれる様子を伝えています。続くヘイリーのI have a son and a daughterが、その場の高ぶりに事実をひとつ足します。グロリアのAww!に続いてマニーの質問が出たところで、クレアが先送りの言葉を返す流れです。質問を断るのではなく、先送りにする言い方が選ばれている点が見どころです。相手の問いかけに答えないまま、話の空気を保って次へ進める便利な一言として働いています。マニーの素直な質問を否定せずに受け止める形になっている点も、この言い方の使いやすさです。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
地図の上に、あとで戻ってくる場所としてピンを刺す場面を想像してみてください。ピンは場所を捨てるためではなく、目印として刺すものです。刺しておけば、ほかの場所を先に回っても、またそこへ戻ってこられます。
クレアは、名前の話にピンを刺して、薬が抜けたころにそこへ戻る、と答えました。ピンを刺す動きと、話題を脇へ置く動きを重ねておくと、put a pin in itが「保留」を意味する理由が、場面の記憶と一緒に残ります。目印のピンに戻る時期が、クレアの発言ではuntil the drugs wear offという形で示されていた、と思い出す手もあります。
例文で覚える「put a pin in it」
put a pin in itは、会議から家庭の話し合いまで、決めきれない話題を脇へ置く場面で使われます。仕事の会議、旅行計画の往復会話、言い合いの休戦の3つで見ていきます。
Let’s put a pin in it and come back to this tomorrow.
(いったん保留にして、続きは明日にしよう。)
会議で議論を翌日に持ち越す場面です。come back to thisを添えると、あとで戻る前提がはっきりします。
A: Should we book the hotel now?
B: Let’s put a pin in that until we know the dates.
(A:今ホテルを予約する?)
(B:日程がわかるまで、その話は保留にしよう。)
旅行の計画で決められないことを後回しにする往復会話です。劇中と同じthatの形で、untilのあとに戻る条件を置いています。
Can we put a pin in this argument until we’ve both calmed down?
(二人とも落ち着くまで、この言い合いはいったん休戦にしない?)
感情的になった話し合いを、一度止めたい場面です。名詞を入れた形で、何を保留にするのかを具体的に示しています。
あわせて覚えたい関連表現
hold off on
(〜を先延ばしにする)
hold off onは、決定や行動をあとに延ばす意味の表現です。put a pin in itは、「あとで話題に戻る」ことが前提に含まれる点で、より戻る場所がはっきりしています。
come back to this later
(あとでこの話に戻る)
come back to this laterは、意味をそのまま説明する言い方です。put a pin in itは、同じ内容を比喩で短く言う口語表現です。
leave it for now
(今はそのままにしておく)
leave it for nowは、手をつけずに置いておく意味で、あとで話し合う含みは弱めです。put a pin in itは、あとで戻ることが前提になります。
Note|話題を脇へ置く指示語の選び方、it・that・名詞
ドラマではput a pin in thatの形でしたが、見出しはput a pin in itです。inのあとに来る語は、保留にする話題を表すので、ここで3つの違いを整理します。
itは、話の流れの中で直前に出た話題を指します。thatも同じように直前の話題を指すので、どちらを使っても意味は変わりません。名詞を置くと、何を保留にするのかが具体的になります。put a pin in itなら「それは保留にする」、put a pin in that ideaなら「そのアイデアは保留にする」、put a pin in the budget talkなら「予算の話は保留にする」という意味です。名詞を入れる形は、複数の話題が並んでいるときに、どれを脇へ置くのかを選べる点が便利です。
ドラマのthatは、マニーの質問が向いた名前の話を受けていました。このように、直前の発言を指すなら、it・thatのどちらでも通じます。
どの話題を脇へ置くのかを、it、that、名詞のどれで示すかで表し分けます。形の違いは指す範囲の見せ方の違いで、「あとで戻る」という中心の意味は、どの形でも変わりません。
まとめ|決めきれない話を、いったん脇に置くには
put a pin in itは、話題を打ち切らずに、あとで改めて取り上げる前提で脇へ置く口語表現です。itの位置にはthatや名詞も入り、何を保留にするのかを示せます。
会議の議題を先送りにするときも、旅行の予約を後回しにするときも、感情的な言い合いをひとまず止めたいときにも使えます。戻る時期をuntilのあとに添えれば、先送りの理由と期限まで一度に伝えられます。話題を消すのではなく、戻る場所に目印を立てておく一言です。


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