海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今回は『ビッグバン★セオリー』シーズン10 第6話から、本番前に試しておくことを表す英語を取り上げます。シェルドンがエイミーと暮らす部屋でブランチを開くにあたり、その会を「予行演習」と位置づけたことから、招かれた側との間に気まずい空気が生まれます。
同じ「試し」でも、言葉の選び方ひとつで相手の受け取り方は変わります。trial runとpractice roundの違いを軸に、場面の流れを追っていきます。
「trial run」は主催する側の段取りを試す言葉
舞台はシェルドンとエイミーの部屋です。室内の様子を尋ねるエイミーに、シェルドンは、人を招きたいという彼女の話をすぐに退けてしまったと認め、自分でブランチを手配したと明かします。招く顔ぶれを聞いたエイミーが変わった組み合わせだと返すと、シェルドンはこう続けます。
Sheldon: Well, for our first time hosting, I thought it would be wise to conduct a trial run.
(まあ、僕たちにとって初めてのもてなしだから、予行演習をしておくのが賢明だと考えたんだ。)TBBT Season10 Episode06
trial run は「試運転・予行演習」を表す語で、新しい仕組みや催しを本番の前に一度通して動かしてみることを指します。runには「(機械や行事を)動かす・実施する」という意味があり、trial(試み)と合わさると「試しに実施すること」を表す組み合わせです。主語に立つのは主催する側や運営する側で、確かめる対象は自分たちの段取りです。新しいサービスを始める前にwe’ll do a trial run firstと言えば、まず自分たちで一度試してみるという意味になります。
同じ趣旨の言い方は、後の場面にも出てきます。シェルドンは test run という語も使っており、こちらもtrial runとほぼ同じ意味で「試験的に動かしてみること」を表します。
さらにシェルドンは、ブランチを開いたことがないので work out all the kinks したかったとも話しています。kinkには「ねじれ・もつれ」という意味があり、work out the kinksは「(計画や仕組みの)不具合を本番前に解消する」という意味で使われます。3つとも、準備を整える側の目線に立った言葉と言えます。
「practice round」と言われた側の受け取り方
再びシェルドンとエイミーの部屋の場面です。スチュアート、地質学の研究室のバート、階下に住む女性がそろったところで、スチュアートがほかに来る人はいないのかと尋ねます。
Stuart: Really, no one else is coming?
(本当に、ほかには誰も来ないの?)Sheldon: This is it. You are the practice round.
(これで全員だ。君たちは練習の回なんだ。)Stuart: Practice round? For-for what?
(練習の回? な、何のための?)TBBT Season10 Episode06
practice round は「練習の回」、つまり本番とは別に設けた練習の機会を指します。roundは試合やゲームの「回・ラウンド」です。シェルドンはそのあとも段取りの話を続けており、言葉の上ではtrial runと同じ「予行」を指しています。ただ、目の前の相手に「君たちは練習の回だ」と言うと、その人たちを本番ではない側、つまり練習相手に置くことになります。スチュアートの聞き返しは、その含みを受け止めた反応という場面です。
Amy: Uh, no. He, he just means that you were the first people we thought of.
(あ、違うの。か、彼が言いたいのは、あなたたちが最初に思い浮かんだ人たちだってことよ。)Sheldon: You know, exactly. We’ve never thrown a brunch before, and I wanted to work out all the kinks.
(そう、まさにそれだ。僕たちはブランチを開いたことがないから、不具合を全部つぶしておきたかったんだ。)Stuart: So, I’m like a lab rat before your real friends come over?
(じゃあ僕は、本当の友達が来る前の実験用ネズミってこと?)TBBT Season10 Episode06
エイミーの He just means that ~ は「彼が言いたいのは〜ということ」と、第三者の発言を言い直して場を収める型です。ところがシェルドンが同調してwork out all the kinksと付け加えると、スチュアートは自分を lab rat(実験用のネズミ、実験台)にたとえて問い返します。lab ratは研究室の実験動物を指す語で、試しに使われる側の立場を、不満や自嘲を込めて表すときにも使われます。
主催者から見た「予行」も、参加者に向けて「練習の回」と言い換えると角が立ちます。trial runとpractice roundの違いは、誰の立場から見た言葉かという点にあると読み取れます。人を招く場面で準備の話をするなら、we’re still working out the kinksのように主語を自分たちに置くと、相手を試す響きを避けられます。
まとめ|「試し」の言葉は誰の目線かで選ぶ
今回は、trial run、test run、work out the kinks、practice roundを見てきました。前の3つは準備を整える側の言葉で、practice roundは参加者を練習相手に置く響きを持ちます。招く相手には主催者目線の言葉で準備の話として伝えると、誤解を避けやすくなります。
言葉ひとつで客の受け止め方が変わる様子も、『ビッグバン★セオリー』の会話劇の面白いところです。
同じエピソードのほかのコラムやフレーズ記事もあわせて読むと、この回の英語がより立体的に見えてきます。


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