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今回扱うのは、『ビッグバン★セオリー』シーズン3 第1話に登場する、食事の前に唱えられる祈りの習慣です。テキサスの実家に身を寄せたシェルドンが、母メアリーと食卓を囲む場面では、親が呼びかけ、子がそれを継いでいく掛け合い形式の祈りが交わされます。
この場面を手がかりに、アメリカの一部の家庭に見られる食前の祈りという習慣について見ていきます。
食卓に流れる、呼びかけと結びの掛け合い
母の家の台所で、母メアリーがシェルドンに皿を差し出す場面です。
Mrs Cooper: Here you go, Shelly.
(はい、どうぞ、シェリー。)Sheldon: Thanks, Mom.
(ありがとう、母さん。)TBBT Season3 Episode1 (The Electric Can Opener Fluctuation)
シェルドンが早速食べ始めようとすると、母メアリーはそれを制止し、テキサスでは食事の前に祈るのがならわしだと伝えます。そのまま二人は、短いフレーズを交互に唱えていきます。母が呼びかけの一文を口にし、シェルドンがその結びの一語を継いでいく、という形式です。呼びかけと結びを分担しながら短く言葉をつないでいくやり取りが、この場面の見どころです。母は続けて、そんなに大変なことではなかったでしょうと、からかい交じりにシェルドンへ声をかけます。祈りが終わると、二人の間には普段どおりの空気が戻ります。
Sheldon: Thank you for carving a smiley face in my grilled cheese sandwich.
(グリルドチーズサンドイッチに笑顔を刻んでくれたことに感謝する。)TBBT Season3 Episode1 (The Electric Can Opener Fluctuation)
祈りを済ませたあとも、母の細やかな気遣いに対して、シェルドンらしい生真面目な言葉で応じている点が印象的です。台本のこの場面には、テキサスに帰ってきたばかりのシェルドンが、母の家のならわしに一つずつ従っていく様子が重ねて描かれています。ふだんは理屈で物事を説明したがるシェルドンが、祈りの掛け合いでは理由を述べることなくそのまま応じている点も、子どもの頃から繰り返されてきた、体に染みついた習わしであることをうかがわせます。皿を渡す何気ないやり取りから始まり、祈りを挟んで、また日常のやり取りに戻っていく。このひと続きの流れの中に、食前の祈りという習慣が特別な儀式というより、家庭の食卓に組み込まれた日課の一つとして息づいている様子が見えてきます。
「食前の祈り」という習慣について
こうした食事の前に短い祈りを唱える習慣は、英語で grace や saying grace と呼ばれます。say grace(食前の祈りを唱える)という言い方で使われることが多く、Would you like to say grace? のように、誰が祈りの言葉を口にするかを尋ねる場面で使われることもあります。アメリカでは、信仰を大切にする家庭を中心に、家族そろって食卓につく際にこの習慣を持つ家庭もあります。祈りの言葉は家庭ごとに異なり、代々伝わる言い回しをそのまま使う家庭もあれば、この場面のように子どもと一緒に唱えやすいよう、呼びかけと結びを分担する掛け合いの形式にしている家庭もあります。こうした祈りは Amen(アーメン)という言葉で締めくくられることが多いとされ、決まった一つの型があるわけではありません。
この習慣がどの程度広く行われているか、どの宗派や地域で特に根付いているかは家庭や地域によって差が大きく、一括りに断定できるものではありません。信仰を持たない家庭や、特別な行事のときだけ祈りを唱える家庭など、向き合い方は家庭ごとにさまざまです。劇中でも、テキサスの実家に暮らす母メアリーがこの習慣を大切にしている一方で、カリフォルニアで暮らすシェルドン自身は乗り気ではない様子を見せています。同じ家族の中でも、祈りとの距離感が一様ではないことが、この場面からも伝わってきます。祈りの言葉を交わす食卓は、家族が一日の中で顔を合わせ、感謝の気持ちを言葉にする時間としての側面も持っていると言えます。
まとめ|家庭ごとに形を変える、食前のひととき
呼びかけと結びの言葉を交互に唱える掛け合いの形式や、祈りのあとに交わされる何気ない会話から、食前の祈りという習慣に込められた家族の時間の過ごし方が見えてきます。同じ食前の祈りという習慣でも、言葉の選び方や交わし方は家庭ごとに違いがあることも読み取れます。
こうした生活に根差した習慣も、『ビッグバン★セオリー』の会話を通して少しずつ触れていきましょう。
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