海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
不満やつらさを口に出さず、ぐっと飲み込んだまま、やるべきことを続けなければならない。そんな経験はありませんか。
そんな気持ちを表す「suck it up」を、『モダンファミリー』シーズン4第4話の中盤、悩みの切り出し方を相談するジェイに、娘のクレアが答えるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「suck it up」の意味とニュアンス
suck it up
意味:ぐっとこらえる、我慢して受け入れる
suck it upは、つらさや不満を口に出さずに飲み込んで、やるべきことを続けるという意味の口語表現です。suckは「吸う」、upは「すっかり」という働きの語で、飲み込んでしまうイメージが根底にあります。itは特定の物を指さず、この形で固定された言い方です。
「弱音を吐かずに我慢しなさい」という励ましにも、少しきつい叱咤にも使え、口調によって響きが変わります。同じ「こらえる」でも、自分から進んで飲み込むのか、誰かに促されて飲み込むのかで、言葉の温度が変わります。put up withが「嫌な状況を受け入れて耐える」という意味なのに対し、suck it upは「気持ちを飲み込んで切り替える」という促しの響きが強く、聞き手に行動や態度を求める言い方になりやすい表現です。
相手がすでにつらい状況にあるときに使うと、突き放したように響く場合があります。そのため、親しい間柄で使う、あるいは自分自身に言い聞かせるといった使い方が中心になります。日本語の「我慢しなさい」よりも、ぶっきらぼうな響きを帯びやすい表現だと押さえておくと、使い方のイメージがつかみやすくなります。
【ここがポイント!】
- 「suck it up」の核は、つらさや不満を口に出さず飲み込んで受け入れるイメージ
- 励ましにも叱咤にもなり、口調次第で響きが大きく変わる表現
- 相手がつらいときに使うと突き放して聞こえるので、親しい間柄向けなのがコツ
『モダンファミリー』S04E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェイが、グロリアのいびきで眠れていない件を、どう切り出せばいいかクレアに相談する場面です。クレアの答えの中で「suck it up」が言い切られ、そこから二人のやり取りが続いていきます。
Jay: We’re not doing this again. How do I bring it up?
(この手のやり取りは、もうやらないぞ。それより、どう切り出せばいいんだ?)Claire: Well, for starters, you don’t. You suck it up. Dad, your hot wife who was learning to walk when you were 30 years old, is pregnant with a baby you conceived doing something most men would kill to do.
(まず、切り出さないこと。ぐっとこらえなさい。お父さん、あなたの魅力的な奥さんは、あなたが30歳のころにはまだ歩き方を覚えている最中だった人でしょ。しかも、たいていの男が何としてもやりたがることをして授かった赤ちゃんを身ごもってるのよ。)Jay: I’m just so tired.
(とにかく疲れてるんだよ。)Claire: It’s a small sacrifice compared to what she’s going through. Poor thing, what with the extra
(彼女が今耐えていることに比べたら、ささやかな犠牲よ。かわいそうに、そのうえ余分な——)Jay: We’re done.
(もういい。)Modern Family Season4 Episode4 (The Butler’s Escape)
シーン解説と心理考察
ジェイは、どう切り出せばいいのかとクレアに尋ねます。クレアの答えは、切り出すのではなく「you don’t」、つまり話題にしないことで、続けて「You suck it up」と、ぐっとこらえなさいと言い切ります。「〜すべきだ」と提案する形ではなく、「you suck it up」と主語のyouを添えて言い切っている点に、クレアの断定的な口調が表れています。
クレアはさらに、妊娠しているグロリアの状況を引き合いに出し、「彼女が今耐えていることに比べたら、ささやかな犠牲」と、ジェイの負担は小さいという見方を示します。ジェイの「とにかく疲れてるんだよ」という訴えに対しても、クレアは共感より先に、別の視点を返す形で話を進めています。
クレアの言葉が途中で途切れ、ジェイの「もういい」の一言でやり取りは終わります。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
不満やため息を、口から出す代わりに、ストローで吸い込んで飲み込んでしまう場面を思い浮かべてみましょう。suck(吸い込む)とup(すっかり)をつなげて、つらさを全部飲み込んでしまう動きだと考えると、意味がつかみやすくなります。
クレアが「You suck it up」と言い切る場面も、ジェイの不満を口から出させず、そのまま飲み込ませようとする言葉として重ねられます。飲み込む動きを頭の中で描きながら、口から出さずに受け入れるイメージと一緒に覚えておくと、この言い方の響きもよみがえります。飲み込んだあとに何をするかまであわせて思い描くと、次に出てくるand+動詞の形にもつなげやすくなります。
例文で覚える「suck it up」
こらえて受け入れるという意味のsuck it upを、仕事・職場・友人との会話の3つの場面で確認していきましょう。
I know it’s a long shift, but suck it up. We’re almost done.
(長いシフトなのは分かってるけど、ぐっとこらえて。もう少しで終わりだよ。)
仕事仲間を励ます、カジュアルな場面です。後ろにゴールが近いことを添えると、叱咤よりも励ましの響きになります。
Sometimes you have to suck it up and work with people you don’t like.
(ときには、気に入らない人とも我慢して一緒に働かなきゃいけない。)
職場の人間関係を語る場面です。and work with …と次の行動をつなげると、こらえた先の行動まで一文で言えます。
A: My feet are killing me.
B: Suck it up. We’re only halfway there.
(A:足が痛くてたまらない。)
(B:我慢しなよ。まだ半分しか来てないんだから。)
ハイキング中の友人同士の会話です。親しい間柄だからこそ、ぶっきらぼうな言い方でも通用します。
あわせて覚えたい関連表現
put up with
((嫌なことを)我慢する、耐える)
嫌な状況を受け入れて耐えるという意味です。suck it upが「弱音を吐かずに切り替える」という促しの響きを持つのに対し、こちらは耐える状態そのものを表します。
grin and bear it
(笑って耐える、不平を言わずに我慢する)
笑顔で耐えるという定型の言い回しです。suck it upのほうが口調がぶっきらぼうで、命令や叱咤の場面に向いています。
tough it out
(根性で乗り切る)
苦しい状況を乗り切るまでの粘りに焦点がある言い方です。suck it upは、気持ちを飲み込んで受け入れる点に重点があります。
Note|suck it upにつなげる「and+動詞」と、言い切る形・命令形の響き
今回のクレアの発言は、「You suck it up.」と主語のyouを添えた形でした。suck it upは、この形のほかにも、いくつかの形で使えます。
代表的な形は、Suck it up.とyouを省いた命令形です。命令形にすると、相手に直接迫る響きが強まり、叱咤や励ましの色がはっきり出ます。今回のようにYou suck it up.と主語を添えて言い切る形は、「そうするものだ」と断定的に告げる響きになり、話し手の確信の強さが伝わります。もう一つは、suck it up and apologize(こらえて謝る)のように、andで次の行動をつなげる形です。こらえること自体が目的ではなく、こらえたうえで何をするかまで述べられます。クレアの場合は、こらえるべき理由を続けて示しています。
同じフレーズでも、命令形・言い切る形・andでつなぐ形で、響きと伝えられる内容が変わります。場面に合わせて形を選び分ける視点が、自然に使うための近道です。相手との距離や、伝えたい強さに合わせて、どの形が収まりよく響くかを考えてみましょう。
こらえる言葉ひとつにも、話し手の口調が滲む。形を見比べると、そんな細部が見えてきます。
まとめ|ジェイの相談に、クレアが言い切った一言
suck it upは、つらさや不満を口に出さず、ぐっと飲み込んで受け入れるという意味の言い方です。励ましにも叱咤にもなり、口調と間柄によって響きが大きく変わります。
仕事仲間を励ますとき、気に入らない状況を受け入れるとき、自分自身に言い聞かせるとき、こらえた先の行動まで一文で伝えられます。相手がつらいときには突き放して聞こえる場合があるので、間柄を見て選びたい表現です。
相談を持ちかけたジェイに、クレアが「You suck it up」と言い切った場面は、この表現の持つぶっきらぼうな響きと、その後の「もういい」という一言まで含めて、印象に残るやり取りでした。


コメント