海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回扱うのは、『ビッグバン★セオリー』シーズン2 第8話に登場する、相手を”死んだもの”として扱い、口をきかなくなる無視の”儀式”にまつわる英語表現です。電話を切ったハワードが放った一言をきっかけに、シェルドンお墨付きのルールが動き出し、その後の場面で少しずつ形を変えていきます。
絶交を告げる宣言の言葉から、ルールの解説、そして儀式が破られる瞬間まで、一連のやりとりを順番に見ていきます。
「You are dead to me.」――電話を切った直後の絶交宣言
ハワードの家の玄関先で、レナードが何か話があると切り出そうとした矢先、ハワードの携帯が鳴ります。相手はステファニーです。電話越しに何度かやりとりをしたあと、電話を切ったハワードは、目の前にいたレナードにこう言い放ちます。
Howard: You are dead to me.
(お前はもう死んだも同然だ。)TBBT Season2 Episode8 (The Lizard-Spock Expansion)
You are dead to me. は、相手の存在を”もう終わったもの”として突き放す一言です。実際に命に関わる話をしているわけではなく、「もう口をきかない」「もう知らない」という宣言を、大げさな言い回しに乗せています。to me が付くことで、あくまで「自分にとっては」死んだも同然だという、感情の一方通行さが強調される形になっています。世間一般でそう扱われるという意味ではなく、話し手個人の心の中だけで完結した絶縁宣言である点が、この言い方の面白さでもあります。
英語圏の会話やドラマでは、家族や友人に裏切られたと感じたときの決まり文句として、このフレーズが繰り返し使われます。実際の生死とは無関係な、比喩としての強い一言だからこそ、深刻な内容を扱わずに感情の大きさだけを伝えられる便利さがあります。似た場面で使える言い方には、He’s dead to me. のように三人称にして周囲に説明する形もあります。
ただし、電話の相手が何を言ったのかも、レナードが具体的に何をしたのかも、この時点では一切説明されません。理由の分からないまま突きつけられる絶交宣言の唐突さそのものが、この場面のおかしさにつながっています。
シェルドンが解説する儀式のルールと、破られる瞬間
場面は変わり、レナードたちの部屋です。ハワードが宣言した”儀式”の中身を、シェルドンが客観的に解説してみせます。
Sheldon: Howard is employing a schoolyard paradigm in which you are, for all intents and purposes, deceased. He intends to act on this by not speaking to you, feigning an inability to hear you when you speak and otherwise refusing to acknowledge your existence.
(ハワードは、子供じみたやり方を実行している。事実上、君はもう死んだ人間として扱われるということだ。彼はこれを、君に話しかけない、君が話しても聞こえないふりをする、その他あらゆる形で君の存在を認めないことによって実行するつもりでいる。)TBBT Season2 Episode8 (The Lizard-Spock Expansion)
feigning an inability to hear you は「聞こえないふりをする」という意味で、feign(〜のふりをする)という語が、無視という”演技”を際立たせています。schoolyard paradigm(校庭でよく見られるやり方)という言い方自体、シェルドンが単なる子供じみた仕返しを、あえて論文のような硬い語彙で説明しているところに面白さがあります。感情的な行動を、感情を交えずに手順として解説してしまう、この場面ならではの語り口です。
やがてステファニーが部屋を訪れると、ハワードのルールは思わぬ形で崩れます。彼女に挨拶を返してしまったハワードを、シェルドンはこう指摘します。
Sheldon: Look I’m sorry, you violated the terms of your metaphor by acknowledging her existence. I’m out.
(残念だが、彼女の存在を認めてしまった時点で、君はその比喩のルールを破ったことになる。僕はもう降りるよ。)TBBT Season2 Episode8 (The Lizard-Spock Expansion)
violate the terms of ~ は「〜の条件に違反する」という契約書のような硬い言い回しで、契約や規約の話で使われる terms(条件)という語を、たかが無視ごっこのルールに当てはめているところにシェルドンらしい理屈っぽさが表れています。I’m out. は「僕は降りる」という意味で、ゲームや取り決めから手を引くときによく使われる短い一言です。この直後、ハワードもついに口を開き、儀式の終わりを告げます。
Howard: Leonard, Stephanie, you’re alive, it’s a miracle!
(レナード、ステファニー、生きてたのか、奇跡だ!)TBBT Season2 Episode8 (The Lizard-Spock Expansion)
you’re alive, it’s a miracle! は、無視の終わりを皮肉交じりに宣言する決め台詞です。it’s a miracle(奇跡だ)は、本来なら大げさすぎる場面でわざと使うことで、深刻さのかけらもない調子を演出する言い回しでもあります。You are dead to me. で始まった一連の”死”の比喩が、最後は「生きていた、奇跡だ」という言葉で回収され、儀式の終幕が告げられます。
まとめ|宣言から解除まで、儀式には型がある
You are dead to me.という宣言、schoolyard paradigmという解説、そしてyou’re alive, it’s a miracle!という締めくくり。一つの”無視”にも、始まりと終わりを告げる言葉が用意されていることが見えてきます。
次の場面でも、『ビッグバン★セオリー』の会話から表現を追っていきます。
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