海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回扱うのは、『ビッグバン★セオリー』シーズン3 第1話に登場する、思うようにいかない状況を嘆くひとことです。北極遠征から3か月ぶりに帰宅したレナードの口から、少しずつ形を変えながら同じぼやきが繰り返し飛び出し、やがて周囲もそれをからかいのネタにしていきます。
同じ英語表現が、場面ごとにどう言い換えられていくのかを順番に見ていくと、ちょっとした不運への向き合い方の幅が見えてきます。
「運が向いてこない」を表すひとこと
北極から戻ったレナードは、友人たちの間で起きたちょっとしたいざこざの後始末に付き合わされ、ペニーと落ち着いて過ごす間もなく気の休まらない時間を過ごしています。そんな場面でこぼれるのが、次のひとことです。
Leonard: Man, I cannot catch a break.
(はあ、僕は本当についてないよ。)TBBT Season3 Episode1 (The Electric Can Opener Fluctuation)
cannot catch a break は、「運が向いてこない」「ツキをつかめない」というときの定番の言い方です。break はここでは「休憩」ではなく「幸運のめぐり合わせ、チャンス」を指し、catch a break で「幸運をつかむ」という意味になります。それを否定形にすることで、思うようにいかない状況への率直なぼやきになります。文頭の Man は間投詞的に使われ、ため息のようなニュアンスを添えています。渋滞にはまった、忘れ物をした、待ち合わせに遅刻したといった、深刻ではないけれど積み重なると気が滅入る場面で気軽に使える言い方です。似た意味の give me a break(勘弁してくれ)と語幹の break を共有していますが、こちらは相手に向けた要求ではなく、自分の状況を嘆く独り言に近いニュアンスになります。
同じ嘆きの繰り返しと、あえての受け身表現
プレゼントの雪の結晶を渡してペニーとキスを交わした矢先、ハワードが駆け込んできてシェルドンの失踪を告げます。ロマンチックな時間を邪魔されたレナードの口から、再び同じぼやきがこぼれます。
Leonard: Man, I can not catch a break.
(はあ、僕は本当についてないな。)TBBT Season3 Episode1 (The Electric Can Opener Fluctuation)
台本上は can not と2語に分けて表記されていますが、意味も使い方も最初のひとことと変わりません。このあと、ハワードとラージに手分けして近所を捜すよう指示していると電話が鳴り、かけてきたのがシェルドンの母だと分かった直後、レナードは同じ発想を A break cannot be caught. という受け身の形にも言い換えています。I cannot catch a break という能動態の文を、a break を主語に据えて be caught の形にする言い方です。catch の目的語だったものを主語に据えることで、「運というものは、そもそも誰にもつかまえられないのだ」という、やや大げさで自嘲的な響きが加わります。同じ内容でも能動態と受け身を切り替えるだけで、ニュアンスに違いを出せる例と言えます。日常の言い回しを受け身にわざと言い換えて、皮肉っぽさや芝居がかった雰囲気を出すのは、英語でもよく使われる手法です。
口癖をからかいのネタにする使い方
ペニーに背中を押され、レナードもハワードとラージに合流し、3人でテキサスへ向かうことになった場面で、ラージが彼の口癖をそのまま借りてからかいます。
Raj: Boy, you cannot catch a break, can you?
(本当についてないんだね、君は。)TBBT Season3 Episode1 (The Electric Can Opener Fluctuation)
文末の can you? は付加疑問文で、相手に軽く同意を求めながら念を押す働きをします。you cannot catch a break という否定文に対して can you? が続いており、否定文の付加疑問は肯定形になるという文法規則どおりの形です。仮に肯定文であれば you can catch a break, can’t you? のように短縮形の否定で受けることになり、否定・肯定が入れ替わる点が付加疑問文の基本ルールと言えます。ラージが友人の口癖をそのまま引用してからかう場面であり、それだけレナードのぼやきが周囲に浸透していたことがうかがえます。文頭の Boy は呼びかけの間投詞で、驚きや呆れの気持ちを添えています。人の名前を呼ぶ boy(男の子)とは異なり、こうした文頭の Boy は誰に対しても使える感嘆の相槌のような働きをします。
まとめ|繰り返されるぼやきが表す、ままならなさ
I cannot catch a break、A break cannot be caught、cannot catch a break, can you?。同じ意味を能動態・受け身・付加疑問と形を変えながら使うことで、ままならない状況へのぼやきに表情がつくことが伝わってきます。
次回も『ビッグバン★セオリー』の会話を通して、英語表現の型を見ていきましょう。
同じエピソードのフレーズ記事やエピソードまとめでも、このやりとりに関連する表現を扱っています。


コメント